表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

1-2

「今日も大変でしたね、体は大丈夫ですか?」

「だいじょうぶ」

「そうですか、良かった」


 父はーー王は、毎日飽きもせず、少女をモノとして扱う。それが単純に身の回りの世話だったりするが、大半は目を覆いたくなる王の快楽相手。

 今日はちょっとした手違いで、偶然居合わせてしまった。しかし何を言う事も許されない空間で、青年は見守ることしか出来なかった。

 私に、もう一歩力があればーーーー。

 青年はそんなことを一日中思い続け、その償いを込めて、今日はリンゴを持参した。

 少女が唯一、言葉を知っている食べ物。いつか、いつでも食べられたら……そんな気持ちを握った拳に込め、落ち着かせる。


「たべた」


 満足そうな声が聞こえ、青年は背を預ける扉へ振り返った。


「今日も何か好きなお話をしましょう」

「はい」

「どんなお話がいいでしょうか」


 夜鳥の鳴き声も、聞こえなくなる時まで話し続けた。

 この国の子供達が、当たり前の様に母親から聞かせて貰う、少女には想像もつかないかも知れない美しい話。

 リンゴを入れた穴から小さな寝息が聞こえ始め、覗き窓から寝顔を確認した青年は、服の埃を払いながらしっかりと立ち上がった。


「いつか、必ず自由にする……」


 私が必ず、この子に本心の笑顔を。

 これもまた日課のように独りごちた青年は、来た道へ再び足を向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