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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
太古の森編
10/27

sanna identitet ...<<正体>>

sanna(サナ) identitet(ァイデンティティ) ...


「…む…硬い…」

 彼女のナイフは蛇の鱗に弾かれ傷をつけるだけで精一杯だった。

「何かしたのかね?」

 大蛇はヴィットを睨みつけると胴体を素早く動かしヴィットを弾き飛ばす。


 彼女は迫り来る胴体を飛び越え回避し、魔方陣からユキトのナイフを取り出して勢い良く突き刺す。普通のナイフではダメだったがそのナイフは鱗を貫通し傷つける事に成功する。

「…これは…刺さるのね…」

 突き刺した瞬間、カラムの胴体は彼女を襲い激しく突き飛ばす。それを受け身を取るようにエレの横に着地する。


「痛いな。痛いぞ小娘!!」

「カラムよ、やっぱ降参することを進めるぞ?俺らの攻撃が一切通用しないわけじゃなさそうだしな。」

「ふははは!なにを言うか。かすり傷だろう?」

「…ナイフ…刺さったまま…偉そうにされても…ね…?…」

「いちいち鼻に付く小娘だ!!」

 ヴィットは突き刺されたナイフの柄に勢いを乗せた踵を落とす。


 体重の乗った踵がナイフを体内に押し込む。

「よくも……。よくもやってくれたな。褒めてやろう……。」

(ヴィット!褒められてるよ!)

「…シュー…違うと思う…」

 緊張感のない相棒の声に肩をすくめるが指先でリームシュークの喉元を撫でる。それに対して猫なで声を上げる。


「…今なら…ラタトスクのこと…話したら…わたしは許してあげる…」

「ヴィットさん!?」

「ふ、ふふ!!いうわけがねーだろ!!人間風情が調子にのるなよ!!」

「…まぁ…許すもなにも…私はあんたに対して何も…ないんだけどね…」

 別に挑発したわけじゃなかったんだけどと首をかしげるヴィット。


 カラムの感情に合わせるように森の侵食がすすみ、ヴィットとエレ、あと楽しそうに遊んでいる二人の悪魔の付近まで森は氷の結果を飲み込む。

 エレは弓で牽制するようにカラムの体を狙うが、強靭な鱗に弾かれる。

「やけに硬い鱗だ!まったく、俺も本気で行くぞ……。」

 左腕を前に出すとエレは円を描く。書いた円の周りには幾何学模様が浮かび、虹色の弓が左腕に装着される。


 弓の形を模してあるが弦はなく、矢を放つ所作をとると空を切り、風の矢がカラムに向かい放たれる。カラムが衝撃とともに突風で吹き飛ばされ、壁に衝突する。

「悪いが、久々だから手加減はできないからな。ヴィットさん、援護は任せてくれ!あと可能であれば、射線上には立たないでくれ!」


「ぐっ……。エルフ風情が……生意気な!」

「…実は…弱い…?…」

「そうですね。二人でかかる必要はないかもしれないですね。」


「き、貴様ら!!ふざっ」

 何かを喋りかけたが途中でエレが矢を放つ。

「申し訳ない。何かを喋ろうとしてたね。見るに耐えないからつい。」

 謝りつつも挑発する口調でエレは続ける。

「だがな、降参であればすぐに受け入れるから……遠慮せずに……ねっ!」

 容赦無くエレは矢を放つ。有無を言わさずに。



「そんなものか?カラム。自分に優位性がないと戦うこともできないのか?……まぁ、無理もないか。」



(ねぇ、ヴィット。アレ……。中に何か……いる!)

 リームシュークがヴィットの耳元で囁き、ヴィットもそれに小声で返答する。

「…大丈夫…だから…エレはトドメを刺してない…」



「本当にこんなのにエルフの国は乗っ取られたのか。毒を盛られた奴らは仕方ないが平和にかまけた結果か。俺がいた時であれば簡単に返り討ちにしたというのに……。運が良かったな?」


 ふざけるな!と怒号が室内に響く。それと共に大蛇から一人のダークエルフが吐き出される。

「はぁ……こんな出来損ないをベースにするから……。意識がある時は中で邪魔をしやがる。せっかく念願の王にしてやったのによ!」


 吐き出されたダークエルフをヴィットは捕まえ、入り口に放り投げる。目の前に飛んできたそれを二人の悪魔はキャッチせずにそのまま回避する。

「なにこれ!」「なにこれ?」

「…捕まえてあげなよ…ま…無事だから…いい…」


 ダークエルフが吐き出された瞬間、エレは何本も矢を放ち大蛇を射抜く。

「……くふふ、いいな、お前……。残念だがもう、そんな攻撃は通用しない。」

「みたいだな?」

「…さて…私も…手伝うよ…蛇退治。」


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