プロローグ
なろうの小説を読んでて、書いてみたくなったので、見切り発車ですけど書いてみました。
読みにくいかと思いますけどよろしくお願いします。
僕の住んでいる村があるアロン王国には、クジ引きで勇者を決めるというはた迷惑なしきたりがある。
このクジ引きは王国に属する町や村に配られ、アタリを引いた者は強制的に王都の冒険者ギルドにまで転送されるらしい。そこで見習い勇者として、奴隷の如く死ぬまで働かされるらしい。
クジ引きで選ばれる以上、アタリを引くのが優秀な人間ばかりなわけがない。それもあってか毎年のように無駄に見習い勇者が命を落としていると聞いたことがある。
しかも、命を落とした見習い勇者の遺体は家族に返されるわけでもなく、そのまま放置されるらしい。
この話を行商人のおっちゃんに聞いたときは、一番滅ぼされるべきは魔族じゃなくて、アロン王国の王族なんだろうなと思った。
つい最近も、若い見習い勇者が王国の近くで命を落としたそうだ。
行商人の娘さんも、クジを引いたそうだが選ばれなかったらしい。おじさんは残念だがうちの娘には勇者の資格はないと言っていた。王都では見習い勇者に選ばれるのが名誉なことらしいが、クジ引き如き、運で勇者に選ばれてわざわざ命を危険にさらすのは、バカバカしい事だと思う。
僕の名前はみつき。アロン王国の中で最も辺境の地にある名前もない村に住む、ただの村娘だ。で、なんでこんなバカみたいなクジ引きの話をしてるのかというと、目の前にいる僕の祖父……じいちゃんが、そのクジ箱を持っているからだ。
僕はこの村の村長であるじいちゃんと二人暮らし(母ちゃんは近くのお城で出稼ぎをしている)なのだが、僕から見てじいちゃんはかなりの変わり者だ。どうも勇者に憧れているらしく、はた迷惑なクジ引きが、この村に来るのをずっと待っているといつも言っていた。そんなじいちゃんが気持ち悪いほどの笑顔でそのクジを持っている。
僕は面倒くさいという感情を顔に出さないようにじいちゃんに尋ねた。
「じいちゃん、それどうしたの?」
じいちゃんは満面の笑顔で、クジ引き箱を両手で持ち上げて「気が付いたら置いてあったわい。王国軍の兵士が持ってくるとは聞いたことはあるが、まさか黙って置いていくとは思っていなかったわい」と満面の笑みで叫んでいた。正直、うるさいんだよね……。
しかし、じいちゃんのいたずらかと疑ったけど、じいちゃんが仕込んだものじゃなかったのか。嘘をついている事も考えられるが、じいちゃんは不器用だから、こんなに綺麗な箱を作ることはできないはずだ。じゃあ、誰のいたずらだろう?
流石に僕は、信用することが出来なかったのでじいちゃんに「いたずらじゃないの?」と疑って聞いてみた。
「こんな辺境の地でそんないたずらをして、何の意味があるんじゃ? ところでみつき」
「ん?」
じいちゃんの気持ち悪い笑顔が、さらに気持ち悪くなった。じいちゃんがこんな顔をしているときは、大体ろくなことを考えてないときの顔だ。どうせ僕に引けとかいうんだろうな……。
その前に自分で引くかな?
「わしが最初にひく。わしは村長じゃから、その権利はあるはずじゃ。よく見ておくのじゃ! このわしの雄姿を!!」
いちいち叫ばないで欲しい。耳がいたくて仕方ないよ。
「どうした? 村長。いきなり大声出して」
隣のおじさんがじいちゃんの大声で、様子を見に来たようだ。おじさんは村人と思えないくらい、屈強な体をしている。いや、よく考えたら、うちのじいちゃんも70歳手前の老人に見えないくらい、体格はいい。
「これじゃぁぁぁぁぁぁ!!」
じいちゃん天を突くように振り上げた手に握られていたクジには、大きな字でハズレと書いてあった。
うわぁ、じいちゃんの顔が青褪めて、いや、むしろ白くなって、泣きそうな顔してる。ガックリと肩を落として、あ、なんか可哀想になってきた。
「村長、何があったかは知らんがそう気を落とすな」
おじさんがじいちゃんを慰めている。それで立ち直ればいいけど。あれ? じいちゃんの体がフルフルと震えている。そして僕のほうを見て叫んだ。
「みつき。次はお前が引くのじゃ!!」
時間差で言ってきか。でも、僕の答えは最初っから決まっている。
「ヤダ」
まったくバカバカしい。勝手に置いていかれたようなものを何で引かなきゃいけないのか。引いてほしいなら、ちゃんと王国軍の兵士が誠意をもって説明して、引いてくださいって言うのが普通だろう……。
「何をぬかすか! わざわざ王国軍の兵士が苦労して、ここまで持ってきてくれたのじゃぞ!」
いや、じいちゃん兵士が持ってきたところ見てないじゃん。苦労したかもわからないし、本当に兵士が置いていったかどうかすら、わからないのに。
