第11話 バンコクの朝 その1
ホテルに戻ってから、ラウンジでもう一度一人で飲みなおして、ベッドに入ったのは一体何時くらいだったのセろう。外はもう随分前から明るくなっていたし、目覚ましも2回くらいは止めたというのに、まだベッドから起き上がれない・・・。
そろそろ起きて朝食を食べに行かないと、せっかく朝食をつけてもらったのがもったいない・・・、そう思った頃に電話が鳴った。鳴った・・・と思ったのは、メッセージの着信を知らせるメロディーだったのだけど。
『午前中なら出られそう。ブランチはどう?』
あきこからだった。昨日、週末はどうせ無理だろうと思いながら、一応都合を聞くメッセージを送っておいたのだった。
『じゃあ、10時にクレープ&コーで。』
返信してから、歯を磨きにバスルームへ向かう。あきことブランチをするなら、朝食はパス。まだ時間があるから、レストランでコーヒーでも飲みながら新聞を読んでから行こう。
『オッケー。では現地集合で。』
直ぐに返事が来た。
荷物がないから、支度は簡単だった。部屋を出る前に、もう一度ベッド周りを確認する。忘れ物するほどの荷物も持ってきてはいなかった。
レストランに行く前に、レセプション・デスクに向かう。
一度ホテルを出たら、もう空港へ行くまで戻ってくることもないから、チェックアウトを済ませてしまうつもりだった。
日本人の団体は、もうとっくに観光にでかけているくらいの時間だったから、並んでいる人は誰もいない。さっさとチェックアウトをすませて、レストランへ向かう。レストランも、殆どの席が空いている。窓側の日当たりの良い席に向かって、勝手に歩いて行く。後からウエイトレスが、両手にコーヒーと紅茶のデカンタを持って、小走りでついて来た。テーブルについて、コーヒーをついでもらってから、雑誌のコーナーに新聞を取りに行く。こういうホテルでは日本語の新聞も置いているところが多い。ここには朝日新聞と日経新聞があった。
日本語の新聞を二部と英語の新聞を一部読み終えたら、ちょうど9時になるところだ。
ホテルの裏から出て、スカイトレインの駅に向かう。駅に直結したエンポリウムも、ショッピングセンターが賑わうには、まだ時間が早すぎて、ひっそりとしている。
エスカレーターを上がると同時に電車が入ってきた。これなら、早く着きすぎるくらいかもしれない・・・。
それにしても、あきこが週末に出てこられるなんて、珍しいこともあるものだ。