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復讐はしあわせのもと?!  作者: 森本美夜
2/19

決意

「……ちゃん、………………ちゃん。」



懐かしい声がする。

それでも、下りきった瞼は上がることを拒む。


首を切られることが心地いいとは初めて知った。





「リーちゃん。お散歩に行かないの?リーちゃん?」




“リーちゃん”???


私のことをそんな風に呼んだのは、死んだお母様だけ。


嗚呼、そっか。


これは走馬灯なのか。


若しくは夢。


処刑された私が、死んで尚見る、幸せな夢。



「お母様……?」


「お早う、リーちゃん。よく眠れた?」


目の前で笑っている。死んでしまったお母様が、あの幸せだった日々と変わらない笑顔で。


「おか、……お母様……っ」



「あらあら?」



夢ならば。


そう思い抱きついた。

抱きつけたことに驚きながら温かいからだをぎゅっとする。


「甘えん坊さんねぇ、リーちゃんは」


ふわっと体が浮き上がる。


浮き上がる……?


「えっ……」


私はお母様に抱き上げられていた。


何かがおかしい。


十六を越した娘を、華奢で小柄な母が抱えられるわけがない。


「明日には四歳なんて…………。子供はあっという間に大きくなってしまうのねぇ〜」


明日には四歳……?


なんて夢だ。

一番幸せだった頃の夢なんて。


思わず泣いてしまいそうになりながら、お母様の胸に頬を擦り寄せる。


たった一人のお母様。

たった一人、私だけを愛してくれた人。

たった一人の家族。


今この時だけは、愛を感じていたい。



生前と何も変わらないお母様に、甘えながら時間を過ごす。


きっとこの夢は、眠ったら覚めてしまうのだろう。



「お母様、私、眠りたくない……」


ベッドに横たわった私の手を握り髪を撫でていたお母様は、そんな私の言葉に優しく微笑んだ。


「大丈夫よ、リーちゃん。明日はリーちゃんのお誕生日だもの。素敵な日になるわ。だから、安心してお眠りなさい」


促され目を閉じる。



さようなら、お母様。


居るのか居ないのか分からない神様。

最期の夢をありがとう。









____________________




「お早う、リーちゃん。そして、お誕生日おめでとう。」



why???


え、ちょ、待ってください。

え、ワタシイキテル???

え、え???



「さぁ、これから王宮に行くわよ〜。国王陛下がね、リーちゃんをお祝いして下さるんですって」


え、うん、え、知ってる。


四歳の誕生日、私は王宮に行く。

そこで王太子と婚約するのだ。



「王子様にも会えるわよ〜〜〜。王子様はね、リーちゃんの一つ年上でとっても可愛らしいの」



え、お願い、誰か説明を下さいませ。


あれですか?


死ぬ間際に、人生やり直せたら……とか思ってたけれども。


実際にそうなったってことですか???



「ルミア様っていって、金髪に淡いブルーの瞳なの〜」


あ、間違いなさそう。


「王子様と結婚したら、幸せになれる…………御伽噺ではそう言われてるけれど……。リーちゃんどう思う?」


どうもこうも幸せどころか処刑されました。

結婚する前にね。


「仲良くなれるといいわね〜」



全力でお断りします……。



____________________



お母様に可愛らしいドレスのようなワンピースを着せられ、朝ご飯を食べさせられたあと、「時間まで待っててね〜」と部屋に一人残された。


さて、状況を整理しよう。


前回の人生、十七歳で首を刎ねられて死亡。

目を覚ましたら、前世の記憶を持ったまま三歳……、今日で四歳。


見たところ、前世と何も変わっていない。


父親は家にいないし、お母様は私を可愛がってくれている。


極めつけは本日の王宮訪問。


完全に前世と流れが一緒ですね。はい。


んしょんしょと移動してドレッサー前の椅子に座る。


覗き込んだ鏡に映るのは、赤みがさした茶色の髪に、淡い藤色の瞳。

少しだけ下がった目尻。ぽってりとした赤い唇。


お母様とそっくりな顔。


前世も、お母様の生き写しだと言われた顔。




「リーちゃん?そろそろ行きましょうか〜?」



そう声をかけられ、お母様に駆け寄る。


「ねぇねぇ、お母様。」


「なぁに?リーちゃん」


馬車に乗るべく、お母様と手を繋ぎ歩きながら、お母様に話しかける。


「お母様はしあわせ?」



お母様は足を止めて私を見た。

そして、私を抱きしめて言った。


「……えぇ。幸せよ。私にはリーちゃんが居てくれるんだもの。リーちゃん、リーちゃんも幸せに生きてね」



どこか悲しげに、でも明るく優しい声は、すとんと胸に落ちた。



「お、かあ、さま…………」








私は決めた。


二度目のこの人生で、私は幸せになる。



お母様をこんな目に合わせた父を。

亡くなっても尚、お母様を粗野に扱い続けたあの男を。


私から幸せを奪った継母を、異母妹を、王太子を。


絶対に許さない。


もう一度、同じ人生を繰り返すというのなら、変えてやろうではないか。


この下らない人生を。


果たそうではないか。


虐げられ続けたその恨みを。



私は、絶対に幸せになってみせる。


その為には、奴らに復讐しなければ気が済まない。





「……お母様、私も、お母様が居るから幸せよ」



覚悟しててね。

ありがち設定ではありますが、復讐!復讐!と張り切りつつ、前世と違い、心の声と毒舌を隠しきれなくなった可愛いリーリアちゃんの活躍をご期待あれ。

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