第一章『始まるべき場所』
美保は、昔から人の顔が見えませんでした。目は、見えます。
ですが人の顔が見分けつかないのです。
だからいくら中々の顔の人が来ても同じようにしか見えないのである。だけど瑩暮だけは、しっかり目視できた。醜い言葉が合うほど顔は、爛れ 目は、赤く腫れて 美穂のことが見えているのか分からないほどだった。
だが瑩暮は、逆に美保の顔が見えなかったのでは、なく目が見えないのである。生まれてこの方暗黒の中に生きている。瑩暮は、暴力を振るわれて生きてきた。美保は、貴族のお嬢様として綺麗な男性に話しかけられる日々を送っていた。真逆すぎるのである2人は交わることのない家なのだから·····。
瑩暮は、盲目の彼にはただ音を聞くことしかなかった音を聞いて、それが誰なのか当てるそれしか取り柄がなかったのである。美しい姫の美保と醜き瑩暮 階級は違えど、同じ人間。差別されてはならないのだ。
この平安の世でも同じようなものである。醜いからといって、いじめるから、美しいからと言ってついていくのは間違っている。この交わるはずのない2人、そしてこの間違いだらけの世界で生きていくのが2人の運命なのだから。恋愛とは程遠い階級の差の世界。
『見えねえよ おっかさん 見えねえ、見えねえんだよ』
瑩暮は、夜の町をヒタヒタ歩く
『あら ここで、あなたは何をしているの?、ここは敷地内よ』
この声は、噂の美し姫。美保様だ。何故こんな場所を歩いているのだろうか?お嬢様が歩いていていい場所なわけがない。何故いるのだろう?
『ここは私の家の敷地内よ』
いつの間にか紛れてしまったのか?なぜ俺はここにいる、なぜお嬢様に話しかけられている、俺はお嬢様に話しかけられていい人間ではない。
なぜなんだろう美保お嬢様、お美しい階級の低い俺があっていい人間ではない。俺は離れようとした。だけどふいにお嬢様に手を繋がれたのだから·····
『行っちゃダメですよ 瑩暮さん』
俺に構わないでくれ、早く家に帰ってくれ俺にもう関わらないでくれ·····。