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二日後の夜明け。日の出すぐにそれは突然始まりを告げた。
しかし人の血が通っているとは思えない、一方的な争いは、すぐに終を迎えた。火をつけられ、天高く燃え上がる八つ目の国の城を前に、王は咆哮にも似た声を上げた。
「今これをもって、ここを私の配下とする!!」
何人もの仲間や家族を焼かれ、殺され、耳に残る程の悲鳴と恐怖を見せつけられた人々は、そんな王の元へと付き従い、自国を差し出した。
その日の夜。終わりの見えない祝宴の席で、普段より度数の高い酒を煽る王は、上機嫌で青年の自慢話を始めた。
自分がいかにして青年を育て上げたか、どんな争いを繰り広げて乗り越え、どれほどの腕前を持たせたか。その喋り口調までそっくりそのまま真似できる程に聞かされ続けた話ではあったが、酒に酔っている周りの者は、構わず興味深く聞き入り、時に感心し、いつまでも聞き入り続けている。
そんな王の手から延びる鎖に繋がる少女は、必死に睡魔と戦っていた。
「父上」
「おう、なんだ右腕、お前もひとつ、ここで何か話せ」
「私なんかが話しても面白くありませんよ。それより、折角盛り上がっている所、あんな姿を晒すのはどうかと思いまして」
青年の先にはまるで船を漕いでいるかの様な少女の姿。それでも必死に目を開き、小さくなって座っている。
いつもより乱暴に鎖を引いた王は、器用に少女を手繰り寄せ、髪を掴んだ。
「大した事してねぇのに、もうオネムか? ガキめ」
「ごめんなさい」
突然の事に驚く少女は、乱暴に掴む王の手に触れ、唯一教え込まれた謝罪の言葉を繰り返す。
「ごめんなさい、ごめん、なさい」
「おぅおぅそうかそうか、謝りたいのか? それならもっと喜ぶ事を」
「父上」
気持ちの悪い笑みを少女へ近付け、一枚布で出来た少女の服へ手をかけた王へ、青年はそれでも必死に笑いかけた。
「良ければ私が部屋へ戻しておきましょうか? 折角の久しい宴、思い切り楽しまれては如何ですか?」
「ん? お前もこいつが欲しくなったのか? 残念だがまだやらんぞ?」
真っ赤な顔でニヤニヤと、気持ち悪く笑う王は、わざとらしく少女を抱きしめた。