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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
シルフとノーム
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Sylph till dalen<<シルフの谷>>

Sylph(シルフ) till(ティ) dalen(ドーレン)


 熊の解凍は滞りなく進み、半分くらい終わったと同時に熊自身で動き始める。熊の額からは一本の角が生え、そこに魔力が集中する。

「まった。争うために解凍したんじゃないよ♪この森の長だよね?」

 熊は何も言わず、ゲルンを睨んでいる。そのまま魔力は角に集まる。


「大丈夫だよ。ボク達は別に森を荒らしに来たわけじゃない♪わかるでしょ?そんな事をしてもボク達を倒す事はできない。」



(何しにした……?)

「これからシルフとノームに会いに行くため。その為の羽休め。これを食べたらそのまま出て行くよ♪」



(いま、ノームに会う気か?)

「そうだよ。今じゃないとダメなんだ。わかってるんでしょ?」



(お前達には……。)

「関係ないわけないじゃない。そんな事理解してるんでしょ?」


 熊は人語を理解し、ゲルンの言葉を咀嚼しながら、徐々に殺気は薄れていく。



(ノームは、瘴気に当てられている)

「…瘴気?…」

「なんとなく原因は想像ついてるよ♪」



(瘴気の元をか?)

「恐らくね。」



「ここから北にある国が原因だと思うんだ。」



(国まではわからないが、北の方っていうのは正しい)

「…あなたは何者なの?…」

「この森の賢者、もしくはそれに準ずるものかな?ヴィットが殺さなくてホントによかったよ♪」



(あれ如きでは死なん、が、気配を絶つ技術は見事だ。)

 額の角は少しずつ小さくなり、体毛に隠れる。

「…ごめん…」



(ふん。野生は弱肉強食。たとえ、殺されたって仕方ない。)

「ほんとに!」「ほんとに?」

 熊の方に二人の悪魔が登り熊に話しかける。



(悪魔……。か?地上から排除されたと思っていたが。)

「しぶといからね!」「しぶといからね?」



(俺を殺すか?)

「殺さないよ!」「殺さないよ?」



(なに?)

「世界に興味はないよ!」「世界に興味はないよ?」



(普通の悪魔と違うな)

「そりゃそうだよ。ダナエの従者だもん♪」



(ダナエ……の?)

「ダナエ様だよ!」「ダナエ様だよ?」

 表情はニコニコしているが、明らかに空気が変わる。



「二人とも、やめなさい。」

「……はーい!」「……はーい?」

 二人の悪魔が羽を生やし、熊の肩から飛び立つ。



「ごめんね♪あの子達も悪気はないんだ♪」

(うかつだった。すまないと伝えてくれ。)



「ところでさ?ノームの地脈ってどうなってるかわかる?」

「…ノームの地脈?…」



(狂っている……。そこらじゅう。)

「そかそか。……他の子達にも影響が出るかもね。ドリアード達には伝えておくけど、精霊達の動きには気をつけてね♪」

 一度ゲルンは伸びると、ヴィットの手を引いて河原へ戻る。

「さて、出発だ!準備はいいかな?」

 頷くとヴィットは休んでいた夢馬の頭を撫でるとそのまま跨がる。



「よし♪んじゃ、ついてきてね♪」

 ゲルンは先ほどとは異なり、スピードを落として飛び立つ。


「…シルフとノームって仲わるいの?…」

「そこそこだね。でも争うって事は滅多に無かったよ♪」

「…さっき言ってた…ノームの地脈?…」

「うん。それを狂わせた大馬鹿者がいるんだよ。」

「…それって…」

「多分ね。抜けたとはいえ身内にそんな事やらせてらんないからさ。シルフたすけて、そのままコメダ法国に殴り込みだね♪」

「…ね、イロとビロは…連れて行かないの…?…」

「行かない。それにヴィットも連れて行かないよ?」

「…なんで…?…」

 少し寂しそうな表情を見せるゲルン。


「そうだね♪一緒に行きたいけどヴィットは里帰りが先かな?危険な事はおねぇさんに任せなさい♪」

「ザリチェがついてくよ!」「タルウィがついていくよ?」

「心強い味方もいるしね♪」



「多分ね、君にはダナエとキライがついてきてくれるから安心して♪」

「…でも…」

「なに?ボクが信用できない?」

 首を勢いよく横に振る白い少女。


「じゃ、そういう事で。……まっすぐ、ついてくるんだよ?」

「…え?…」

 ゲルンはそう言い残すと垂直に進路を変える。それに合わせて二人の悪魔が直上を目指し始める。

 夢馬も呼応するように進路を合わせるが、ヴィットは必死に夢馬の背にしがみつく。


「もう到着だから頑張ってね♪」

 それと同時に分厚い雲に突っ込む。

「…っ…そろそろ…まずい…」

 ヴィットの腕が先に限界を迎えそうになると、二人の悪魔がヴィットの背中を押す。

「大丈夫!」「大丈夫?」


「…ありがと…助かる…」

 安堵の表情を浮かべるヴィット。もし、落下しても決して死ぬ事はないが、もし逸れて仕舞えばそこまでなのだ。


 そのまま彼女を追う。

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