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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
太古の森編
9/27

Foolish kung<<愚王>>

Foolish(フーリッシュ) kung(クン)


 ヴィット、タルウィ、ザリチェは引き返す形になってしまったが……。エレとカラムの元を目指す。

「…次の部屋…そこにカラムがいた…」

「わかりました!準備はいいですか?入ります!」


 ヴィットは驚愕する。先程までいた部屋とは別物になっていた。

 部屋の中に入るとそこは密林。見たこともない植物が室内を埋め尽くしていた。

「……。魔法で作ったものですね。」

「…厄介…だね…。」


「そうですね。これではどこにカラムがいるかわかりません。火の魔法で焼きはらうには少し植物の水分が多すぎて時間がかかってしまいそうですし……。」

「…水分が多い…?…」

「ええ。一つ一つの草木が豊富に水を含んでいます。室内も湿気に満たされていますし。」

「…凍らせるのは…?…」


「それならば効率はいいですね。ただ俺の魔力では部屋全体を凍らせるのは難しいんです。炎と違って広がりませんからね。」

「…私達に…任せて…シュー…やるよ…」

(わかったよ!ヴィット。任せて!)



 私の魔力をこの室内全体に満たす。…全体に…循環させる…

 ヴィットが魔力を集中させるとそこへリームシュークが魔力を上乗せする。


 そしてその魔力を室内全体に満たすと……。

「…こんな感じ…かな…?…」

「こんな感じだね!」「こんな感じだね?」

 二人の悪魔はヴィットの言葉を真似て、手を取り合ってくるくる回る。


 そして室内全体は無理があったようだが、部屋の半分が凍結し植物達がまるでガラス細工のように固まる。

「まるで、氷の結界だ。すごい魔力を秘めていますね。これでもまだ制限がかかっているんですよね?」

 エレは思わず頭を抱える。

「…ごめん…室内全体は…無理だった…」

(これ以上は暴走しちゃうから、ダメだよ。)

「十分ですよ。」



「……氷か。さっきはそんな暇を与えなかったが、厄介だな?」

 丁度、凍らせた室内との境界にカラムが立っている。

「まあいいか。何度も聞いてるが……何の用だ?さっきから聞いても聞いても答える気がないみたいだが?」

「やあ、君がカラムかい?」

「……ん?ああ。カラムだ。お前は無能なる先代の息子かな?」

「いやぁ、耳が痛い限りだね。だが、父様はあんた程まで無能では無かったかな?」

 なに……?と眉が一瞬ピクリと動く。

「あ、いや売り言葉に買い言葉だ。挑発に乗っただけだ。そんなに怒らないでくれよ。愚王よ。」

「……。まぁいい。何の用だ?」

「お前の元にある玉座をエルフに返してくれないか?」


 一瞬の間を置いたのちにやにやと笑いながらカラムは応える

「断る。」



「そんなこと言わないでくださいよ。愚王。いまたならまだ、ああ、そんな王様いたかもねで済みますから。」

「どこまで俺を愚弄するつもりだ?」

「退位するまでかな?」


 カラムが目頭を押さえ、手を離すと鬼のような形相のカラムがエレを睨みつける。

「はっ!どの道、エルフの国なんぞ興味は無かったんだがな?目的はまったく別だ。」

「じゃあ出てけよ。蛇野郎。」

「……。」


「ダークエルフでもないお前が、こんなとこにいるんじゃない。カラム。ああ、言っておくが俺には目上の方に対しての礼節とかは悪いがないぜ?」

「なにを言っているのかな?よくわからないが?」

 イライラを隠せずつま先をカンカンと鳴らしてエレと話をするカラム。鬼のような形相だけではなく、確かに蛇のような長い舌をだしている。


「三流の神獣ごときがエルフの国をめちゃくちゃにするなと言っている。さっさと出て行け。」

「三流だと?俺を三流といったか!?」


 エレの一言に激昂する彼に対して少女はボソッとつぶやく。

「…訂正…三流以下…だね…」

「人間種風情が!!」

 怒りが頂点を振り切ったのか、エルフの姿から大蛇に変貌する。


「…器も小さい…」


 正体を現すカラム、その時点で魔力が増大したのかヴィットの氷結界を森が浸食する。

「ラタトスクの前に愚かな種を消してしまおうか!!」

「…ラタトスク…?…」



「さて、おしゃべりはそこまでにして、害獣駆除でもしますか。……かなり手のかかりそうな相手ですがね。」

「…まった…今…ラタトスク…って言った…」


 ああ、そうでした。と頷くとカラムに矢を向けてエレが言葉を放つ。


「ラタトスク様に何かあるのか?俺としては神樹の守り神に対して何らかの害意を感じたのですが?」

「……お前らに言うわけなかろ。」

「…無理矢理…吐いてもらう…」


「クハハハ、お前ら風情、俺が全力を出せば一捻りだ。」

 みるみるうちにヴィットの作った氷の世界を森で埋め尽くす。

「人間の作った結界などこの通り……。」

「…すごいの…?…」

 ヴィットは首をかしげながらその光景を静観する。

「ええ。すごいです。……少しヤバイかもですね。」

「…援護…任せた…」

 そう一言残すと返事を待たずヴィットは瞬く間にカラムとの距離を詰め大蛇となった彼の胴体を斬りつける。


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