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Ingen historia av namne<<名前のない物語>>vol.2  作者: リナ
太古の森編
1/27

omstart<<突入>>

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 …ここは…?


 少女か首をかしげる。

 私たちは…そう。龍に飲み込まれた。…正確に言えば龍の口に入った。


 一人のハーフエルフが緊張感もなく思い出したように一言。

「あー、えーと。皆さん。とりあえず、落下と着地の準備だけしておいてください?」

「エレさんなんて言いました?落下と着地?」

 まさかと思いながらも嫌な予感と苦笑いする少年。少女は頷いてこれから起こるであろうことを想像している。ライカンスロープは言われたことを理解しておらず思わず聞き直す。

「エ、エレさん。ど、どういう意味で……。」

 おそらく何かを聞き間違えたのだろう。きっとそうだと首をかしげるライカンスロープ。


 ……。落下。落ちながらライカンスロープに対してもう一度口にする。

「シュガー、落下すると私は言ったのだよ。」



 あくまでもハーフエルフは落ち着いた声で、声を張って彼に届けるつもりも無さそうだ。そしてまず声を張ったとしてその声は彼に届いていない。それもそうだ。落下中で、彼の耳には風の音しか入らない。

「……まずいですね。」


 少年は空中で姿勢を制御してシュガーの服を掴む。その後は"双刃刀 嵐"を構え魔力を込める。

「バランスよく……バランスよく。こいつは僕の腕だ。」

 二人の悪魔にもらったアドバイスを素直に受け入れ実行する。


 シュガーの目前に地面が迫る。

「じ、地面が……!たすけ……!!」

 少年に彼の声は届いていない。うまく制御できたタイミングで彼は持っていた武器を降る。

 足元には空気の渦が巻き、その上に二人が乗る。その後は衝撃を減らすために滑空する。

「ふう。……エレさんも人が悪い。最初から言ってくれれば。」

 隣のシュガーは泡を吹き、気を失っている。


「…キライ…無事…?…」

 髪から肌まで真っ白な少女、黒く暗めのローブを羽織っているせいか白さが一際立つ。彼女は空中に氷の足場を作りそれを渡ってきた。


「ええ。僕は無事です。ただ……。」

「すいません。いうのが遅かったですね。」

 申し訳なさなど無くハーフエルフの青年は頭をさげる。

「いえ、この通り僕たちは無事なので。」

 エレはシュガーに木の実を無理やり飲ませると彼は意識を取り戻す。


 物語とは関係ないが……彼は数日間、落下する夢にうなされることになる。


「…エレ…ちゃんと説明して…」

「太古の森の昔から入り口は空高くに作っているのです。……なので。」

 彼の説明を遮り少女は。


「…それじゃ無くて…」

「色々言われていましたね。皆さんはエレさんの事を待っていたみたいですし。」

「……説明しなきゃダメかな?」


 ヴィットはため息を漏らすと首を横に振る。

「……気持ちに整理がついたらちゃんと伝えます。」

 それに二人は同意する。


「さて、これからですが……。」

「…私は…ラタトスクを探す…」

「ラタトスクですか!?」

「…エレ…知ってる…?…」

「知ってるも何も、この森の神獣です。この森っていうよりも世界樹のですが。」

「…どこいったら…あえる…?…」

「それはわかりません。この森のどこかにいるはずなのですが……。可能性が高いのは向こうに見える大きな樹が見えますか?」


 ヴィットは目を細め大樹を見つける。離れているというのに明らかに大きな樹があるエレ曰くアレが世界樹。

 困った事にゲルンがどうやってラタトスクに会ったかなんて話は聞いたこともない。……とりあえずあの大樹を目指すか。そう思案顔を浮かべる。

 そこにエレは言葉を付け加える。太古の森の中では外と中では時間の流れが違い中に30日いて外で1日ということだ。ヴィットはそれを聞いて少し安心する。

 …早いに越した事はない…でも…中の時間がそれなら…。


「…エレ…街はあるの…?…」

「近くにありますよ。とりあえず街に向かいますか。」


 彼らはエレの案内のもと街を目指し歩き始めた。歩き始めて半日……。

 エレが急に警戒を強め、ロングボウを構えて矢をつがえる。

 それに追従するようにキライとシュガーに緊張が走る。

「囲まれてるな……。」

「ええ。魔物ではなさそうですが。」

 視線を感じ取るキライ、そしてそこから明確な殺意がないと受け取る。

「……ヴ、ヴィットさんは?」

 エレとキライが振り返る。

「えっ?」

「さすがとしか言いようがありませんね。……一言言っていただければいいのですが。」

 キライは素早く武器を構え、シュガーに対して武器を構えさせる。


「シュガーは防御に専念。攻撃は僕とエレと……あの人は勝手にやるでしょう。」

「わ、わかった。」

