uppståndelse<<復活>>
間が空いて大変申し訳ありません!
宜しければお楽しみください。
―uppståndelse―
「あれ?ヴィットさん?いつおかえりになったんですか?」
「…ビロ…さっきだよ…」
「おかえりヴィット。えっとどうだった?」
家に入ろうとするカザリスをヴィットは引き止める。
「なに?なんかあるの?」
首をかしげる彼女にヴィットは今行われていることを説明する。
「なにそれ!マスターを生贄みたいにして!ゲルンさんをそれで助けられるならいいと思ってんの!?」
「…それでも…」
「落ち着いてください。カザリスさん。マスターなら大丈夫ですよ。誰だと思ってるんですか。ヴィットさんも彼女じゃなきゃこんなことを許していないですよ。」
確かにあの人がこれでどうにかなるわけがないと思い始めるカザリス。だが一度ヴィットにビンタする。
「ヴィット、一つだけ言わせて貰うよ?誰かが犠牲になったら人を助けても犠牲が出たら意味がないの。これだけは覚えておいて。」
彼女はそれを言われて納得したのか頷き頭をさげる。
頬が焼けるように痛い。彼女の言う意味を真摯に受け止める。
「何か始まったようですね。一応警戒はしてください!」
地鳴りと共に強大な魔力が酒場の地下。ちょうどゲルンの部屋当たりに発生する。
「タルウィさんとザリチェさんでしたっけ?二人の悪魔。」
「…うん…でも…悪魔らしくない…悪魔…」
「……私たちだけじゃ、太刀打ちできないわよ!あんなの!」
「カザリスさんは落ち着いて下さい。何かあればカザリスさんはデプロさんに報告してその後、領民の避難を。ヴィットさんは僕と対処に移ります。いいですね!」
「わかった!」
「…了解…」
「と言っても、デプロさんは先に飛んできそうですがね。」
ヴィット、ビローアの二人が両手に武器を構えるとカザリスは近くの家の屋根に上がり弓を構える。
そして、彼女らの家が……。大きな音を立てて崩れ落ちる。
「えっ!?なに!?」
同時に地下にあった魔力は鎮静化する。
「終わったようですが……。中は無事なんでしょうか……。」
ヴィットは瓦礫の山と化した宿に駆け寄り、瓦礫を必死に掻き分ける。
「どいてろ、白いの!」
四人を担ぐ男が一人声をあげる。
「…えっ…インス…えっ!?…」
その一言と共に瓦礫が宙を舞う。ヴィットも避ける間もなく空高く吹き飛ばされる。
「カザリスさん!」
「わかった!」
宙に舞った瓦礫をカザリスは弓で打ち砕く。
「……っ、一人じゃ」
「遅くなってすいません!」
遅れてビローアが水の球でカザリスの打ち漏らした瓦礫を砕く。
「まずいです……!量が多い!」
空高く舞い上げられたヴィットはリームシュークと連携をとる。
屋根の上に巨大な魔法陣が展開され、そこから氷のナイフが射出される。
「…っ!…」
それでも全ての瓦礫を駆除する事はできない。
「まったく、しっかりしないとダメじゃない。」
崩れ落ちた宿から無数の蔦が生えて網状になり空中の瓦礫を包み込む。
「ボクがいないと本当にダメなんだから。手伝って!タルちゃん!」
「……!」「……?」
いきなり呼ばれて驚くタルウィ。一瞬固まったのちにゲルンの蔦が包み込んだ瓦礫を焼き払う。
「…ルン…」
助けた相手を確認しようと、辺りを見渡すがタルウィとザリチェを見つけることはできたが彼女を見つけられない。首を傾げていると後ろから抱きしめられる。
「や、ヴィット。久しぶり♪こんな短時間にいろんなことがあったんだね。」
「…しってるの?…」
「ラタトスクが教えてくれたからね。今は忙しいから呼ぶなだって!本当に勝手なんだから。」
「さて!キライが大変なんだよね?シルフの谷ならボクが案内するよ♪急ぐんでしょ?」
物陰に隠れるタルウィとザリチェだが……。
「……!」「……?」
「隠れてもダメだよ♪二人ともありがとね。二人がいなかったらまだ寝てたよ♪」
隠れた二人の悪魔の背後を取り頭を撫でるゲルン。
「ゲルンさんはなんか、強くなっていませんか……?」
「…うん…」
「まぁ、すべてはみんなのおかげだよ。ボクが元気になれたのはね。そう思ったら力が湧いてきたのさ♪」
「……そんなの、めちゃくちゃです。」
「おや!孤児院に帰らなかったんだ!改めてよろしくね。まぁ、すぐ留守にするんだけどね。」
「カザリスです。あの生活はなかなか私には合わないみたいだし。」
「じゃ後のことはよろしくね♪イロードもビローアも日常生活は頼りないからカザリスに任せた♪」
耳元で最後に……。
「特にビローアはね♪」
真っ赤になっているカザリスをそのままに、指をパチリと鳴らすと崩れ落ちた彼女等の家が元の姿に戻る。
「ま、こんなもんでしょ。さて、急ぐよ!」
「……ありえない!」「……ありえない?」
ヴィットとタルウィ、そしてザリチェをひっぱり領を出て行く。
「まったく、私には一言もなしかい。」
インスに肩を貸されながらマスターは口を尖らせる。
「まぁいいさ。行ってこい馬鹿弟子ちゃん。」
「俺も挨拶してない……。」
「ま、今回のアレはアンタが冷静じゃなかったせいさ。」
「まったく、面目ない。三人が息をしていなかったからな」
「ま、仕方ないさ。」
ゲルン、タルウィ、ザリチェの三人を一気に担いで出たインスが少ししょぼくれながらに呟く。
街道にたどり着くとゲルンが準備運動をしている。日も落ち辺りは暗くなり始める。
「さて、シルフの谷か……。ボクも久しぶりだなぁ。みんな元気かな?あ、いや、襲われているから元気ではないのか。さてさて、キライとみんなを助けに行かなきゃね」
夜になったと同時に夢馬が姿を現す。
「…ルン…一緒に乗れる…?…」
「いや、その子が許してくれないさ。それならボクはボクでついていくから大丈夫だよ♪」
指輪に魔力を込めると彼女の手には魔力で作り出された箒が生成される。
それを見るとヴィットは夢馬に跨り、二人の悪魔の背には真っ黒な羽が生える。
「さぁ、じゃボクを見失わないようにね♪」
そう言い残すとゲルンは箒で空へ飛び立つ。