多少のわがまま
扉を開けたリナにロイは驚いた。正確にはリナの服装に
「お嬢様…!一体どうしたのですか、それにその服は」
とロイは素朴な疑問をリナに問う。
「えっと…そのロイが何をするのか気になっちゃって尾行というものをしてました…」
尾行…どうやらその服装はカモフラージュのつもりみたいだ。
「ごめんね、寝不足なんて自分がちゃんと寝ないのが悪いし、それにせっかくロイが休ませてくれたのに尾行なんてくだらないことして…私ロイのことを騙したみたいで、それがどうしても自分が情けなくって恥ずかしくて…」
身体を震わせながら、矢継ぎ早に自分の心境を吐露するリナの姿をみたロイは、そっとリナの頭に手をやった。そして彼女の美しい金色の髪を梳くようになでる。
「いいのですよ、たまにはサボってください。今日いつもお嬢様がこなしている仕事を体験してその大変さが少し実感できました。だからこそお嬢様がいつも文句の一つも言わず仕事をしている姿を見ていると、むしろこっちが倒れたりしないかなど心配になります」
「でも私は王女だから国の仕事をサボるなんて最低なことだわ、国のみんなに顔向けできない…」
「いいですか?確かに国の仕事は大切ですし、上の立場にある者の義務です。しかしあなたは王女である前に一人の女の子です。多少なりともわがままを言ってください。俺がその分、精一杯フォローしますから」
「~~っ!ありがと…」
リナは赤くした顔を隠すようにロイに抱きついた。
「じゃあ今一つだけわがまま言っても…いい?」
ロイの胸に顔をうずめながら言う。
「ええ、なんなりとお申し付けください」
「私にもお姫様抱っこしてよ」
「っ!お嬢様それは少し無理があるというか…」
「なんでよ、クレアにはしてたじゃん…」
「み、見ていたのですか、しかしあれは成り行きであのような形になったのであって、下心があってしたわけじゃありません」
「わがまま言っていいって言った瞬間私のお願いを断るんだ…ロイのいじわる…」
だんだんと声音を弱くしていくリナを見てロイは腹をくくった。自分に抱きついているリナの足をすくいそのまま肩に手をやり持ち上げた。
急に持ち上げられたリナははじめは驚いていたもののだんだんと顔を緩めた。
「ロイ顔赤くしてる、恥ずかしがってるんだ」
「お嬢様も赤いですよ、顔」
「私は恥ずかしくないよ?嬉しいというか幸せというか、そんな気持ちでいっぱいだもん」
やはりそういうリナは幸せそうに笑っている。
「そういえばこの服どう?似合ってる?」
「ええ、とても可愛らしいですよ」
「よかった、でもこの格好だと周りから見ると勘違いしそうだね」
「勘違い?」
「そう、だって普段は私が王女でロイが執事だけど、今は私メイド服着ているから私がメイドで、ロイが王子様にみられるかもねってこと」
「俺が王子様?」
「だって今のロイほんとの王子様みたいだもんっ!」
「…そうですか、ほめていただきありがとうございます」
一瞬『王子』というワードに反応したロイだがすぐに素に戻る。
「じゃあロイこのまま私の部屋まで連れて行って」
「勘弁してください」
二人の幸せな会話は夕日がさす部屋の中へ溶けていくのであった。
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