悩める執事
「お嬢様、起きてください」
ロイの声が聞こえ、瞼を開く。
「うぅん、もうちょっと寝たいぃ」
「はぁ…失礼します」
ロイが扉を開き私の部屋に入る。
そして私のベッドのそばまで行き、デュベ(かけ布団のこと)をそっとめくる。
「お嬢様、わがままを言わないでください、過度の睡眠は悪影響です。それとも体調でも優れないのですか」
「体調が悪いわけじゃないんだけど、ちょっと寝不足で…」
「お嬢様が寝不足なんて珍しいですね、一体何してたん…」
ロイが机の上にあったたくさんの本に気づき、本を手に取る。
「これは…帝国に関する本?まさか…」
「どうしても気になっちゃって、いろいろ探してみたけどだめね、どれも帝国の王子についての大きな情報は書いてなかったわ」
ロイの本を持っている手に少し力が入っているように見えた。
「そうですか、でしたらお嬢様、今日のお仕事はお休みください」
「ほゎ?」
突然、予想もしてなかったことを言われ変な声が出てしまった。
「お疲れの状態で仕事をしても効率が悪くなるだけです。それにお嬢様に無理をさせるなど私にはできません」
「で、でもそんなのみんなに迷惑がかかっちゃう!」
勢いよくベッドから起き上がり私は言った
「私が対処しておきますから、ゆっくりと休んでください」
ロイは起き上がった私の肩を優しくつかみ、ゆっくりとベッドに押し倒し、デュベをかけなおした。
「また、夕方ごろ様子をうかがいに行きます、くれぐれも無理をしないでくださいね?」
ロイはそう言い残し部屋を出て行った。
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「さて、どうしたものか」
お嬢様の部屋を出て俺は昨日の夜のことを思い出す。
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『私はこの国にまだ滞在しますのでエレオノーラ様に手紙を送るならここに来てください』
暗殺部隊の彼女は懐から地図を取り出し俺に渡す。
『俺はもう王子ではない!ただの捕虜だ!俺にできることなど何も…!』
『いいえ、あなたは私たちの、いや帝国の希望なのです、あなたなら今の帝国を救ってくださると私は信じています』
彼女は俺の前に現れて初めて笑った。不覚にも彼女の笑顔は俺をドキリとさせるほどだった。
『時間ですね。私は先ほど渡した地図の場所にいます。いつでもお越しください。今日はお会いできてとても感激でした』
そう言って彼女の姿は闇に消えた。
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「俺は一体どうしたいんだ…」
そんな風に悩んでいると後ろから声をかけられた
「よう、ロイ。そんな思いつめた顔してどうしたんだ?」
「…リチャード」
そこには親友とも呼べる男の姿があった。




