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「逃げて来たのかい?」
「はい、争うつもりはありません」
青年は両手を挙げ、自分の姿を曝け出す。その姿を上から下まで確認した女性は、男の子と共に、ゆっくりと少女の側へ歩み寄った。
「この子は、怪我でもしているのかい?」
「いえ、今までずっと走っていたので……」
「可哀想に」
静かに眠る少女へ、自分の着けていたエプロンと、男の子の着ている羽織を巻き付け、抱き上げた。
驚いた青年は思わず女性の腕を掴む。
「何をする気だ」
「何もしないよ。こんな所で休んでいたら危険だ、付いて来なさい」
「……すみません」
大して気にもせずに青年の手を払い、部屋の奥へ促してくれた。が、それはまた、何かの気配が青年の足を止めた。
何かが、いる。
腰に吊るされた柄に手を掛け振り向くと、建物の入り口に人の姿があった。逆光で顔は見えないが、辛うじて人数だけは分かる。三人。
殺気が青年の肌を伝う。
「何者だ」
金属の擦れる音がして、輝く刃がすっと青年の顔へ向けられた。
「俺の家族に、何の用だ」
「ご家族……ですか?」
そう青年が言葉を漏らした時、大人達の間に、小さな壁が影を作った。