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山の女神  作者:
山神深音と都会の学校
4/10

山神深音と体験入部

    4


 今日はいよいよ大本命の部活動紹介の日。

 昨日配布された健康診断の調査票も出したし、オリエンテーションでも寝なかったし、自己紹介カードの冊子ももらったし、準備は万端。


「深音、一応何個か違う部活も見て回りましょ。もしも、山岳部が名前だけの部活だったらどうするの」

「えっ、名前だけの部活なんてことがあるの? でも、山岳部に入ることに変更はないよ!」

「……そう。でもあたしは何個か見たいところがあるから、付き合ってね」

「もちろん」


 案内には、ほとんどの部活で体験をするから体操服で来るように書いてあった。わたしもいーちゃんも教室でばっちり体操服に着替えた。三組と二組の女子は三組で着替えることになっていた。男子は二組らしい。二組っていえば、あの男の子だ。あれ、名前が思い出せないな。ううむ、まあいいや。

 山岳部の体験は長くなるから、先に他の部活を見た方がいいとも書いてあって、わたしたちはバレー部と体操部をはじめに体験することにした。


「うわー、いーちゃん、バレー部すごい人だね」

「ホントだわ……。あれだけ居たら、レギュラーになるのも難しいかもね」

「レギュラーって、試合に出る人のことだよね? たしかにそうかも。いーちゃんもやっぱりレギュラーがいいの?」

「あたしは、そうね、レギュラーがいいわ。まあ、大勢で切磋琢磨するのも嫌いじゃないけれど、なんだか部活をやる意味が見えなくなりそうでちょっとね」

「ふーん、そういうもんなんだ。なんか、楽しいからやってるんだと思ってた」

「何言ってんの。楽しくなかったら、部活なんてできないわよ? でもほら、試合に出れなかったら悔しいじゃない。あまりにも実力が離れてたら、楽しくなくなりそうじゃない?」

「そっか、そうだね。入ってみないと分かんないけど、山岳部も新入部員がいっぱいいたら、わたしどうしよ……。あれ、でもいっぱいいたらうれしいな。そもそも、山岳部にレギュラーなんてないんじゃないかな。あれ、あれれ?」

「……まあ、いいじゃない。どっちでも。ま、入部者は少ないと思うけどね」

「そうかな」

「案内にも書いてあったじゃない、切実に入部してほしいって。大丈夫よ」

「うん! いーちゃんも、バレー部とか体操部がダメそうだったら、山岳部に来てね!」

「はいはい、ほら、あたしたちも並びましょ」

「そだねー」


 バレー部にできた長い列にわたしたちも加わった。

 何人かずつに分かれて体験をするようで、グループごとに一人の先輩が付くらしい。前に並んでいた女の子によると、彼女の姉は体験入部でその当時一番厳しい先輩にあたってしまい、入部を断念したそうだ。

 その話を聞いて、わたしはなんて怖いところなんだと思ったが、いーちゃんは打倒先輩に燃えている様だった。

 いーちゃんが山岳部に入ってくれればすごく心強いことには違いないが、やっぱりいーちゃんにはバレーの方が向いているかもしれない。


「あ、あなたたちが最後のグループね」


 ぼけっとしている内に、わたしたちの番が来たようだ。

 前に立っているのは、優しそうな先輩。すごい背が高い。わたしよりも十五センチぐらい高い。わたしの身長は一五七センチだから、一七〇センチ近くあるはずだ。


「ようこそ、体験入部へ! 時間も短いし、さっさとやり始めちゃおうか」

「よろしくお願いします!」

「ちょ、深音……、あの、お願いします」


 先輩は優しそうな見た目に合わず、がっはっはと威勢よく笑った。さっぱりした性格に見えるので、練習でぼこぼこにされることはきっとないだろう。


「勢いあっていいね! あたしは奥村弥生おくむら やよいっていうの。ぜひ弥生先輩ってよんでねっ」

「はい! わたし、山神深音っていいます。あの、体験入部って何するんですか?」

「うふふ、別にしごいたりしないから安心して。特別なことは何もしなけど、私たちが毎日やっている基礎錬を一緒にするだけよ」

「なるほど」


 同じグループの数人はそれを聞いてほっとしたようだ。わたしも安心。

 バレー部の基礎錬って何だろうか。走り込みとかだろうか。何だか違う気がする。

 ちょっとわたしが黙っているうちに、弥生先輩と並んで歩いている間にいーちゃんが割って入って来た。

 横から見てみるといーちゃんと先輩の身長差が良く分かる。いーちゃんはわたしよりも背が高いのでそんなに変わらないかと思いきや、想像より差がある。いーちゃんは一六〇センチ前半だろうな。

 と、いーちゃんは先輩に質問があるみたいだった。


「そうなんですか? 毎年バレー部は体験の生徒同士の試合をするって聞いてたんですけど……」

「ええ、去年まではね。でも、今年は人数の関係上、ちょっと厳しくなっちゃって」

「たしかに、多いですよね」

「ほんとに。あたしたちが一番びっくりしてるわ」


 先輩はコートに付くとカゴからボールをとって、一人ずつ渡してくれる。

 バレーボールは触った事があるけど、本格的な練習なんて初めてなので緊張した。

 何度か先輩がお手本を見せてくれて、各々練習し始める。今日はアンダーハンドパスの練習で、上手くできない人には先輩が指導するみたいだ。

 いーちゃんいわく、やっぱり先輩は上手らしい。あと、ふつう一年生は筋トレとかからやり始めるそうで、この練習をするようになるのは二学期以降だろうということも教えてくれた。

 いーちゃんはキラキラした目で練習している。先輩にも褒められていた。かっこいいなあ。


「もうそろそろ、バレー部の体験が終わるころね。どうだった?」

「バレーって楽しいね! それに、いーちゃんすごく上手いし」

「そうね、楽しいわ! 去年引退してからやってなかったから、腕が鈍ってたけどね」

「ええー、上手かったのに。いーちゃんて、努力家だね」

「普通よ、普通。元バレー部の子はみんな上手かったでしょ?」

「うん、やっぱり山岳部しか道はないと思ったよー」


 次は体操部で、最後に山岳部の体験だ。

 バレー部での体験が終わったので、立て続けに隣りの体操部の体験にも参加する、が、体操部の方はわたしが悲惨な柔軟能力を披露することとなったので、割愛します。とほほ……。

 まあ、これもご愛嬌ってことで。


 さあ、日も大分傾いてきたことだし、山岳部の体験に行ってみよう。

山岳部の話だと銘を打っているのに、なかなか始まらない山岳ストーリーですみません(-_-;)

次の回はやっとこさ山岳部がでてきおりますので、どうぞお楽しみに!!

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