ランクと職業
少し書き直しました。
リリアンさんは、僕の腕を引っ張って無理やり冒険者ギルドの受付のあるロビーへと引きずっていく。
ロビーはかなり広く、いろいろな冒険者がいるようだ。強そうな剣士? 重過ぎて動きを完全に殺すような鎧を着た重戦士。吹けば飛びそうな魔術師?
……あれ? すっごい弱そう。
僕はさっきのゲイルと呼ばれていたおじさんを見る。
受付にいるゲイルさんの方が強そうだぞ?
「みつきちゃん。ゲイルさんを方を見て不思議そうな顔をして、どうしたの?」
リリアンさんに聞かれたので反射的に思っていたことを言ってしまう。うん。これが不味かった……。
「ゲイルさんの方が冒険者より強そうだなって」
僕の言葉にロビーにいた冒険者達が騒めきだした。
ヤバ……と思っていると一人の剣士が怒った表情で僕の方まで歩いてくる。
「おい!! 小娘!! 今なんて言った!! 俺達が弱いだと!?」
一人が来るとわらわらと次から次から来る。
「お前みたいなガキがくるところじゃねーんだよ!!」
「受付なんて、強いわけないだろ!? ただ、でかいだけさ」
こいつらを見ていると誰かを思い出す。
……あぁ、ひと月ほど前に村に来た、アホな魔族のようだ。
いるんだよね。一般人より強いからと言って威張る奴。そういう奴って、だいたい自分より強い人に痛い目に合わされるんだよね。
「いい加減にしなさい!! この子は新しい見習い勇者よ! 国から選ばれた勇者なのだから、あなた達よりもランクは上になるわ!!」
リリアンさんが怒ると、馬鹿三人は少し引いている。美人さんは怒っても絵になるよね。
とはいえ、リリアンさんが僕を庇ってくれたのは嬉しいが、こういう奴等は痛い目に合わせないと迷惑になる。僕の村では常識だ。それに、この程度の連中ならなんとかなりそうだ。先にやっとくか?
僕は、剣士に向かって踏み込む。
「みつきちゃん!」
呼ばれたときには、僕の拳は剣士の腹に深くめり込んでいた。
「うごぁ……」
剣士はうずくまって膝をつく。そのまま動かなくなる。
動かないと思ったら白目になって、口から泡を吹いてる。気絶したのか? マジか!? 僕は本気で殴ったわけじゃないよ?
「や、やろう! 仲間を!」
こいつは、僕をガキ扱いしたやつだな!蹴り飛ばしてやる!
「みつきちゃん! 待って!」
待たない。もうすでに蹴りは重戦士の腹部を直撃している。
ドガッシャアアアアン!!!
蹴りで重戦士はギルドの壁にもたれかかっている。
静まり返るロビー。重戦士は白目を剥いてる。鎧は蹴った部分が砕けてある。どれだけ脆い鎧を着ていたんだ? 屑鉄で鎧を作るからそうなる。こんなので戦闘をしていたら仲間を守れないよ?
そんな奴が重戦士を名乗れるのか?
さて、あと一人か。睨み付けてみたら、魔術師はガクガク震えている。
「どうしたの? ゲイルさんをただ体がでかいだけって言っていたじゃないか。あの人がでかいだけなら、僕なんて、ただの小娘だよ? さて、どうする?」
僕は、挑発するように魔術師に向かって拳を突き出してみた。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
魔術師は泣きながら冒険者ギルドから逃げて行った。
こんな小娘相手に逃げるなんて根性無いなぁ……。リリアンさんも呆れた顔をしているよ。当たり前だよね。
あれ僕をジッと見ている。なんでだろう?
ゲイルさんが、のびている二人をどこかに引きずって行く。僕はそれをジッと見ていた。
リリアンさんが僕の肩に手を置いてあいつらの事を説明してくれた。
別にどうでも良かったけど、あの三人は一応ゴールドランクらしくて、いつも問題を起こしているそうだ。ゴールドランクといっても、転送されてきた僕にはよくわからないので、冒険者ランクについて聞いてみた。
リリアンさんによると、下からカッパー、シルバー、ゴールド、ミスリル、オリハルコンの五種類あるそうだ。あいつらはゴールド。一流と呼ばれる冒険者らしい。
え? あれで? 不意打ちだったから、軽く殴っただけで沈んだ奴が? 一流の質が低すぎない?
僕が不思議そうにしていると、リリアンさんが僕の肩に手を置いて「みつきちゃん、受付で冒険者登録しに行きましょう。みつきちゃんなら、適性審査できっと相応しいランクになるから」と言われる。
僕に相応しいって言われても、こんな普通の小娘に何を望んでいるんだろうか。
勇者専用と書かれた受付には優しそうな女の人が座っている。
「ラビ、この子の適性審査をお願い」
「わかりました。では、この魔宝玉に手を置いてください。職業と相応しいランクが表示されます」
ラビさんは、魔宝玉を取り出して僕の前に置く。
これはランクや職業を見る事の出来る魔法具だ。
僕は魔宝玉に手を置いてみる。
みつき
職業 真なる勇者
ランク オリハルコン
………は?
まてまて! なんで最高ランクが表示されているの!?しかも真なる勇者ってなに!?
ほら、受付の人もリリアンさんも驚いて口が開きっぱなしになってるじゃないか。
「なにかの間違いだよ! もう一回やってみる」
みつき
職業 真なる勇者
ランク オリハルコン
さっきと同じだ。なんなの?
ガタッ!
僕達が騒いでいると、受付の前に置いてあったソファーが揺れた。
僕はソファーの方を見ると、紫色の髪の毛をした女の子が起き上がってきた。周りの冒険者達が一斉に女の子を見る。
何人かの冒険者は一歩後ろに引いた? なんでだ?
「ゆ、ゆづきちゃん」
リリアンさんが、ひきつった笑顔で女の子の名前らしきものを呼んだ。
ゆづきちゃんと呼ばれた女の子は、真っ直ぐ僕の方へと歩いてくる。
リリアンさんは僕とゆづきちゃんの間に立つ。
「なに? ゆーちゃんはそこのひととはなしがある。じゃまだめ」
そう言われて、リリアンさんは一歩下がった。なんでこんな小さな子にみんな怯えているの?
「えっと、僕に話があるそうだけど、なに?」
「おなまえ」
「僕はみつき。君はゆづきちゃんだよね?」
そう言うとゆづきちゃんはニコッと笑った。可愛い子だなー。妹にしていいかな?
「ゆーちゃんってよんで。ゆーちゃんもみーちゃんってよぶ」
「え? あ、わかったよ、ゆーちゃん。よろしくね。話はそれだけ?」
ゆーちゃんは頭を横に降って
「みーちゃんのなかまになる」
ゆーちゃんは僕に向かって、そう宣言した。