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いつき

少し書き直しました。


 目の前で笑顔で接客してくれているのは、ゲンさんの娘さんで名前をいつきさん。このお店には、これからい世話になるんだから、ちゃんと自己紹介をしておこう。


「僕は見習い勇者のみつき、こっちはパーティメンバーの僧侶のゆづきって言うんだ。今後ともよろしくね」

「こちらこそ。私はゲンの娘でいつきといいます。今後とも御贔屓に……ん?」

 いつきさんは僕をジッと見つめる。あの目は、魔眼とは違うと思うけど、なにか不思議な目だ。全てを見透かされているというか、なんというか……。

 どっちにしても、見つめられると恥ずかしい。

 僕は顔が熱くなっているみたいだ。

「あ、ごめんなさい。それにゆづきちゃん。久しぶり」

「ん……」

 え? ゆーちゃんといつきさんは知り合い?

「それで何かをお探しですか?」

 あ、そうだ。僕はここに物を買いに来たんだ。

「薬草と毒消し草をそれぞれ4個、あと道具袋っていくらするの?」

 道具袋があれば、魔獣や魔物の素材を持ち帰ることも出来る。それを売れば少しはお金にも余裕が出来るはず。

「道具袋は一つ12万ルーツです」

「高っ!!?」

 そ、そんなにするの? 甘かった、もっと安いものだとおもっていた。

 しかし、王都は物価が高すぎない? 流石にこれは納得できないというかなんというか。ゲンさんは薬草を数百ルーツで仕入れていた筈だ。

 僕が納得いかない顔をしていると、いつきさんが薬草や道具袋の値段が高額な理由を教えてくれた。

「みつきさん、考えてみてもください。どれだけ大きな物でも収納できてしまう道具袋、作ってるのは王宮勤め出来るような優秀な魔術師、彼等が大量の魔力を使って、空間魔法を袋の内部に留めて出来る便利な袋が、安いなんてありえません」

 た、確かにその通りだ。そんな凄い技術を使ったものが安いわけがない。もしかして薬草も?

「その通りですよ。薬草を煎じて塗りつければ傷が治る、飲めば病が治る、そんな奇跡の草が安いわけありません。お父さんが魔大陸で安く大量に仕入れても、店に戻るころには半分以下は使えなくなります。だから高騰しているのですよ。毒消し草も同じ理由です」

 全くもって高くて当たり前の話だ。僕が間違っていた。コレばかりは仕方がない。

 僕は今回ばかりは道具袋をあきらめる。クエストを繰り返してお金を稼がないと。

 僕がそう決意していると、ゲンさんがいつきさんに何かをお願いしようとしている。

「な、なぁいつき、父さんな、嬢ちゃんの村のみんなには世話になったんだ……だから、その……」

 ゲンさん、どんどん声が小さくなっているよ。がんばって!!

「なに? お父さん?」

 いつきさん、笑っているのに怖い。何かどす黒いオーラが出てる、気がする。これはダメだ!!

「いや、ゲンさん。お金はちゃんと貯めてくるから、いつきさん、薬草と毒消し草、さっき言ってた4個ずつお願い」

「はい、わかりました! 少しお待ちをー」

 そう言って、いつきさんは店の奥に入っていった。


 いつきさんがいなくなってから、ゲンさんが申し訳なさそうに僕に謝ってくる。

「す、すまんな。いつきには頭があがらないんだ」

「いいよ。そっちも商売だもん」

 僕達が小声でそんな話をしていたら、いつきさんが奥から戻ってきた。


「薬草4つで3万2千ルーツ、毒消し草4つで4万ルーツ、合わせて7万2千ルーツになります。あ、これから長い付き合いになりますので7万ルーツにオマケしておきますね」

 やった! 少しだけ安くなったぞ!

 僕は残ったお金で、動きやすそうな服を買う。

 僕はお金を支払って店を出た。店の外でゆーちゃんが座っていた。いつの間に店の外に出たんだろう?

 ゆーちゃんは僕が出て来たのを確認すると僕の傍まで歩いてくる。そして手を握って来た。

「ゆーちゃん、店では静かだったよね。どうしたの?」

「あいつにがて」

「あいつっていつきさん?」

「うん」

 冒険者ギルドであんなにみんなに怖がられてたゆーちゃんが、何故いつきさんを苦手なんだろう? 二人の間になにかあったのかな?


「とりあえずさ、道具袋はこの先必要になるから、そのお金を稼ぐためにギルドでクエストでも受けに行こうか」

「うん」

 二人でギルドに向かおうとしたとき、店からいつきさんが出てきた。

「みつきさん、待ってください」

 僕に用があったのかな? なんだろう?

「なにしにきた」

 ゆーちゃんがいつきさんを睨んでいる。いきなりひーるを使いそうで怖い。でも使わない。なんでだろう?

「道具袋を先に渡しておきます。お金は後払いで構いません」

「なにをたくらむ?」

 ゆーちゃんがいつきさんを凄く睨んでる。

「先行投資ですよ、魔獣や魔物の素材を優先的にうちの店に持ってきてほしいんです。もちろん高く買い取りますよ」

 なるほど、それなら確かに先行投資にもなるのかな?

 それにしても、なんでゆーちゃんはいつきさんには攻撃的なんだろう? リリアンさんには……いや、攻撃的だったね……。

 だとしても、どうして魔法を使わないんだろう?リリアンさんの話だとすぐに使うと言っていたのに。


「みつきさんが思っていることを、当てて見せましょうか?」

「え?」

「どうして、ゆづきちゃんが魔法を使わないのか、でしょう?」

 そう、それが聞きたかったの。横でゆーちゃんがギリギリ言ってる。

「う……うん。どうして?」

「私には魔法が効かないんですよ。ゆづきちゃんは、それが気に入らないみたいですね」

 魔法が効かないから気に入らないって、ゆーちゃんの天敵ともいえる人だなぁ。


「道具袋の料金ですけど、12万ルーツのところを10万ルーツで構いませんよ。頑張ってくださいね」

「え? 値引きしてくれるの!?」

「余計なお世話でしたか?」

「そんなわけないよ!! ありがとう!!」

 凄くで嬉しい。2万はかなり大きいよ。あれ?ゆーちゃんがさらにギリギリ言ってる。僕の手を握る力が強くなる。


 道具袋を受け取った僕達は、いつきさんに見送られて、冒険者ギルドに帰ることにした。

 道中、ゆづきちゃんをなだめるのに苦労したのは、言うまでもない。


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