親友の存在
更新遅くなってごめんなさい。お待たせしました
「どうした、そんな思いつめた顔して、らしくない。なにかあったのなら相談に乗るぞ?」
俺は打ち明けようか少し迷った。そして迷っていたらリチャードが先に言葉を発した。
「帝国に関すること…か?」
俺は驚き、目を見開いた
「…フッ、やはりお前にはかなわないな」
「お前がそこまで悩むなんて帝国のことか、リナくらいしかないだろ」
リチャードは俺が、帝国の王子ということを知っている数少ないうちの一人だ。
「わかった、お茶でもしながら話そう」
俺はリチャードに話すことを決め自室へ案内する。
部屋に入り、コーヒーの準備をする。
「砂糖はいるか?」
「いや結構」
俺はコーヒーをリチャードに差し出し、本題へと入った。
「まずはこれを読んでくれ」
俺はエレンから届いた手紙をリチャードに渡す。
「へぇ、どうやらただのラブレターってわけじゃなさそうだな。エレオノーラ…ってことはお前の妹からの手紙か。どれどれ
『お久しぶりです、お兄様。
お兄様はお体のほうなどは大事無いでしょうか?
私は早くお兄様に会いたいです。
その気持ちが高ぶってしまい、こうして手紙を送らせていただきました。
お兄様の都合さえよろしければ、久しぶりにお会いできないでしょうか。
色よい返事をお待ちしております。』
か…とうとう帝国が君にアクションをとりはじめたか」
リチャードはまるで最初から予測していたかのように言う。
「ちなみにロイはなんて返事するつもりだい?」
「そのことで悩んでるんだが、お前はどうしたらいいと思う?」
「どうしたらって、簡単だよ、ロイのしたいようにすればいい。俺はロイがどんな決断をしても反対はしない、あまり自分が捕虜だということに縛られるな。いいか?おまえに聞こう」
リチャードは一回呼吸を置いてからまた口を開く
「ロイ、お前はどうしたい、お前のしたいことを俺に聞かせてみろ、王子でも、捕虜でもなく、一人の男として…だ」
「俺のしたいこと…」
エレンに、帝国のみんなに会いたい、帝国の助けになりたい…分かってるんだ、俺のしたいことは、でもなぜかそれが言えなくて、そして考えるたびになぜかお嬢様…リエスティーナ様の顔が浮かぶ。
どうして素直になれない、どうして自分を隠す、俺はそんな自分に嫌気がさす。
すると、握っていたこぶしの上に一滴の雫がこぼれた。そして頬を伝い、もう一滴、そしてまた一滴とこぼれる。俺はいつの間にか涙を流していたようだ。
「ほら、せっかくの男前の顔が台無しだぞ?」
リチャードは俺にハンカチを差し出す。そのハンカチはとても優しい匂いがした。
「すまない、みっともない姿を見せたな。だがおかげで決心がついた」
「ほう、どうするんだ?」
「会うよ、エレンに会いにいく」
「わかった。俺もできうる限りのことはしよう」
「助かる、やはり持つべきものはよき友ということはあながち間違いではないようだな」
「フッ、俺もまさかハンカチを乙女ではなく男の友人に貸すとは思わなかったさ」
「乙女じゃなくて悪かったな」
俺たちは軽く笑いあいながら部屋を出た。
その時の足取りは、悩みを打ち明ける前よりもずっと軽かった。




