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第3話 週末の朝 その3

 食べ終わってみると、思っていた以上にお腹がいっぱいになっていた。このレストランと同じ階にスターバックスがあるけれど、コーヒーを飲みたいという気もしない。席代だと思って飲まないコーヒーを頼むこともたまにあるけれど、飲まないコーヒーを目の前にするのも嫌なくらい満腹感が胃の上まで押し上げていた。

 紀ノ国屋で雑誌を二冊立ち読みをしてから、定期購読している雑誌をインフォメーションカウンターまで取りに行く。そこで支払いはできないから、あらためて支払いのカウンターの長蛇の列に並ぶ。

 ここの紀ノ国屋には日本語の他にも、英語や中国語の本も並べている。特に多いのが日本語の漫画の中国語版だ。広い店内の中には、欧米人、東洋人、そして日本人・・・。日本人のほとんどが駐在で来ている人とその家族たちだ。日本から輸入されている本は、定価の3倍くらいの値段がついていた。

 さて、これからどうしようか。

 今買った雑誌を読みに、あらためてスターバックスに行ってもいい。雑誌を二冊も立ち読みしている間に、少しは胃もこなれていたから、小さいサイズのコーヒー一杯くらいなら飲んでもいいような気になっていた。

 ショッピングセンターを出て、道の反対側にある、もとのショッピングセンターへ戻るために信号を待っていた。ふと顔を上げると窓に見慣れた航空会社の広告がでている。そうだった、ここの二階にオフィスがあるのだった・・・。

 信号が青になり、交差点を渡ってショッピングセンターの建物に入ると、スターバックスのある地下には行かずに、そのままエスカレータに乗って二階へ向かう。

 航空会社のオフィスは、混雑の時の為にチケットを取って並ぶシステムになっていたが、他に待っている人は誰もいない。チケットを取ったとたん、自分の番号が掲示板で点滅した。

 『今日はどのようなご用件ですか。』

 何をしに来たんだったろう。溜まっているポイントの残高の確認でもしてもらおうか。それとも4月に入れているフライトのリコンファーム・・・。

 『バンコク行きのチケットを・・・。』

 『お日にちはいつでしょうか。お一人様で宜しいですか。』

 『今日。今日これから乗れそうな一番早いフライトをお願いします。帰りは明日の夕方の便。確かバンコク発6時くらいの便がありましたよね。』

 ここからはマレーシアやタイ辺りまでなら、日帰り出張をする人も珍しくない。窓口の担当者は、特に不思議そうな顔をすることもなく、淡々とキーボードを打って、コンピュータで空席の確認をしている。

 『このまま真っ直ぐ空港へいらっしゃいますか?それでしたら、まだ二時十分のフライトに間に合うかもしれません。その次でしたら四時三十分のフライトにもお席があります。』

 『ここからタクシーで行きますから、二時十分のでお願いします。チェックインも済ませて、搭乗券の発行もお願いします。』

 パスポートはいつもハンドバックの中に入っている。タクシーに乗る前に、ここのショッピングセンターで換えの下着とTシャツを一枚だけ買っていけばいい・・・。

 『お待たせいたしました。こちらが行きのご搭乗券になります。ご搭乗ゲートの番号は、空港で再度ご確認ください。こちらがEチケットの控えになります。お帰りは明日、七時五分発、ご到着が十時三十分になります。こちら、お帰りの飛行機のチェックインとご搭乗券の発行も今できますが、どうなさいますか?』

 『お願いします。変更の予定はありませんから。』

 

 空港へ向かうタクシーのなかで、ぼんやりと、まだ片付けていないクリスマスツリーのことを考えていた。

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