löften<<約束>>
―löften―
「ね!ヴィット!」「ね?ヴィット?」
「…?…なに…?…二人とも…」
「こんなことできる!」「こんなことできる?」
二人の悪魔は待っているのが飽きたのか、自分の魔法で遊び始めた。
最初にやったのはキライにも見せた魔力を集中させて掌の上で球をつくる。
「…あ…キライにやってって言われた…」
それを真似てヴィットも掌のに魔力の球をつくる。
タルウィのは炎の球を。
ザリチェのは蔦の球を。
ヴィットのは氷の球を。
「さすがだね!」「さすがだね?」
「じゃ、これは!」「じゃ、これは?」
悪魔たちの球はどんどん小さくなる。勢いが衰えたわけではなく、圧縮されていく。最初は10センチくらいあったが1センチくらいのサイズになるとそれを掌の上でくるくると回し始める。
「…すごい…」
ヴィットも真似をしてみる……が、せいぜい5センチくらいまで……。
「…これ…難しい…」
少し勝ち誇った表情を浮かべる二人の悪魔達。
「キライはまだ出来ないの!」「キライはまだ出来ないの?」
「でもヴィットすごいね!」「でもヴィットすごいね?」
どうやら二人の悪魔達としても少しとはいえ圧縮まで出来るとは思っていなかったようだ。
ヴィットは考える。冷気を圧縮した球。これを応用すれば今までよりも強力な魔法を使うことができるのではないか……と。とはいえ、扱いはとても難しそうだ。
「ダナエ様に教えて貰えばもっとすごいよ!」
「ダナエ様に教えて貰えばもっとすごいよ?」
もっとすごい。それは漠然とした言い方で何がどうすごいのかそれはわからない……。が、それがダナエの凄さをなにとなく伝えている。
「お待たせしました!」
ヴィットとタルウィ、ザリチェの元へキライとアナが戻ってくる。
キライが帰ってきたことで先ほどのことを少し思い出して思わず不機嫌になってしまう。自分でもそんな態度をとってはいけないとわかっていてもそんな対応をしてしまった。
「タルウィにザリチェ!あと、シューちょっとおいで!話があるさね!少しだけでいい!大切な話をしよ!ヴィットはキライから聞いてね!」
「ん!」「ん?」
(まったく、わかったよ)
リームシュークはキライを一度見てこくりと頷く。
「…?…」
「ヴィットさん、その……。」
ヴィットは首をかしげてキライの方に向き直る。
「そ、その、ぼ、僕は隠し事をしているわけではなく……。」
「…?…」
「い、いつか、必ず教えます。絶対です!コレに誓います。」
キライはヴィットの手を取りレアの作った腕輪を彼女の左腕に付ける。
「…なに…?…」
「お守りです。……あとヴィットさんに似合いそうだなって思いまして……。」
左腕には雪の結晶を模したガラスのワンポイントの付いたシンプルな腕輪がされている。ガラスは光を吸収し、虹色の光をチラチラと放出している。
「…綺麗…」
「僕もそう思います。」
「…わかった…そのうち…ちゃんと教えてね…」
どうやら気に入ってもらえたようで機嫌も直り雪の結晶をジッとヴィットはみて動かす。
キライがホッとして振り返ると、物陰から視線を感じる。今までの緊張のせいか一切気にならなかったが……。視線を感じる方を見ると……。
「僕は……見世物じゃないんですが……。」
アナ、タルウィ、ザリチェ、リームシュークはもちろんだが、レアと商店街にいたエルフが数人、そしてエダが覗いている。
「…ね…どうしたの…アレ…」
「知りません。僕はなにも知らないですよ。僕が聞きたいですよ……。」
明らかにエルフ達はニヤニヤとキライ達を見ている。
読んでいただきありがとうございます!
寒くなってきましたが、体調に気をつけて下さい。