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何かが染み付いている一軒家

作者: 夏風陽向

思いつきシリーズ第4段。


暑くなってきたので、怪談話みたいなのを。


書き方の問題上、あまり怖くないですが、楽しんで下さると幸いです。

 私はてっきり、小学校時代を共にした仲間と一緒に中学校へ上がれると思っていた。町内の人達は優しかったし、隣の綺麗な家には歳下の友達がいたので、割と充実してた日々だった。


 しかし、借り物件に住んでいた私の一家は、大家から出て行くように言われたので、母が必死に次の家を探した結果、とある一軒家に住むこととなり、そこは全く別の地区である為、仲間達と同じ中学校に通うことを諦めなくてはならなくなった。


 その時期は私の小学校卒業が間近だったので、どうにか小学校の卒業は仲間達と迎えることが出来た。隣の綺麗な家に住んでいた友達とも別れを告げ、寂しさと不安を抱きながら、私は次に住む家へ向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その家は、仲介業者が紹介している物件ではなかった。当時、母が勤めていた先の社長が貸してくれた物件なのである。一応、社員だということもあって、家賃が10万円だったところを7万円にしてくれたという記憶がある。


 私がその家へ最初に入った時、とても嫌な雰囲気を感じた。造りは洋風であり、階段から見える玄関の上にはステンドグラスの窓がある。特徴こそは素敵なのだが、何故かその家は全体的に暗く見えたのだ。


 まだ、それだけであれば「気のせい」という言葉で片付けられたかもしれない。ところが、部屋を1つひとつ見ていくと、玄関に1枚。リビングに1枚。2階にある1室に1枚……と、札が貼ってあった。更には、その家に地下室があり、そこは「決して開けてはいけない場所」……つまり、開かずの間として扱われていた。


 この家には、私達の前に住んでいた人がいた。どうやら夫婦で住んでいたらしいが、その2人はどうだったのか。中学校に上がる直前の私は、それが気になったので母に質問すると、予想もしない答えが返ってきた。


 その家に越してきた夫婦。旦那はとても人柄が良かったそうで、妻を大事にしていた。


 ところが、しばらく経ってから旦那に異変が見られるようになる。人柄の良さが嘘のように変わり、暴力的になってしまうと、妻に暴力を振るようになった。


 最終的に、その旦那は妻を地下室に閉じ込め、閉じ込めた後も妻が動けなくなるまで暴力を振り続けた。幸いなことに、妻が死んでしまうよりも早くその事件が発覚し、旦那は逮捕されて、妻は病院へと運ばれ、自由を取り戻すことが出来たのだそうだ。


 そういった経緯があって、地下室は開かずの間になり、札が3枚貼られるようになったのだという。その事件を知る者の間では「この家には霊がおり、旦那は取り憑かれたのではないか」と噂されている。


 とはいえ、仮に霊がこの家にいたとしても、その霊は一体何なのだろうか。それ以前を遡ろうとしても、これといって特殊な事件はない。ましてや「幽霊キラー」と友人間で呼ばれている母がいる限り、その家では何事も起こらないと私は思っていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 中学校に入学して初めて出来た友達は、私の家と近い場所に住む人だった。近い……といっても、徒歩で10分といったところだ。私が新しく住んだ家の隣には豪邸があり、そこには私より2つ上の先輩が住んでいるので付近に家がないというわけではないのだが、住宅街というわけでもないのでそんなものだ。


 ところが、家と学校の距離は徒歩で1時間も掛かるほど離れている。登下校だけで疲れてしまう環境なので、狙わずとも同学年で集団下校のようになった。とはいえ、それも部活動が始まるまでの間である。


 私はその、初めて出来た友達と登下校をしていたのだが、道中で実に興味深い話を聞くことになった。


 私の住む家は殆ど山の中である。そこから更に登っていくと浄水場があり、また更に登っていくと公園がある。浅い川の近くにあることから、夏になるとキャンプやバーベキューをしに来る人達もいるそうだ。


 実はその公園もまた曰く付きなのだという。というのも、近くに家がない上に山の中であることから、そこで自殺した人がいた。それも複数なのである。つまるところ、家が呪われやすいというよりかは、地域的に呪われやすいということだった。


 とはいえ、私自身も自殺を考える気持ちはわからなくもない。今になって振り返ってみると、当時ほど自殺を意識したことが無かった気がする。それまでは、親戚に自殺で亡くなった人がいた時「どうして」という気持ちの方が強かったにも関わらず、だ。


 呼ばれている……だなんても思いたくはないが、もしかしたら、そういうところもあったのかもしれない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 住み始めてからしばらくして、私は最初に感じた嫌な雰囲気を「気のせい」だと思うようになっていた。私はホラー映画が苦手で、あれを見た直後は暗い中1人で歩けなくなるし、眠れなくもなる。嫌な雰囲気に対して「気のせい」だと思っている一方、何故かその家ではホラー映画を見た後のように電気を消した部屋や廊下が怖くて堪らなかった。それも「考えすぎなのだ」と自分に言い聞かせるが、やはりこればっかりはどうすることも出来なかった。