「今までこの村に、王国軍の兵士が来たことないじゃない。この大陸に来るだけでも、大変だと聞いたけど?」
この村はアロン王国に属してはいるが、王都のある大陸にあるのではなく、海を隔てた別の大陸にある。
この大陸は魔族である魔王アリスが統治する大陸で、魔大陸と呼ばれている。
僕の住んでいる村はこの魔大陸でも魔王城に一番近い。どのくらい近いかというと、今、僕がいるところからも魔王城がばっちり見えているのだ。王都の人達は、この村のことを魔王軍に侵略され、魔大陸にいる人間は魔族の奴隷にされていると思ってるらしく『絶望の村』と呼ばれているそうだ。この村には名前なんてないのに。
魔王軍の侵略とやらは、僕が知っている限りは一度もない。おじさんにも聞いてみたけど、おじさんが生まれてからもないらしい。たまに魔王軍に属してない魔族が襲ってくることもあるけど、軍に従軍出来ない弱い魔族だけだ。
実は最近も弱っちい魔族がこの村に来た。物凄く偉そうにしてたけど、ちょっとボコったら泣いて逃げてったけどね。
おじさんやじいちゃんに見つかっていたら、もうその魔族はこの世にいなかっただろう。
「とにかく僕は引くの嫌だからね。別にただの村娘の僕が引く必要ないでしょ? おじさん引けば?」
僕は引く気がないことをじいちゃんに言う、ついでにおじさんに引くことを勧めてた。
「あぁ、クジか。正直引きたくねぇな。なんでよく知らん遠い王国のために、魔王と争わなきゃいけねぇんだ? あほらしい」
おじさんもやっぱり呆れていた。そりゃそうだろう。考えても見てほしい、見ず知らずの王、属しているとはいえよく知らない国の人々のために命を懸ける人間がこの世にいるだろうか?
「何を言っておるんじゃお前は? お前は村長であるわしの孫じゃ。お前がわしの次に引くのが筋というものじゃろう?」
そっちこそ何を言ってるんだ? このじいちゃん……いや、こんなのじじいでいいや。ただの村娘に何を求めてるんだ。
しかし、このじじいは一度言い出したら、絶対人の話を聞かないのはこの村では有名だ。
あー、腹が立つ。おじさんが今度は僕を悲しそうな目で見ている。わかるよね。じじいがおかしい事は100人が見たら100人がおかしいと答えるよね。
しかし、こうなってしまえば僕が引く以外に、この状況を収めることは出来ないだろう。嫌だなぁ。引きたくないなぁ。そんなこと思っていたら、おじさんがボソッとこう言った。
「みつきちゃん、アタリクジは一枚しか入ってないはずだから、ハズレクジの多い最初の方がアタリを引く確率は低いはずだ」
なるほど。確かにその通りだ。村人が全員引いてしまえば、僕も引かなくちゃいけなくなるだろう。それなら数が多いうちに引いといたほうが、確率は低くなるはず。
よし、決めた。僕がアタリを引き当てることはないだろう。僕は運が良いほうだ。きっとハズレを引くはずだ。
「わかったよ。僕も引くよ。次はおじさんだからね」
さっさと引いてしまおう。これでアタリを引いたら、もう運命とでも言って勇者でも何でもやってやる。
「もしアタリを引いたときは、勇者にでもなんでもなってやるよ!!」と強気で言ってみたり。
僕は当たるわけがないと、軽い気持ちでクジ箱に手を入れた。
そして……。
「これはハズレだーーー!!」
勢いよくクジを引いた。そのクジには大きな文字でハズレと……書いていなかった。
え? 僕の中で時が止まった感じがした。ハズレと書いていなかった気がする。おじさんも驚きすぎて、顎が外れそうなほど口が開いている。じじいは満面の笑みだ。殴りたい。きっと見間違いだ。そうに違いない。僕は恐る恐るクジを見てみた。金色の文字で大きくアタリと書いてある。見間違いじゃないようだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! クジで選ばれた勇者なんて、そんなウソでしょ?」
「さっき『アタリを引いたら勇者でもなんでもなってやるよ!!』とか言ってたじゃろ?」
うわぁぁぁぁぁぁ!! じじい、むかつくぅぅぅぅぅぅぅ!!
僕はアタリクジを捨てようとしたが、手から離れない。呪われている!?
アタリクジが少し光りだした。ちょっ!? 何の用意もしてないのに、そんな急に連れていかれるの? せ、せめてお金の準備だけでも。
「じじい!! おかねちょうだ……」
光が急に強くなって。
クジから発せられる光で目が開けてられない。
クジから何か聞こえた気がする。
なんて聞こえたかは、わからなかったけど……
…………
………
……
ようやく光が消えたらしく、僕が目を少し開けると、そこはもう僕の知っている自分の家の前じゃなく、薄暗い部屋だった。