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第0話 犯罪都市最恐の男達

楽しみだな。反響………。

 超能力が突如現れた現代。群馬県は未だ秘境扱いで、その犯罪の発見率の高さから、『犯罪都市』と呼ばれるようになって久しい。



 街を逃げ回る男がいた。歳は三十代前半。寂れた商店街を駆け抜ける姿は、肉食動物に追われる草食動物のそれだ。

「ひぃ…ひぃ………。あとちょっと、あとちょっとだ!」

そして彼は、もはや無人のビルへと逃げ込んだ。

「おーい! おーい! なんで誰も出て来ないんだ? おーい」




 声がこだまするビル。そこに、異音が混じった。

 それは靴の足音。ゆったりした、落ち着いた足音だ。


「良かった。待ってたぞ……」

「あなたがどれほど待っても。桜龍会(おうりゅうかい)の連中は来ませんよ。あれ、僕が作ったガセネタですから」



やって来た男の言葉に、絶句する。その声は、今彼が最も聞きたくない人間の声だったから。

「お、お前……柳沢月光(やなぎさわつきひ)!」

男の絶叫を煩わしそうに顔をゆがめて聞き流すと、柳沢は入ってきたときの足音のように、ゆったりと話し始めた。

「我々『アルティスタ』が『桜龍会』と敵対関係にあることは、知っていますよね? そして、間諜などしようものなら、どうなるのかも」

男は逃げ――――るふりをして振り返った。


柳沢の顔のすぐ横を『何か』が飛んだ。


「………手の平に仕込み銃。すでに知っていますよ。()()()()をしたので」



男は、歯ぎしりをした。












最悪だ、と。





『犯罪都市』を二分する組織の1つ『アルティスタ』。その幹部、柳沢月光。彼に発現した能力は、『未来観測』。観測できる範囲は能力名よりも広く、対象の過去から未来まで広く観ることが出来る。

「くっそぉぉ!!」


男が、手の平に仕込んだ銃を更に撃ち込むが、柳沢はその弾道全てを先に『観測』しているのでするすると避ける。

「あなたが撃てるのは、5発だ。もうじき限界を向かえます」



だが、この発言を受けて、男は()()()。コレは好機だ、と確信した。


男の仕込み銃の装弾数は10発。しかし、彼はそのことを知らないらしい。何故かは知らないが、彼の能力も完全では無かった、ということだろう。6発目。彼が『観測』していない6発目で必ず仕留める。

3発目、4発目。5発目。



男が手の平を柳沢に向ける。彼は6発目がすぐに発射できることを知らない。つまり、この6発目は必ず当たる――――っ!























そこで、男の意識は途切れた。


「おつかれー」

頭から血を流して倒れる男の背後に、青年が立っていた。

「ありがとうございます。助かりました、猪井さん」

彼は猪井宏作(いいこうさく)。柳沢の同僚であり、詐欺師を生業としている。

「ったく。お前の能力の正確さは寒気がするよなぁ。本当に5発しか撃てなかったぜ、コイツ」

死体を蹴りながら呆れたような目で柳沢を見る猪井。それに対して柳沢はどこから自慢げな顔で応えた。


「……に、しても。もう一人の方は大丈夫ですかね?」

「はは、なんの冗談だよ。富山なんだろ、担当は。じゃあ大丈夫だ」


































 この街を縄張りとする、『アルティスタ』というマフィアの幹部であり、敵対する『桜龍会』の間諜を暗殺するのが彼らに与えられた任務だが、正直にいってこの二人は殺しのプロでは無い。先程の男を上手い具合に殺せたのも能力の強さと連携が上手く行ったからである。

 しかし、暗殺を任された人間で唯一、殺しのプロがいた。

 


 富山秀(ふやま しゅう)。『アルティスタ』専属にして、この時代の同業者では最強と謳われる殺し屋である。



 彼は夜の街を散策するように歩いていた。『その道』の人間で無くては、彼が『最強の殺し屋』だとは誰も思わないだろう。

 


 そして突然、何の変哲も無い路地裏へ入っていく。その道の先にはある男がいた。

「元気してたか?」

男は、富山を見た途端逃げ出そうとする。



が。



男の行く先にも、富山がいた。

「なっ……? なんだっ!?」

「俺の能力は『仮想物体』。想像した物を何であれ作る能力だ」


気付けば、路地裏に入る道を覆うように富山()が立っていた。









十字砲火。

男が助かる(すべ)など、あるはずも無かった。













『仕事』を終わらせた富山の携帯に、あるメールが届いた。彼の元に届くメールなど、だいたい内容は分かりきっている。彼は、メールの中身を確認すること無く真っ直ぐにある建物へ向かっていった。




















 富山、柳沢、猪井の三人は、ある高層ビルの最上階にいた。都市有数の高さを誇るこのビルの正体は、マフィア、『アルティスタ』の本部である。その最上階にいる人物からの呼び出し。それは、彼らにとって大きな意味を持つ。


「富山、柳沢、猪井、ここに参上しました」

富山が目の前の男に伝えると、男は満足げな表情で頷いた。

「うん。良く来てくれた。実は、コレなんだけどもね」

そう言って男が取り出したのは、「招待状」と書かれた一枚の紙。

「……最強の座を賭けて、この都市でゲームを始めるそうだよ。まあ、『桜龍会』のかしらはしゃしゃり出てくるだろうね。そこでだ、君達にもこのゲームに参加して貰いたい。『桜龍会』の奴らをねじ伏せて、この犯罪都市の帝王は、『アルティスタ』だと、知らしめるんだ」





 



 群馬県高崎市。とある高層ビル最上階にて。

『犯罪都市』最恐の組織、参加決定。










※このお話の中の群馬県はあくまで創作です。実際の群馬とは欠片も関係ありません。



あと二回、0話があります。はい。

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