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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
太古の森編
13/27

frisättning<<解放>>

fris(フリス)ättning(ティング)



「いやいやいやいや、よくやったね!ニーズヘッグなんてさ!ホントに面白いものを倒しちゃったよ!よくやったね!褒めたげるよ!ダナエもこれには驚くかもね!ヴィットは奥の手をよく使わないでやれたさね!アタシの出番はいつかと心待ちにしてたのにね!」


「…ありがと…」

 少女は人形を持ち上げ肩に乗せ、リームシュークはヴィットの頭の上によじ登る。


(でも、氷らせちゃって大丈夫だったの?ラタトスクのこと何か知ってたんじゃない?)

「…あ…そか…」

「確かに、何かを知っていそうな口ぶりだったよな。」

「…とかすと…めんどくさいよね…きっと…」

「そうさね!昔話でニーズヘッグとラタトスクは曰く付きだったからね!いろいろあるんだよ!神獣にもね!ま、今回のはラタトスクのイタズラが原因だと思うけどさね。」

「…ん…」


 キライは疲労からか座り込み、静観するように話を聞く。その肩にはどこから入り込んだのか、小鳥が止まっており、キライは指でつついている。



「ダークエルフの説得は終わったぜ!あとカラムの手当てもな。」

 ニーズヘッグを倒したことにより、王宮の奥まで入ってこれるようになったのか、エダとコードが現れる。コードの脇にはカラムが抱えられており、手当てをされていた。


「まったく、カラムが主犯じゃなかったんだね。タルウィちゃんとザリチェちゃんが引き摺って来た時には驚いたけどさ?」

 どうやら二人の悪魔はカラムを部屋から出して二人の元へ連れて行ったらしい。


「して、エレ、それが今回の主犯か?」

「ああ。驚くなよ?神獣らしい。」

「神獣……?なぜ神獣がエルフのこの街をおそったんだ?」

「ラタトスク様関連らしいが……。よくわからない。」



「わあっ!!」

 キライが素っ頓狂な声を上げる。

 その声に反応して全員がキライを見ると……。


 そこには驚きの光景が。

「…キライが…二人…?…」

「キライさんが二人……。」

「キライが二人いるさね!」

「キライが二人!」「キライが二人?」


「僕が、もう一人!?」「僕がもう一人!?」


 鏡を見るように二人とも対称な動きを繰り返す。

「誰なんですか!?」「誰なんですか!?」


 声はハモり、お互いを睨みつける。

「僕が本物ですよ!?」「僕が本物ですよ!?」

 思わず武器を構える二人のキライ。


 全員が面白そうに二人を見る。……一番最初に飽きてしまったのが……。

「…二人とも…本物で…いいよ…」


 その一言に二人のキライはショックをうけ、拗ねて体育座りをする。


「お、お待たせしました。も、もう、終わっちゃいました……?」

「シュガー。無事だったか。」

 その場に居なかったシュガーを確認して安堵の表情を浮かべるエレ。

「は、はい。さ、さっきまで眠ってしまってました。エ、エルフの皆さんに助けられました。」

「じゃあ、あれどっちが本物かわかるか?」

「あ、あれ?」


 キライを見ると二人いる。それに一瞬戸惑いを見せるが、片方のキライに向かって威嚇をする。

「ぼ、僕の鼻はごまかせません。な、何者ですか!?」



「……おや?はははは。悪い悪い。悪気はなかったんだよ。少しイタズラしたかっただけ。」

 そう言うとキライを模していたものは小さな栗鼠になる。


「や、白の子。久しぶり。君が来た理由は知ってる。」

「…ラタトスク…」

「うんうん。そうだよ。自分の蒔いたタネなんだけど……みんなに迷惑をかけちゃったね。」


 その一言にエレ、エダとコードが膝をつく。

「そんなことはやめて。僕のせいでみんなを巻き込んだんだよ。そして何よりダークエルフにはとても悪いことをした。」



「…そんなこと…私は…気にしない…」

「私達、エルフの民も気にしていません。そもそも、エルフの力が落ちていたのが悪い。」

 エレがそういうとコードとエダは頷く。


「だけどね?それでも巻き込んだのは事実。終いには力が落ちてあいつに封印される始末。」

「…力が落ちたのは…吸血姫のせい…じゃないの…?…」


「…契約者の…ルンと…クラップスと戦ったから…」

「そ、彼女はいま、暴走しちゃってる。彼女を助けるためにも魔力を供給し続けてる。」

「…どうにか…できない…?…」

「タルウィとザリチェ。あの子を連れて行きなさい。」


 その一言でみんながタルウィとザリチェを見るが、疲れてしまったのか拗ねているキライを枕に眠っている。


「あの二人の力なら暴走を止められる。」


「…二人を知ってるの…?…」

「ん?ああ。魔王の従者でしょ?」


 ……!?


