朝の訓練
「アズガルド帝国で民衆による大規模の反乱が発生…か」
先ほどのクレアの報告を受け、リチャードは少し頭を悩ます。
このことをロイのやつが知ったらあいつはどうするんだろうな。今すぐ帝国に戻るのだろうか?それともまた自分の気持ちをまた押さえつけて王国に居続けるのだろうか。
つい最近あいつの妹が動いたんだ、王国にも何か影響がでるかもしれないな。
「全く…考えることが多すぎて頭が痛くなってくる」
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ロイの朝ははやい、日が昇り始めたころに目を覚まし、身なりを整える。そして運動がてらに王宮の周りを一通り散歩する。
今日も見慣れた道を散歩をしていると、木剣で素振りをしているクレアがいた。どうやら彼女はまだこちらに気づいていないようだ。さすがに無視はできなかったため、声をかける。
「おはよう、クレア。朝からがんばってるな」
「きゃあっ!」
するとクレアは急に話しかけられたからか握っていた木剣をこちらにむけて振り下ろしてきた。
「おいおい、挨拶をしただけで攻撃してくるとは思わなかったぞ…」
なんとか木剣を真剣白刃取りの形で抑える。
「ロ、ロイ…もう驚かせないでよ…」
「急に話しかけたのは悪かったよ、謝る」
「もういいわよ私も攻撃してごめん。それよりこんな朝早くから何をしてたの?」
「ただの散歩だよ、そしたらクレアを見つけたから声かけようかなって。邪魔して悪かったな」
「邪魔だなんて思わないわよ、むしろあなたみたいな人に見てもらうなんて光栄なことだしね。ということで、少し見てくれない?」
「見るも何も、クレアは十分強いじゃないか、それに俺はそんな…」
「そーゆーのいいから、そこで見てて!」
強引に話を通される。そしてクレアは木剣ではなく彼女が愛用している銀のレイピアを取り出した。
「おいおい、素振りじゃないのか…」
「あなたに素振りなんて見せてもしょうがないでしょ!昨日は木剣だったから見せれなかった私の本気見せてあげる」
そういって彼女は自分の集中力を高めていく。彼女のオーラが肌に伝わってくる。
「はあああっ!!」
彼女のレイピアが目に見えない速度で連撃を繰り出す。終わったころには目の前の大きな木には無数の貫通した跡があった。
「どうだった?」
「すごい…としか言えないよ」
「でもなにかアドバイスくらいはあるんでしょ?」
「そうだな…」
俺は木に近づき、貫かれた跡を触る。
「クレア、こことここの跡を見てごらん。傷跡の大きさが違うだろ?」
「あ、ほんとだ。でもこれを見てなんだっていうの?」
「クレアの連撃は確かに速い、けどその分パワーがおろそかになっているんだ。もし君が放った連撃すべてに100%の力で放っていたら、誰もさばくことなんてできないだろうな」
「でもそれって簡単そうに聞こえるけど、実際難しいわよ…」
「大丈夫、クレアならいつかできるさ」
「…もう無責任ね」
冗談っぽく聞こえてしまっただろうか。
「さて、訓練はここまでにして、片づけをするぞ」
いつの間にか長い時間過ごしていたようだ。眠っている彼女が起きるまでに朝の準備をしておかなければ。




