Níðhöggr<<ニーズヘッグ>>
Níðhöggr
「ニーズヘッグ。……それが俺だ!!」
いちいち大蛇から怒号が発せられる。
「ラタトスクの奴め……俺を謀った恨み、こいつらに晴らしてくれる!!手出しはできないだろうがな?」
「…ね…?…ラタトスク…どこにいる…?…」
ヴィットは風の矢をくぐり抜けニーズヘッグの目の前に立ち質問をする。
「くくく、俺の張った結界に閉じ込めているさ。急に力を落としたからな?」
「…そ…ありがと…じゃ…あんたを倒せば…」
ヴィットは矢を回避し、ニーズヘッグは降り注ぐ矢を受けながら会話を続ける。
「そうだな?俺が死ねば解けるかもな?くくく、まあ、人間風情には無理だがな。」
「…そ…じゃ…人間風情に…負けてもらう…」
「ほざけ!!」
ヴィットは高く飛ぶと片手にユキトのナイフを持ち、片手にはラップの作ったナイフ装備し、空中に氷の足場を作り急降下する。降下する勢いを使い、ナイフを突き立てる。硬い鱗を貫き突き立て、そのナイフをグリグリと抉るように動かす。
ニーズヘッグのうめき声が室内に響く。ヴィットが再度高く飛ぶとそれを好機と見て大蛇が彼女を襲う。
「そうは……いきませんよ!」
その隙をエレは見逃さない。ヴィットに意識が集中した瞬間ヴィットの抉った傷口に矢を放ちダメージを与える。
痛みに悶絶するようにのたうち回るニーズヘッグ。
「…本当に…神獣…?…」
(一応ね。でも2対1だと相性がよすぎるみたいだね。さっきみたいに、檻に入れられなければ問題ないね。)
「なあ、本当にここから出て行ってくれないか?俺としても神獣を狩るのはあまり気が進まない。」
「エルフ如きが……あまり調子に……!」
再度矢が傷口を襲う。その瞬間ニーズヘッグから毒の霧が噴射される。
「まずい……!ヴィットさん、俺の後ろに!」
その声に反応した彼女はエレの後ろまで飛び退く。
エレは左腕を前に出し、魔法陣を展開する。
魔法陣からは勢いよく風が流れ、毒の霧を押し返す。
「…ザリチェ…頼める…?…」
二人の悪魔が満面の笑みを浮かべてエレの魔法陣の前に立つと、ザリチェが毒霧ごと大きく息を吸い込む。
呆気にとられエレは魔法陣を消す。
「何者なんです……二人は。」
「…?…タルウィとザリチェ…」
「タルウィだよ!」「ザリチェだよ?」
「別に名前を聞いたわけじゃないですよ!」
「なんで怒ってるの!」「なんで怒ってるの?」
「別に怒ってるわけじゃないです。もういいよ!」
半分投げ捨てになるエレ。霧が晴れると再度目の前に大蛇が現れる。
ヴィットが襲いかかろうとした瞬間。
「ヴィットさん!待ってください。あれは……ニーズヘッグじゃない!」
目の前にあったのは巨大な抜け殻。
「…流石に…神獣…簡単じゃない…」
「さっきまでとは別物と思った方がいい!」
キョロキョロとエレは見失ったニーズヘッグを探す。
ヴィットは蠢めく何かに気がつき自身の背後に氷の壁を作る。
そこに蛇の矢が何匹も飛びかかる。
「…蛇…ね…」
氷の壁に突撃する蛇は少しずつ壁を削り彼女に迫る。
(ヴィット!やばいよ!)
「…シュー…壁の補強できる…?…見られてる…」
リームシュークからの出来るよと言う返答とともに。ナイフを逆手に持ち構えると視線を感じる方に向く。
エレもそれを見てヴィットの視線の先を注意する。
(危ない!)
リームシュークの叫びで右にステップを踏む。左後方から大蛇の尾が襲いかかる。
彼女は尾にナイフを突き刺すが、脱皮した蛇の表皮は鋼よりも硬くナイフを弾く。
「ヴィットさん!通常の攻撃は効かなそうです!」
「…みたいだね…」
「どうやら、なす術もなしかな?ナイフで貫かれないこの身体だ。大人しくするなら……楽にとどめを……。いや、楽には殺せないな。お前らは。」
大蛇の頭がヴィットの視線の先から現れるが、先程とはうって変わり冷静にも見える。
「…脱皮して…こんなに…?…」
「感謝しないとなぁ。もう成長はないと思っていたからな。」
「いらぬ……感謝だ!」
エレが矢を放つが、それは全て身体に通らず弾かれる。
「めんどくさい相手だ。」