絶望の村
少し書き直しました。
リリアンさんが真剣な目で僕を見つめてくる。美人さんに見つめられると照れるんだけど……。
「みつきちゃん。正直に答えてほしいの……」
リリアンさんは、僕の肩をガッチリ掴んできた。あれ? これは何か嫌な予感がするぞ?
なにか不味いことでもしたんだろうか? そんなはずはないと思っていたが、心当たりが一つだけあった。
アレか……?
「勇者の間。みつきちゃんがここに来て最初にいた部屋だけど、そこの扉が内側から破壊されていたの。なにか知らない?」
やっぱりそれかー!!
鍵が掛かっていたとはいえ、蹴破ったのはやり過ぎたか? でも、アレくらいなら村のみんなだって出来るはず。
いや……ここは素直に謝っておこう。
「ごめんなさい。いきなりこんな所に連れてこられて、怖くて逃げようとして、扉をちょっと蹴ったら壊れてしまって……うぅ……」
よし! 強制転送に怯えたふりをすれば、扉を壊したことも許してもらえるはず。
だってあの扉凄く脆かったもん。
あれ? 二人の顔が驚愕した顔になってるぞ?
「ゲイルさん・・・・・・に・・・・て」
「ハイ」
リリアンさんがおじさんに小声で何かを言ったと思ったら、おじさんが慌てて部屋を出ていった。なんでだろう?
「みつきちゃん。今言ったことは本当のことなのね?」
「え? 何が?」
「だから蹴破ったって……」
「あ、うん」
あれ? もしかして、僕なにか不味いことを言った? ま、まさかあの扉物凄く高価なの!? 高価だったなら、最悪だ。今の僕にはそんなものを弁償するお金なんて無い。どうしよう……。
「みつきちゃん。貴女、出身はどこ? 有名な町?」
なんでここで、僕の出身地の話になるんだろう? それに、言っても信じるのだろうか。王都の人間が勝手にイメージ付けている、あの絶望の村だ。王国から、魔族に支配されていると言われている絶望の村だよ?
「言っても信じないと思うよ。僕の村は、辺境の地の魔大陸にある村で、王都の人間から絶望の村と呼ばれている村だからね」
僕の言葉にリリアンさんの表情が変わる。
「王都の人達は、あの村の人間は、魔王に支配されてると思ってるんでしょ? でもそれは勘違いだよ? 実際は支配なんてされてないからね。むしろ魔族とは仲が良いよ」
「絶望の……村? 魔族と仲がいい?」
「うん」
リリアンさんは、暫く何かを考えていた。やっぱり絶望の村出身というのは、勇者として問題があるのだろうか……。
も、もしかして……このまま捕まって牢屋に入れられるんじゃ……。
仲が良いと言っても、別に村人が魔王の手下というわけではない。確かに、何人かは魔王のファンはいるが、それは仕方ないかもしれない。魔王は、同姓の僕から見ても美人さんだ。しかし、村人全員が魔王軍に入っているわけではない。確かに何人か魔王軍にいると聞くけど……。
そもそも勘違いなのが、魔大陸は魔族に支配され、人間が虐げられてる訳ではなく、どちらかというと平和だ。
なぜなら、魔王軍が治安の維持をしっかりしてくれているからだ。たまに、アホな魔族もいるけど。
当たり前だけど、リリアンさん達王都の人達はそんなこと知らないだろう。よ、余計なことを言ってしまったかも……。
「絶望の村の人は、みんなみつきちゃんがやったことを出来るの? それとも、みつきちゃんが特別なの?」
やったこと? 扉を蹴破るくらいはできると思うけど……。
僕が特別? そんなわけがない。僕はただの村娘だ。
「うちのじいちゃんなら、扉を粉々に出来ただろうし、隣のおじさんでも、簡単に吹き飛ばせたと思うよ。あ!王都からたまに来ていた行商人のおじさんでも出来ると思う」
「その行商人の名は!?」
「たしか、ゲンさんとか言ってた」
僕がゲンさんの名を出してから、リリアンさんは何かを考えている様だった。もしかして、ゲンさんって有名なの?
「リリアンさん」
さっきのおじさんが帰ってきたようだ。何かをリリアンさんに話してる。なんだろう?
「そう……」
話を聞いたリリアンさんは、少し困った顔をして、僕をじっと見つめていた。
「みつきちゃん……落ち着いて聞いてね」
リリアンさんは真剣な顔で僕の方を見つめてくる。
だから、美人さんの真剣な顔は精神的にダメージを受けるんだけど……。
「みつきちゃんにはとりあえず、冒険者ギルドの方に登録してもらうわ。勇者についてはじっくり仲間を探してから説明するから……」
「じっくり仲間? 僕は適当に安全なクエストをやって、早く引退して、王都でのんびり生きていくつもりなのに?」
「ダメよ!!」
リリアンさんが凄い剣幕で僕の肩をガッチリ掴んできた。何で?
「みつきちゃんには頑張ってもらわないと。みつきちゃんなら大丈夫! きっと、いい勇者になれるわ!」
「いや、別になりたくないんだけど……」
「みつきちゃん! 応援してるわよ!」
いや、人の話を聞けよ!