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7回目のReスタート  作者: くらはし
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第2話 確認と、やらなければいけない事


 ゆっくりと体が浮上する感覚に目覚めが近い事を悟る。

 覚醒しきっていない頭でも鳥の鳴き声が小さく聞こえてくる事から再スタートを確信する事が出来た。全く、アルは最後の最後でとんでもない爆弾を落としていったものだ。彼の最後の言葉とは言えあれは無い。

 こちとら初恋は幼稚園時代で済ませていたが、死んだ時にしか会えない相手に長い事恋をしてしまったのだ、拗らせたんだよちくしょうめ!!

 でも最後の最後で私に心残りが無いようにしてくれたんだと思う。何だかんだで私の事を心配してくれていたし、きっと早い段階から私の恋に気づいていたんだろう。

 最後に見たおばあちゃんは考えなくても分かる。未来の私、そしてアルの現状だった。

 笑って言ったのは幸せだったと心の底から伝えたかったんだと思う。馬鹿みたいに明るく言い放ったのはきっと私を含め旦那や子供、孫との別れをしみったれてしたくなかったからだ。

 あーやだやだ。なんだかアルの事が手に取るように分かってしまった。長かった恋はおしまい。あの世界で幸せを掴んでくれたんだ。私は心の底から祝福しなければ!


 と、起きる5秒前の私なら思っていました。


「……やっぱり無理だぁああ!!納得できん!!!ふっざけんなあの野郎ぉぉ!知るかボケ!!!」

 

 横になっていた体を勢いよく起こして鼻息荒く周りを見回す。

てっきり部屋にいるものだと思っていたが違った。私が今いる場所は外。

 首を動かし木々の隙間から真っ白な建物がちらついてようやく位置も把握できた。

今いる場所は中庭でどうやら外で優雅にお昼寝タイムしていた所に戻って来たらしい。


 両手を見つめ頬を触る。うん。弾力がある。

よいしょと腰を上げ足先を見ればなんとまぁ可愛らしいサイズの靴だこと。手を見た時もそうだったがまだ10もいっていないのかもしれない。

 まずは鏡を見て顔を確認。その後は自分の部屋を物色して今が何月何日であるかを確認する。

背筋を伸ばし首を回して足首も回す。いくら幼い体とは言えいきなり走り出せば体がびっくりしてしまうしこけるのも勘弁。

 準備運動は何歳でも大切なのだよ!!!と、ココに誰がいると言う訳でもないが大声で意気込む。

  という訳でお昼寝タイムは終了!急いで部屋へと戻らなければ!!!


 


…突然だけど、再スタートの始まる時期は毎回ランダムだ。赤ちゃんの時からもあれば15歳の時に戻ったりと、この時期に戻りたい!というピンポイントな戻りは出来なかった。

 何の気まぐれかアルの呪いか、いや呪いは無いか…

とりあえず2回程スタートを繰り返して学んだのはまず日記を見る事。

日記と言うのはアルの日記の事だ。貴族は日記を書かなければいけない法律でもあるのか、例外なくどの家の子供も大人も日記をつけていた。

 だからその日記を見れば今までのアルの行動はある程度分かる、と言う事だ。



部屋に戻って一番下の引き出しに入れられた5年分は書ける日記帳を取り出す。

 日記帳は全部で1冊。という事は5歳~10歳以内。

文字の勉強の一環として日記を書き始めるのは大体5歳からだ。

 まぁ個人差があるので早く書ける子はもっと早くから書いていたりする。しかしアルは5歳の中盤辺りから書き出していたから間違っていなければ途中で止まっている筈!!!

 一度深く深呼吸してから日記帳をおっぴろげる。



「………あー…うん、わかった」



 静かに本を閉じて頭を抱える。

今日が何日で何歳であるかは理解した。

西暦は…こちらでは西暦と言わずミナス暦にと言うが、ミナス暦2019のキーア18。

 日本で言う秋シーズンの18日。この世界では1月2月と言う概念はなく、3か月で1シーズンが変わる。ちなみに3か月は90日でここら辺は日本と左程変わらない。

…だがしかし、タイミングの悪い時に戻ってしまったものだ。何故って?



「よりによって父上のベッド下からエロ本が見つかった時かっ!!!!」



 正直避けたかった出来事の一つである!!なんてこった!!!!

