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第16話 あきこの話 その3

 「上手く行ってないなんて話初耳よ。」

なるべく詮索口調にならないように気をつけて切り出してみた。あきこが、話したいのにどこから始めていいのか、分からなそうにしていたからだ。

 「上手く行ってないってわけでもないのよ。」

クロワッサンとバゲットのどちらにしようか手が迷っている。

 「まあ、ものすごくあつあつって訳でもないけどさ。でも、結婚してもう十八年だもの、それくらいは普通でしょ。」

 「だったら、どうして・・・。」

特に不思議だと思ったわけではない。そういう状況でも、別居したくなる時もあるだろうとは思ったが、何か言葉を挟まないと、あきこの話が続かないような気がした。

 「一緒にいるとさ、期待しちゃうのよ。」

バゲットをちぎる手を止めて、あきこが顔をあげた。

 「完璧な旦那でいてほしいって。」


 −−<−−−−−−−−−−−−−−−−−−>−−


 別に浮気をするわけでもないし、大酒のみでもない。博打に手を出すわけでもないし、もちろん家庭内暴力をふるうわけでもない。そこそこに家庭サービスもするし、ちゃんと給料も全額入れてくれる。

 もっと具体的な問題で、結婚生活が破綻している人も沢山いるのに、贅沢と言われれば言い返す言葉もない。

 それでも、他の家は他の家。他人が何に幸せを感じていようと、正直言って、そんなの全く関係ない。用は、我が家の問題なのだ。私達の結婚生活の問題なのだ。当人が上手くいっていないと思えば上手くいっていないのだし、当人が満足していないのなら、当人には大問題なのだ。他との比較で、どうこうといえることではない。

 

 大声で言い返せるのは、ここまでだった。


 だったら何が不満なのかと聞かれれば、上手く説明することができない。どんなに言葉を並べても、きっと誰も説得できないだろう。


 ひとつだけはっきりしている事は、問題の比重は私のほうに傾いているということだ。

 相手に不満を抱いているのだから、相手が悪い・・・そう思っていた時期も確かにあった。今でも、自分だけが悪いと思っている訳ではないが、どうやら問題は自分の中にあるらしい。そして、それが分かってなお、今の状況の中で解決する道がみつからなかった。


 −−<−−−−−−−−−−−−−−−−−−>−−


 「ごめんね、上手く説明できなくて。まあ、まだ時間もあるから、ゆっくりと話すよ。」


 

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