 そうなれば、精神的にも少しずつ病んでいく。思春期だということもあったのだが、私は人一倍頭にきやすい性格になっていった。そんな性格へと変わっていった私に嫌気が差したのか、初めて出来た友達は私を嫌煙するようになり、いつの間にか私は別の友達と交流を深めた。


 そんな中、私の一家でも異変が起こっていく。私は殆ど毎日のようにイライラし、母も疲れからなのか、夕飯を作ってくれない日が出来、父も酒やつまみと自分の物ばかり(あ、これは元からか……)。弟も学校以外は殆ど部屋に篭っているし、妹は学校にすら行かなくなった。


 家族内での喧嘩も数を増やし、私が家出を決意する数も増えた。目に見えて、一家はバラバラになった。


 そしてとある夜のこと。私はふと深夜に目覚めて、違和感を感じた。廊下から衣擦れのような音が聞こえてくるのだ。


 廊下はフローリングだったので、家族の誰かなら聞こえてくる音はスリッパの音であるはず。だというのに、何か長い裾が床を擦っているような音がするのだ。


 その音は階段を上がった先から、自室の扉に向かって移動していく。窓が開いていて、風がカーテンを動かしている音なのだと思って寝転んだまま窓を確認するが、そもそも冬なので窓を開けているわけがない。


 私は怖さ半分で気になって扉の方を見ようとしたが、何故か起き上がれない。その時、私は「これが金縛りか……!?」と感じたのと同時に、全身麻酔から目覚めた直後に感じた無力感を思い出し、未知なる恐怖に対して何も出来ないことが更に私の恐怖を大きくした。


 扉が開く音は聞こえない。その代わり、長い髪の女性が横を向いているような影が窓の付近に見えた。その後どうなったのか、私には記憶がない。


 ただ1つだけ。直接耳で聞いたわけでもないはずなのに、静かな怒りが込められた女性の声が「妾の夫は何処じゃ」と2回繰り返している記憶が今も頭の中に残っている。


 その後、私の家に猫がやってきたのだが、お陰であの恐怖体験をもう1度体験することは無かった。ずっと猫が私と一緒に眠ってくれたからだ。


 しかし、猫が妊娠して近くにいられない時、毎回ではないが2回程、金縛りに遭った記憶がある。幸い、身体は動かせなくても声だけは出せたので(それって金縛り?)とある歌を、私の魂を捧げるように歌うと解かれ、そしてまた眠れるという経験があった。


 ところで、開かずの間に何があったのか。私は言いつけを守って見に行かなかったが、酒に酔った愚かな父はその言いつけを破って、地下室へ足を踏み入れた夜があった。中には、高価そうな壺などがあったそうだが、中からは腐敗臭とはまた違う嫌悪感のする臭いと、壁や床に「何かの染み」があったので、何かを感じた父が塩を撒いていた。何かしら騒いで撒いている父の姿を見た時、私と弟はイラッとした。それが関係しているのかはわからないが、それから10年もしないうちに父は末期癌で他界している。


 3年住んで、また次の家に引っ越し出来たことは今でも良かったと思っている。果たして今、その家がどうなっているのかは知らないが、私達の後に住んだ住人は、1年もせずに出ていったようだった。

読んで下さりありがとうございます! 夏風陽向です。


あの家は普通じゃありませんでした。最初から最後まで本当に異常です。


前に住んでいたという夫婦の妻が具体的にどんなことをされたのかは知らされていません。結局は人伝で聞いた話であり、母も「ボコボコ」とか「リ○チ」とかしか言ってませんでしたので。ただ、自力では逃げ出せない程にやられ、旦那の知人がおかしく思ったことから発覚したのだとか。あの家は本当に精神に異常をきたします。


引っ越してきた時、ソファや机。セミダブルのベッド。2台のブラウン管テレビ。押し入れには布団が2人分あったのを覚えています。倉庫にはストーブなどの暖房器具もありました。

ちなみに、セミダブルのベッドはマットレスを退かすと被せてある板があって、更にそれを退かすとベッドの下が見えるようになっていました。そこには面白い(?)ことに大人のおもちゃが2つ隠してあった(?)のがかなり印象的です。


トイレとお風呂は上と下にありました。けれど、上の風呂とトイレは何か変な臭いがしたので使用しませんでした。電気を付けても薄暗く、怪しい雰囲気があっただけです。


札については「絶対に剥がすな」と言われていました。ですが若干、劣化なのか剥がれ掛かっていた気がします。


そもそもあの家、何の為に建てられたのかがよくわかりません。最初に住んだ者は誰なのか……は聞いた気がしますが、思い出せなかったり、記憶がごっちゃになってたりしますので。


さて、思い付きシリーズ第4段はどうだったでしょうか? 実は別サイトの方で1作だけ別の小説を投稿しているので、そちらも含めると第5段になります。


それでは次の思い付きシリーズをお楽しみにしていただくと共に、連載中の「隣の転校生は重度の中二病患者でした」もよろしくお願い致します。

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