ある夜のお願い
「はぁ~~~っ!疲れたぁ~~!」
山のようにあった書類を片付けロイを呼び、夕食に済ませに行く途中だった。
「お疲れ様です。お嬢様」
「だから、お嬢様じゃなくて…って今はもうそんな突っ込む気力もないわ」
今日の書類の量はとても多かった気がする。なんでだろ、戦争ももう終わったのに…だめだ、もう今日は頭が回んないや。早く夕食を食べてお風呂に入って寝たい…。
そして夕食を済ませ、浴場から出る。
「ふぅ、お風呂に入ってさっぱりしたわ。もう今日は早く寝るに限るわね…。」
「ちゃんと御身体を休ませてくださいね。私にできることがあればなんなりとお申し付けください。」
「ふ~~ん?そっかぁ、じゃあ抱きしめてもらおうかなぁ?」
「抱きしめる?何を?」
「何をって私以外になにがあんのよっ!」
「っ!しかし、それは…」
予想外だったのかロイが慌てる。普段ロイが慌てる姿なんて滅多にないからそんなロイを見れてうれしい。
そしてこのチャンスを逃すまいと私は攻める。
「してくれないんだ、何でもするって言ったのに。私疲れてるのに癒してくれないんだ。」
と拗ねるように私は畳みかけた。
ロイは押しに弱いはずだからこう言えば抱きしめてくれるはず。
「…はぁかしこまりました。では失礼します。」
「えっ!ちょっと待っ…」
いきなり私の手を優しく引き、ふんわりとロイの体が私を包み込む。
突然の出来事で、何が起きたのか分からなかったが状況を理解しはじめると、思い出したかのように私の心臓が動き出し、鼓動の音が私の体全体に伝わってくる。
「満足いただけましたか?お嬢様」
「…ううん、このまま『お疲れ、リナ』って言って」
「…お疲れ様です、リエスティーナ様」
「『リ・ナ』!!」
「はぁ…お疲れ様です『リナ』様」
「もう、様はいらないのに…」
「勘弁してください」
「まぁ、あんまりわがまま言ってもロイに悪いし今回は我慢する」
「ありがとうございます」
そのかわり離れるときに思いっきりぎゅ~~っと自分の匂いをロイの胸に残すくらい抱き着いてやった。
「じゃあね!ロイ!お休みなさい!」
「はい、リナ様もゆっくり休まれてください」
私は自室に入るとすぐ毛布にくるまり誰も見ていないのに、自分のにやけを少しでも隠そうとするのであった。