「まって、魔王って昔倒されたんじゃ!?」

「倒されたよ?」


「……ダナエって…何者なの…?…」

 ヴィットは不思議そうにアナへ質問するが、沈黙を守るアナだった。


「…ま…いいか…ダナエは…友達だし…」


 思わずコードが口を挟む。

「まってくれ、いろいろ聞きたい事しかないのだが、説明してもらっても?」


「…え…?…難しいのよくわからない…けど…あの二人を連れてけば…解決…」

 ヴィットは特にラタトスクから聞いた話は理解していないようだが、正直どうでもよかった。



「さて、コード!これからはお前がエルフの王だ。めんどくさい事は後回しで宣言してこい。」

「もちろん、僕も賛成だ。森の守護者として認める。君の働きはいつも見ていたよ。君以外に資格があるエルフはいない。いたとしても断られるしね。」


 ラタトスクがコードの肩に登りちらりとエレを見るが、承認する。……特に王政に承認など不要だが、世界樹の守護者にそう言われれば誰も文句は言えないだろう。

 コードとラタトスクは宣言しに、表へ向かう。


「……エダ。姉さんも付いて行きなよ?今行かないと誰かに取られちまうかもな?なんたって新王だし。」

 エレが無邪気な笑みを浮かべて彼女の背中を押し出す。

「……ありがと。ちょっと行ってくる!」

 先にいったコードを全力疾走で追いかけていった。



「さて、俺らは森を出るか。目的も果たされたんだろ?」

「…そうだけど…いいの…?…」

「いいさ。俺は逃げたエルフだからな。」


 居心地の悪そうにエレは苦笑いするが……。

「何言ってるのさ!ダメに決まってるだろ?アンタ、エレだっけ?先王の放蕩息子なんだろ?アンタはちゃんと次代の王と話す義務があるんだよ!逃げようたって許さないからね!あははは!!どうしてもっていうならアタシを説得して見なさいな!ま、無理だけどね!それにこの子、無理したから1日は動けないさね!今は薬で無理矢理動いてるけどね!」

「薬ですか……。それは、……俺が別のを調合しますから、その、勘弁してくれませんか?」

「僕も緊急時以外は薬とか勘弁して欲しいですね。苦いのは嫌いです。」

 キライがニヤリと笑いエレは……どうやら観念したようだ。

「ヴィットさん、ごめんなさい。我儘を言ってしまって。」


「…まあ…大丈夫…急がなくてもいい…」

 ここでの時間の流れと外での流れは違う。そのためあまり急いでもそんなに変わらないのだ。



 一人完全に固まっていたライカンスロープが口を開く。

「と、ところで……、ま、魔王の従者ってどう言う……。」


 アナはシュガーの肩に飛び移って耳元で騒ぐ。

「アンタは知らなくていいことさね!だいたい、一旦終わった話にまた戻すってアンタ、いい度胸だね!まったく!空気読める?話にはちゃんとついてこなきゃダメじゃないか!小心者さね!驚きすぎて思考が停止してたのかい?何事もどっしり構えてないとダメだよ!アンタ!わかったかい!?わかったなら返事は?ほら返事!返事なさい!」

 アナはシュガーに返事をする間も与えず、一方的にまくし立てる。


 ヴィットは一人呟く。

「…ルンのこと…ラタトスクと話したいし…」


 夜、エルフの街は灯りが絶えなかった。

 外に左遷されたエルフの帰還。

 悪政からの解放。

 新王の誕生。


 問題は山積みだが、ニーズヘッグがこの街を訪れる前に戻れると誰もがそう願った。


 街を救ったヴィット達はというと、


 キライはあの後すぐに倒れエルフ達に運ばれていった。そのまま、朝まで目をさますことはなく、さました後もロクに動くことはできなかったらしい。動くことはできなかったが有意義な時間を過ごせたと彼は話していた。彼の寝ている部屋にはロープが訪れ色々な話を聞かせてくれたのだ。


 エレ、は長年訪れることのなかった王墓へいき父母への追悼を。帰宅途中でエダに捕まり逃げる間もなく家に連行されたという。


 シュガーは攻撃を加えていたエルフから敵を庇った時以外攻撃を食らわなかった回避能力を褒められ、反撃しなかった事や敵を庇った行為を反省させられていた。

 彼としても敵を庇った事や反撃に出られなかったことは素直に受け入れることができたが、その事の後悔はなかった。


 ヴィットはアナ、タルウィ、ザリチェと一晩中ラタトスクと色々な話きいた。他では聞くことのできない神話や昔話、そしてゲルンとの話。


太古の森編 おわりです。

今日、明日中に登場人物をまとめて書く予定です


予定…です。

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