ぶっちゃければ大きな分岐点。というのも、この出来事で母上が家出してしまうか、しないかによって今後が大きく左右される事になる。

 家出をしなかった場合、何日かの夫婦喧嘩が続いただけでなんとか持ち直す事ができた。ここらは日記で確認した事があるので間違いない。

 母が家出をしてしまった場合、父は酒に逃げ仕事をしなくなり没落した人生とそれによって爵位が剥奪、必然的に平民に落とされる事を強制させられた。


 ちなみにこれは2回目の転生時に起こった出来事だ。そしてコレを回避しなければならないのである。

 なぜならば、2回目の死亡は没落した事により生活が一変してしまった事によるストレス死。

 いや別に平民として生きるのは一向に構わなかった。と言うより平民生活の方が私には合っていた。なのに何故死んだかと言えば、父と兄達による精神的なすり減りだ。

 元から裕福な生活をしている人達にこの生活は耐えられなかっただけである。

当たり前だ。服を着替える事すら手伝ってもらい、帰ればご飯も既に準備されている。寒いと言えば暖炉の火をつけてくれるメイドがいて、眠ければ温かなふわふわのベッドで眠れていた。

 それが没落してしまえばどうだろう。健気にもついてくる使用人は誰一人おらず、必然的に今までやってもらっていた事を自分達がしなければならない。食事すらまともに作れずベッドは藁や薄手の布1枚ずつ。

 ペンや剣を持っていた手は鍬に変わり自分達の食い扶持は自分達で育てなければならず、畑の事を教えてくれる村人すらいなかった。


 まぁ私は適用できていたが、適用できない家族の代わりに少ない食糧で食事を作り、鍬を真面に扱えぬ家族の代わりに畑作業は人一倍やった。更に常に母の愚痴を吐き続ける父の暴言を毎日のように聞き、兄達は生活に耐えられないと荒れに荒れ家族の仲は壊滅。

 これを体験したのは肉体年齢が8歳の時。

8歳の子供がこれだけの事を1人で続ければ体にガタが来るのは当然な訳で。

 畑仕事の最中、風邪を拗らせ死んだ。


 そしてこの話をした時、アルはとても辛そうな顔をしていた。

無理もない。実家が無くなってしまった上に人が変わってしまった家族になんと声をかけていいのかなんて当時の私には分からなかった。

 震える声でもう一度行けと言われほとんど話す事もできず3回目に戻った時は既にこの出来事は終わっ

ていて母は家出をしておらず没落していなかった。


 つまり、絶対に母をつなぎとめておかなければいけない重大な分岐点なのである。

そしてこの出来事は今回で2回目。他の時は全てこの出来事は終了していて家は存続していたのだ。

 だからこそ、何としても、回避せねばならない!


「今何時だ?!」


 部屋に備え付けられている大きな時計を見てほんの少しホッとした。

今の時間はお昼過ぎ。母上がエロ本を見つけるのは夜で、父上は仕事真っただ中。


 つまり、父のエロ本を回収するには今しかないという事だ。


「エロ本を回収したとして、その後どうやって説明すべきか…」

 本当であれば説明してしまえばいいだけなのだが、仮にも息子の手から隠してあったエロ本を渡される父の心境はたまったものじゃないだろう。


・私もこれが見たくて!…いやいや8歳がそんな事言う訳ないだろう。

・絵本を見つけたので持って帰って見てました!…これもアカン。

・それ私のです!…アウトォ!!!!!!

☆母上に見つかりかけていたから危ないのではと思って持って行ってしまいました。


…コレだ!!!!!!!!!

 そうだ。母と一緒に父の部屋を訪ねた時にベッドの下から出ていた本を取り出そうとして止めた事がる。あまり良い顔をしていなかったから母上が見たらダメな物だと思って隠し持っていた…

 コレしかない!!!コレなら謝罪も出来てやんわりと処分してくれと言えるかもしれない。なんって私は天才なんだ!!長生きしていただけはある!!!

 そうと決まれば早速父の部屋へ行ってエロ本を回収しなければ!!!

 

急いで日記帳を引き出しへと片付け、私は大急ぎで父の部屋へと向かったのだった!!!

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