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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
シルフとノーム
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gamla historien<<昔話>>

gamla(ガンマ) historien(ヒストリエン)


 ヴィットや二人の悪魔もそれを追うように出発するが、ゲルンの箒に追いつく事ができない。

「……!」「……?」

「…はやい…っ…」


 少し経つとゲルンが止まって待っていた。

「ごめんごめん。久々だったから楽しくてさ♪」


 夢馬と二人の悪魔は息を切らしてゲルンを見ている。

「少し休憩しようか♪大丈夫。休む準備ならすでに整えてあるからね。」


 そう言うと下を指差すゲルン。その先の河原にはゲルンの作った木の椅子とテーブルが用意されている。

「…やっぱ…ルンはめちゃくちゃだね…」

「本当に人間なの!」「本当に人間なの?」

「失礼な!ボクは人間だよ♪」


 二人と話しなきゃだしね。と一言残すと全員を引き連れ用意した椅子に腰掛ける。

「さてと、念のため確認したいんだけどさ?タルちゃんとザリちゃんは魔王ダナエ様の従者であっているかな?」

「…ルン?…」

 二人の悪魔達は首を縦にふる。

「そっかぁ……。あ、大丈夫大丈夫!ボクは何もそれで何かをしようと思わないけど、マスターと会った時は大丈夫だったのかなってさ。」

「……!」「……?」

「ん、話したくない……かな?」

「ヴィット、お願いがあるんだけど……。ご飯を調達してきてくれないかな?大丈夫だって、いじめたりなんかしないよ。」

(ヴィット、ボクもお腹減ったからいこ?)


 リームシュークはゲルンを見ると頷く。溜息を吐きつつヴィットは立ち上がり森に入る。


「さて、話を聞かれたくない相手もいなくなったでしょ。とりあえず話を聞きたいのさ♪」

 ゲルンは指輪を外し敵意がない事を示す。

「二人ともさ。そのままでもいいけど……素の自分は大切にしてね♪」


 ヴィットがいなくなったことを感じ取ると、


「あの玄白の魔女の事をダナエ様はゆるしたんだ!」

「あの青朱の魔女の事をダナエ様はゆるしたんだ?」


 二人の悪魔はワナワナと震えながら怒声を上げる。


「玄白はボク達だけじゃなく、ダナエ様に手をかけた!」

「青朱はボク達だけじゃなく、ダナエ様に手をかけた?」


 その一言を聞いてゲルンは首を傾げると理解する。

「うん。そこの誤解を解いておこうか♪」


「誤解なんて!」「誤解なんて?」


「マスターがダナエと戦ったのは、二人の悪魔と戦った直後って聞いてるよ。そこに間違いはないかな?」

「ザリチェと門番してたからね!」

「タルウィと門番してたからね?」


「一つ、タルちゃんとザリちゃん二人をあの人は余裕で倒したのかな?」

「ザリチェが右腕を!」

「タルウィが左腕を?」


「二つ、それでマスターは両腕を魔法で治しました。そんな魔法使って魔力が余ると思う?」

「……!」

「……?」


 次第に二人の悪魔の表情が……。


「三つ、ダナエをデュラハンにしたのは?」

「今の魔王……!」

「今の魔王……?」


「四つ、ダナエの次点にいた吸血姫と今の魔王の王妃は?」

「クラップス……」

「クラップス……」


 殺気を放ち二人の悪魔が立ち上がる。


「まった、何をするつもりかな♪」

「あの吸血姫を……!」

「あの吸血姫を……?」


「君たちだけで出来るの?」

 二人の悪魔が同時に首を横に振る。


「でも、なんでそんなこと知ってる!」

「でも、なんでそんなこと知ってる?」


「最後、ボクの復活に使った魂は?」

「……!」「……?」


「そう。マスターの記憶がボクの中にもある。あとはこれのせいかな?」

 ゲルンは口角を大きく上げて笑う。

 それを見て二人の悪魔は黙り込む。


「そして、君たちにかけられた呪いを解く方法もわかるよ♪」

「……!」「……?」


「まだ解くことができないけど、ヴィットの一族に会うんでしょ?その時にとくよ。必要なものがあるからね♪」


 二人の悪魔はゲルンに抱きつく。

「これで……ダナエ様の役に立てる!」

「これで……ダナエ様の役に立てる?」


「でも、約束してね……。従者であれ、命は無駄にしない。ダナエだってそんなことは願わない。」

「……!」「……?」

 タルウィとザリチェは少し複雑な表情を浮かべ……頷かなかった。


「ま、いいよ。君達はボクのことを助けてくれた。なんだかんだ言ってマスターの事を殺さないでくれたしね♪」

 二人の頭を撫でつつゲルンはニコリと笑う。


「さて、あの子はどこまで行ったのかな?」

 ヴィットが森の奥から手ぶらで帰ってくる。


「…ルン…」

「あら?収穫はなしか……。ま、いいよ♪」

「…違う…一人じゃ…」

「えっ?」「……!」「……?」

 少女はゲルンとタルウィ、ザリチェを森の中へ連れて行く。



「おや、まぁ……。よく音もなくこんなのを……。」

(流石でしょ?二人でやったんだよ)


 目の前には冷凍された巨大な熊。

「…一人じゃ…持てなくて…」

 自身の数倍ある熊を仕留めていた。


「殺してないんだ……。よく殺さずに凍らせたもんだ。」

「…二人に…教えてもらったから…」

 二人の悪魔は首をかしげる。


 そこでヴィットは手のひらに魔力の球を作り出す。

「ふーん♪少し前とは別人みたいだね。」

「…ルンに…言われたくない…」


「ま、いいか。とりあえず……ご飯にしよう。そのあと作戦会議♪シルフとノーム喧嘩はよくないよね♪あ、この子はちゃんと解凍してね。聞かなきゃいけない事があるから。」

 うんうんと一人頷き、指をパチリと鳴らすとその場にゲルンの用意していた椅子とテーブルが現れる。ただし、テーブルには鍋と各自の食器が置いてあり、湯気も上がっている。


「さて、ご飯を食べたら出発しよう。その子に色々話を聞いてからね♪」

 ヴィットは本当に別人みたいだと思いながらも熊の解凍を行う。


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