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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
太古の森編
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Fortfarande namnlösa magic<<まだ名前のない魔法>>

Fortfarande(フォファランダ) namnl(ナラ)ösa(ンサ) magic(マジック)


 騒がしい、耳に障る声が周囲に響き渡る。



「いやいやいやいや。まったく、ほんと街中で使う魔法じゃ無いね。街の人が巻き込まれたらどうするんだい。ねえ?まったくあんたはどう思うんだい?生きてるかい?死んでるかい?ヴィットに思いを伝えないまま死んだのかい?残念だね。じゃあこれから私がちょっと行って伝えてくるよ!いいね!」

「ま、待ってください。……アナさん。」


 耳を疑うキライだが誰の声が思い出さなくてもわかる。


 にやにやしつつ嬉しそうに騒々しく人形は笑みを浮かべる。

「おや!生きているのかい?それは残念だ。死んだら私とダナエで人形に変えてやろうかと思ったんだけどね!まったくあんたはしぶといね!それにしてもあんな奴にやられてるなんて残念だ。いやまったく残念だよ!!」


 キライはため息をつきながらも安堵の表情を浮かべる。

「……はぁ。どうやってきたんですか?そもそも、あの魔法の中死んで無いって……幻覚なんかじゃ無いんですね。」

「幻覚?いやいや、幻覚かもしれないよ?ほら、人間じゃ追い込まれたら精神的に参っちゃうでしょ?それくらいアンタは追い込まれてたでしょ?ね?ね?ね?」


 ロープが複雑な表情を浮かべて声をかける。

「そろそろいいかな?少年。その、不気味なのはなんだ?」

「不気味って言うのは彼女に失礼ですよ。」

「おや、ダークエルフじゃないかい!珍しいものもいるもんだ。滅んだんじゃ無いの?アレなんだい?キライ、あんたの敵かい?なんなら私がやってしまおうか?うん。それがいい。私の大切な大切なトモダチが殺されかけたんだ。アンタは殺す。殺してあげる。喜びなさい。そして後悔しなさい。あははは!!!」


 不気味に笑って飛びかかろうとするアナをキライは諌める。

「待ってください。アナさん。僕がやります。思いついたことがあるので、ダメだったら、その時はよろしくお願いします。」

「おやおやおや!アタシを止めようってかい?生意気じゃないか!いいよ!アンタの言う事なら仕方ないから聞いてやろうじゃないか!アンタの成長を見届けるのはアタシのとしては嬉しいさ!ダナエに弟子入りしたアンタラのね!」



 咳払いをするロープ。

「あ、お待たせしました。僕もそろそろ、行かなきゃダメですね。覚悟してください。僕はあの人たちの前じゃ無理をしてみようと決めているんです。」



 全身に魔力を満せ。


 手のひらじゃなく身体全身に。


 そして武器も手足だ。


 こいつも、全身もバランスよく……。


 高めるなら……全身に!



 風の渦がロープを囲む。

「……まだ、なんていう魔法か、名前はありません……。ですが、これが今の僕の全力です!」


 "双刃刀 嵐"を正面の構えて突き上げる。


 地面からロープを引き剥がし風の渦が彼を襲う。


 ロープは風の渦に飲み込まれる。


 彼の体を風の刃が全身を切り刻んでいく。


 傷を負うに合わせて彼の身体は切断と再生を繰り返す。


 武器を地面に突き刺すと、風の刃は針状に形状を変えロープを、襲う。


 やがてキライが膝を付き、同時に風の渦が無くなると満身創痍のロープが現れる。


「さ、さすがだ……。少年。再生が間に合わない……ようだ。だが、俺の身体を裂くには少し足りなかったようだな。だが……その命、残念ながら無くしてもらう。」


 暗く残念そうな表情を浮かべるロープだがキライを見据えて頭をさげる。


「そのようですね。……ですが、ネタはわかりました。僕はギブアップです。アナさん。大変申し訳有りません。あとはお願いします。……殺しちゃダメですからね。」


 彼の意識は遠退き、その場に崩れ落ちる。


「そうだね。そうだね。そうさね。あとは任せておきなさい。ほんと可愛いやつだ。あたしみたいな気味の悪い人形を信用してくれるのな。あたしとしては慣れっこだけどさ。優しく接してくれる人間なんて助けないわけにいかないじゃ無い。ええと、なんだっけ、あんた、そうアンタだよ。ダークエルフ。今すぐ目の前を去るなら許してあげてもいいよ。だって殺さないにしても苦痛は与えなきゃいけない。この子に頼まれちゃ仕方ない。ほら逃げな、やれ逃げな!」


 アナが威圧を込めてまくしたてると思わず耳をふさぐ。


「まったく頭に響く声だ、人形。逃げる?俺が?逃げると思うか?」

「思わないね。アタシのことを人形と呼ぶのはいいけどさ?木偶人形が何を言ってんだい?同族嫌悪かね?アンタだって人形だ。キライも最後には気がついたみたいだけどさ?隠れて隠れて戦ってさ?戦うのが人形であれば無事だと思ったのかい?今すぐ後悔しな。あははははは!」


 喋りたいことをすべて喋り切ったアナは甲高い声で笑い始める。


 人形といわれ、ロープの眉がピクリと反応する。

「木偶人形……いやぁ参った。ここ最近じゃなかったんだけどな?正体に気がつかれるなんて何がいけなかったかな、少年。だがな?あんたが何者か知らないが、俺は引くことなんてありえないからな。」


 弓が矢を放つ動作をするとアナに向かい矢が放たれる。

 アナは矢が触れる瞬間くるりと身体を回り矢は彼女をすり抜ける。


「そうさね。アタシからしたらすぐ気がつく事だけどね。キライが気がついたのはアンタはあれだけの傷を負っても出血が一切無い。再生するのは再生するのでアレだけど。アレだけ裂かれて最後は回復しきれずにいた。それのせいかな。あと痛覚もないね。あの子の無数の攻撃を苦痛に顔を歪める事なく終えた。まだまだ演技力不足だよ!便利な事だけど考えものだね!」

「なるほど。次に生かさせてもらおう。」


 アナは手を叩くと彼女の身体の倍は有ろう裁ちバサミが魔法陣から生まれ、それを持つとロープに襲い掛かる。

「あははは!!次なんて無いさ。逃げないならね。とりあえず、陰に隠れれば危険は無いと思ってない?それはアンタ、馬鹿って奴だよ?」


 彼女のハサミはロープの頭上でシャキンと音を立てる。それとともに地に伏せるロープ。

「な、なにを!?」

「何も驚くことじゃないよ!木偶人形に意思を与えるのは驚きだけどさ!でもね?アンタは木偶人形。アタシからして見れば随分と人の形に合わせて作られてるけどね?あ、でもアタシとアンタは全然別物だからね!アタシは何かに操られている訳じゃないからね!それにこんなことも出来るのさ!」


 そういうとアナは地に伏せるロープを踏み台に飛び上がると空中で何かを掴み取る。

「……なっ!?そんな?」

「あははははは!ダメだねアンタ!隠れていれば大丈夫だと思ってた?下級な人間、エルフに通用してもアタシにはなんの意味もないさ!あの子に見破られた時点で逃げ出さないとダメだね!及第点にも遠い。ホントはキライに倒して欲しかったけど今じゃあれが限界かね!」


 アナが掴んだのは目に見えない魔力で作られた糸。それに彼女が魔法をこめる。

「……ぐっ……し、失礼した。わ、私の負けだ。」


 木偶人形と言われたロープからは魔力がなくなり、本当の人形となる。

「人形としての出来が違うんだよ。あははははは!」


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