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第1話 週末の朝 その1

 流れる街の景色を目で追いながら、ただずっと窓の外を眺めていた。バスの窓に額を押し付け、街の建物を、歩く人々を、通り過ぎる車の流れを、いつまでもただ眺めていた。

 バスに乗るなんて久しぶりだ。車を買ってから、もう滅多にタクシーにも乗らない。唯一利用するのは、長期旅行に出る時の空港への往復くらいのものだ。空港へ行くのだって、この街を離れるのがほんの2−3日なら、自分の車を運転して行ってしまう。数日の間なら、空港の駐車場の方がタクシー代よりも安いくらいだから。

 この街のバスは2階建ての車両が多い。もう何年も前には、普通の小ぶりのバスも沢山走っていたのに、最近は殆ど見かけない。

 2階建てのバスの上の階の一番前の席に座れたら、きっと見える景色も違うのだろう。こんな風に、窓ガラスに額を押し付けたりしないで、ゆったりと座った目の前一面に、広々とした街の風景が広がっているのだろう。

 でも、そんな風景が見たい気分・・・という訳でもなかった。


 このバスはどこまで行くのだろう。今いったいどこを走っているのだろう。エアコンがきき過ぎる位きいていて、カーデガンを着ているのに、体はすっかり冷え切っていた。

 この先の角を曲がったあたりにバス停があったら、そこで降りよう。

 ちょっと行った先のショッピングセンターの地下に、お気に入りの小籠包の専門店がある。ご飯時ではないから、今ならきっと並ばないでも入れるはずだ。

 普通の小籠包と、蟹入りのを一せいろづつ、それにダンダン面の小さいの。ひとりには、ちょっと贅沢なような朝食だ。といっても、もうあと少しで昼食でもいいくらいの時間になっているけど。

 

 一人で美味しいものを食べて、そのあとゆっくりコーヒーでも飲みながら一週間分溜めてしまった日経新聞を読んで、その後は向かいのショッピングセンターの中にある紀伊国屋にでも寄ろうか。立ち読みですませたい雑誌が何冊かあった。よさそうな本があれば、2−3冊、暇つぶしのために買ってもいい。それから・・・。

 それから、特にすることが見つからなければ、またバスに乗ってもいいのだ。そんなに何時間も先のことまで考えられない。とりあえず冷え切ったからだを、熱い小籠包とジャスミン茶で温めるのが先だ。紀伊国屋の後の時間のことは、食べながら考えればいい・・・。

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