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僕たちとUFOの夏物語  作者: 巫 夏希
番外編 六月二十四日
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番外編 六月二十四日

「六月二十四日は、UFOの日と呼ばれている」


 ……そうですか。

 六月二十一日の放課後。

 突然部長が立ち上がり、何を言い出すかと思いきやそんなことを言ってきた。

 もしかして生徒会選挙の疲れでとんでもないことを言い出しているのではないか――なんてことを思っていたけれど、どうやらそんなことは関係ないようだった。


「いっくん、驚かないのかね! UFOの日ということは、我が宇宙研究部にとっても素晴らしい日であるということを! そして、その日を迎えるということが大変光栄であるということを、だ!」

「そんなことを言われましても」

「だから、僕達は何をするか、分かっているかな?」

「はいはい。どうせ、UFOの観測をするんでしょう」


 言ったのは、ほかでもない、僕であった。

 だってそれ以外案件が思いつかないし。


「どうせ、とは何だ! どうせ、とは! 僕は真面目に話をしているんだぞ」

「そうですか……。そう言われても困るところがあるというか」

「困る? 何がだ?」

「だって、いきなり三日後に何かやるって急過ぎやしませんか? 僕達一年生はまだしも、先輩達は生徒会選挙の準備があるんじゃないですか?」

「生徒会選挙は七月だ。それに準備をするのは僕達じゃない。生徒会が中心となって行う、選挙管理委員会だ。だから僕達は何の関係もない。……まさか、生徒会選挙の準備の間、ずっと観測活動をしないと思っていたのかね?」

「ええ、しないと思っていましたよ」


 言ったのはあずさだった。

 あずさもはっきりと物事を言う人間だな、と思いながら僕は話を続ける。


「それに、生徒会選挙の準備中は部活動も自粛ムードに入るはずでしたけれど?」

「ムードはムードだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「そんなものですか。……ってか、候補者が自らルールを破っても良いんですか?」

「ルールは破るためにあるんだ。それがどうしたって言うんだ」


 あ、この人を会長にしちゃ不味い気がした。

 けれど、生憎関係性を持ってしまった訳だしなあ……。もし宇宙研究部がなかったら、あっという間に関係性を途絶えさせてしまいそうなところがある訳だけれど。


「そういう訳で、六月二十四日は、パーティを開く! 場所はこの図書室副室。そしてパーティが終わり次第、UFOの観測に移るぞ! パーティの概要について説明するが……」


 駄目だ、この人。もうパーティの準備に取りかかっている。

 ここまで来たら、もう止めようがない。そう思った僕達は、溜息を吐きながらその言葉に耳を傾けるのだった。



  ※



 という訳で六月二十四日――僕はあずさとアリスとともに近所のスーパーに買い出しに行くのだった。電子レンジや冷蔵庫はない訳だから、当日に購入しないと問題がある、という訳。まあ、お金は全員で出して一万円。それだけあればそれなりのパーティを行うことは出来るだろう。


「……こういうのは女性陣がやるべきだと思うのだけれど」

「何言っているの。室内の飾り付けは二人で充分って言うから暇だったいっくんを呼び出したんじゃない。私達にもっと感謝して欲しいぐらいだと思う訳だけれど」

「……そう。私達にもっと感謝するべき」


 あずさとアリスはお互いにそう言った。

 何というか、ほんとうにお似合いだな二人とも。


「えーと、購入するのは五人分の弁当とジュース、それにつまめるお菓子……。これじゃ、パーティというより夕食の延長線上みたいだな」

「はいはい、そんなことは言わない。私達はやるべきことをやるだけなんだから」

「そういうものか?」

「そういうものよ。ささっ、急いでやっちゃいましょう。私達にはやるべきことをやるだけなんだから」


 そう言われちゃ、仕方がない。

 僕はそれに従って――五人分の弁当、それにジュース、つまめるお菓子、紙コップを購入するのだった。



  ※



 図書室副室に戻ると、折り紙で色とりどりなリングが教室の至る所についていた。


「……これを二人だけでやったんですか?」


 何というか、もう一人ぐらい居ても良かったような気がするけれど。


「そうだ! 僕達二人でやるには充分時間がかかったが、何とか間に合ったな!」

「……昨日からやっていたんだから、充分間に合う計算だったんじゃなかったのか?」

「それもそうだな! ……ところで、弁当は買ってきたのか?」

「はい。……と言っても唐揚げ弁当しか売っていなかったんですけれど」

「時間も時間だからなあ……、致し方あるまい。まあ、こういうのは雰囲気で楽しむものだ!」

「ところで、この後UFOの観測をする訳ですけれど」

「うん?」

「屋上の許可って貰ったんですか?」

「……貰える訳がないだろう? この時期に」


 ということは、無許可で行うということか!?

 先生に見つかったらなんと言われるか……うう、考えるだけでも恐ろしい。


「まあ、何かあったら僕に全責任を押しつければ良い! とにかく、パーティを始めようじゃないか」


 そう言われてしまったので。

 僕達は図書室副室の唯一のテーブルに弁当、ジュース(オレンジジュースとリンゴジュース、それにお茶の三種類)、お菓子、紙コップを置いていく。


「おっ、言わなかったけれど紙コップも買ってきてくれたのか。手際が良いねえ、いっくんは」

「……だって紙コップなんて準備していないでしょう」

「そりゃその通りだ」


 そうして。

 僕達はパーティを粛々と執り行うのであった。



  ※



 屋上。

 パーティが終わり、僕達は屋上に来ていた。

 勿論許可など取っていない。

 先生か誰かがやって来たら即終了、というチキンレースじみた観測会の始まりである。


「……見えますか? UFO」

「うーん。どうだろうね。なかなか見えないね……。やっぱり、瑞浪基地からUFOはもう発射されなくなったのかなあ……」


 部長は悲しげな表情を浮かべながら、望遠鏡を眺めているのだった。



  ※



 これからは後日談。

 というよりも言い訳のような何か。


「……あのねえ。部活動は生徒会選挙の間は禁止されているはず、というのは知っていると思ったのだけれど?」


 今日の宿直は、どうやら桜山先生だったらしい。

 桜山先生曰く、一階を回覧していたところ、屋上でカメラのフラッシュめいた光が見えたので、こちらに向かってきた――ということらしいのだ。


「知らなかった、とは言わせないわよ? 野並くん。……まあ、あなたは特に『大事』な時期なんだから、こんな無茶しない方が良いと思うのだけれど」


 そう言って、部長の頭を撫でる桜山先生。


「……申し訳ございませんでした。責任は、全ては僕にあります。彼らには問題ありません。ですから、彼らには罰を与えないでください」

「私しか居ないから問題ないわよ。……今日の観測会はこれでお終い。時間が遅くならないうちにさっさと帰る。それで良いわね?」


 こくこく、と頷くみんな。

 そういう訳で、僕達はさっさと片付けを済ませ、家に帰るのであった。

 これは、そんな六月二十四日の――一日の物語だ。



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