1対100
部屋を出て5分ほどたってようやくロイを見つけることができた。
「見つけたわ…今日はとことん尾行してロイのこと知りまくるわ」
やってることは確かにいけないことなのかもしれない、でも!意中の相手と仲良くなるためにはまず相手を知らなくてはいけないと思うの。
私はそう心の中で思い込む。
するとロイが誰かに呼び止められたようだ。
「あれは…レオンかしら?」
レオンはあだ名で、本当の名前はアンドリュー=レオナルド。由緒正しき騎士侯爵家であるアンドリュー家の長男で、年齢は今年で20になったと聞いた。代々継がれている王国騎士団長にも就任した。ちなみに副団長は2つ下の彼の妹のクレアである。
「いったいなにを話してるんだろう」
と、話が終わったのかロイがレオンの後をついていく。
「あっちは演習場だけどどうしたんだろう」
不思議に思いつつ後を追う。
演習場につくとたくさんの王国騎士団の騎士たちが訓練をしていた。
そしてレオンがみんなに一声かける。
「みんな!訓練中にすまない!今日はリエスティーナ様の専属執事であるロイ殿が訓練に参加してくれるみたいだ!執事という職業だがこう見えてとても強い。ぜひみんなこの機会に手合わせをしてみるといい」
「そういうわけで訓練に参加させていただくロイです。今回はとことん遠慮や手加減は抜きでお願いします」
「ではどうしようか。ここには約100人の騎士たちがいる1人1人戦っていては日が暮れる。3人ずつを相手にするというのはどうだろう?」
「3人ですか…5…いや10人ずつで構いませんよ?」
「…!フッ、ここにいる者たちは一応王国の精鋭の集まりなのだけど、なるほど分かりました」
うそっ!?王国騎士10人をロイ1人で相手するの!?それも100人だから…10回も戦うの!?確かにロイはすごく強いけどそんなの無茶だわ!
「みんな、ロイ殿は10対1で構わないらしいから希望通りにしようじゃないか」
すると王国騎士たちは少しざわつく。やはりなめられていると思われているのが気に食わないのだろう
「ではすぐに訓練を始める、それにあたって審判は私がやろう」
レオンが審判をするということはレオンは参加しないのだろうか。
「最初の10人前へ!」
10人の騎士が一列に前に出た。
「はじめ!!!」
合図とともに攻めたのは騎士たちのほうだった。まず5人が攻めてかかり、残りの5人が様子をうかがいつつ隙をつくという見事な連携だ。
「さすが王国騎士団ね…ロイは大丈夫なのかしら…?」
ロイは軽やかな身のこなしで騎士たちの攻撃をよけている。しかしなかなか攻撃ができない。
騎士たちはいったん体制を整えるために退いた。
「なかなかの連携ですね。攻撃する暇がありませんでした。しかし」
ロイの剣の構え方が変わった。
「もう、見切りましたので問題ありません」
「っ!もう一度先ほどのように連携攻撃で攻めるぞ!!」
騎士の一人が叫び、また5人が攻める。
するとロイも向かってくる5人の騎士たちのほうに走る。そして糸が針の穴を通すように5人の隙間をぬけ後ろで様子をうかがっていたあとの騎士たちに距離を詰める。
「なっ!」
まさかこちらに来るとは思ってなかったのだろう。慌てて構えるがロイは素早く5人を戦闘不能にした。
「さてあと半分」
そして気づいたら残りの5人も倒れていた。
「さぁ、次の10人どうぞ」
どうやら私はロイの強さを勘違いしていたようだ。