 矢が複数方向から飛び交うがそれをエレが一人で撃ち落とす。同時に二人のエルフが半身凍り付けで木の上から落下する。

「森の騎士よ、矢を向けないでほしい!私達は敵ではない!」

「……その声、エレか!?」


 一人のエルフが姿を見せる。整った顔に無精髭、エレよりも少し高いかという身長で目付きは鷹やそれのように鋭い。その鋭い視線はしっかりとエレを捉える。

「……今更、何の用だ?」

「私は別に……。」

「敵として排除しようか?」

 矢をエレの首筋に突き立て憤りを隠さないエルフ。

「……現王と話をしに来た。」

「王と?今更……なんのためにだ!?」

「必要ないのか?」


 バキッと手にしていた矢が折れるとエルフは手を挙げる。隠れていたエルフが一人を除いて姿を現わす。

「あ?……エダがいないな?」

 それを聞いてキライが気がつき声を上げる。

「ヴィットさん!もう大丈夫です!武装解除です。」


「エダの奴どこいった!?」

 近くで戦闘音が響く。エダと呼ばれたエルフはヴィットの攻撃を回避しながら矢をつがえ放つ。

 ヴィットはその矢をナイフで軌道をそらしていく。


 ヴィットと対しているのは長身痩躯のエルフの女性。腰までの金髪、エルフは美しいと世に響くが、絶世の美女という言葉がぴったり来る、そんなエルフが弓を持ちヴィットのナイフを回避しては矢を放っている。


「ったくエダの奴!集中しててこっちの声が入っちゃいねぇ!」

「ヴィットさんも同じですね。」


 キライはエダというエルフの攻撃を見て驚きを隠せない。ヴィットの正確なナイフ捌きを見切りスレスレで回避する。それでいて回避しながらも不安定な体勢にも関わらず矢をつがえそれを彼女に対して放つ。

「ヴィットさんの動きも大概ですが、あのエルフも同じくらいおかしいですね。」


 エルフの騎士長もキライと同様に驚く。エダの矢をナイフの切っ先で軌道をそらし矢が一切当たらない。魔法や何かを使って阻害することなくナイフだけで矢を防いでいる。それでいて流れるように攻撃に移っている。

 ……互いにまだ様子見……というところか。まずいな無理やりにでも止めない限りにはアレは止まらないな。と言ってもアレを止めるのは至難の技。



「はぁ……。無理矢理ですが仕方ありませんね。お互い怪我する必要もないので。」

 エレが指を弾くと両者の間に光の玉が生まれ閃光する。


<<lätt(レット)>>


「…!?…」

「!?」


「そこまで!ヴィットさん、エダ。そこまでです。」

「……?エレ……なの?エレ!」

 エダというエルフがエレに飛びつき、彼女の肘が綺麗にエレの左顎を捉える。

「まったく!前みたいに優しくてもらえると思ってたか?」

 一瞬彼の意識は飛び、その場で膝をつく。



「ヴィットさんもお疲れ様です。流石ですね。」

「…あのエルフ…全くナイフが…当たらない…。」

「エダさんというらしいです。あの感じからするとエレさんとは親しそうですね。他の方はなんか険悪って感じですが……。」

「…そう…?…」

 彼女には全員が歓迎したいが何かあってエレのことを歓迎できないんじゃないかと考えている。

「ヴィットちゃんっていったかな?私はエダ。エレの姉だ。」

「…ヴィット…です…」

「私の矢を全部そらすなんてすごいじゃない!どうやったの?全部ナイフで起動そらしたの?……もしかして私の矢全部見えてるの!?」

「…え…ええと…」

「あ、ごめん!私は気になること全部聞きたくてさ!全部口から出て行っちゃうんだ。」

 こんなにも戦闘中とその後で明るくなるもんだとキライは感心している。それもそうだけど、ナイフと近距離で弓矢で戦うなんて……。



「シュガーさん!もう大丈夫ですよ。」

 キライは彼がまだ武器をきつく握りしめているのを見て伝える。

「あの、シュガーさん。貴方はもしかして実践経験……。」

「……は、はい。じ、実は無いです。」

 よくそれであの森に戻ると、度胸なのか無謀なのか悩んでしまった。

「次の戦闘からは前線で戦ってもらいます。森に戻るんですよね?経験値を積みましょう。対人の訓練ではなく。」

 シュガーは耳を垂れ自信無さそうに頷く。

「大丈夫です。僕と手合わせをした感じでは実力に問題はないですよ。あとは実践経験が足りないだけです。」

 ふとヴィットの方をキライが見るとエダと彼女は意気投合していた。



 お互いの戦闘の欠点を言い合いアドバイスをしあっている。

「……まったく、本当に戦闘好きですね。」



 一応のため、……いや体裁を繕うために軽く拘束され檻に入れられて街に連れて行かれる。

「…ここが…エルフの街…」

「みたいですね。森と一体になっているようです。」

「だろ?ここが太古の森唯一の都市……まぁ、変わっていなければですが。」

「な、なんで拘束されて……。こ、これからどうなるんですか!?」

「…シュガー…落ち着いて…体裁仕方ない…話聞いてた…?…」

「て、体裁って言っても……。こ、この後どうなるかなんて!?」

「シュガー、これを食べてください。楽になりますよ。」

「な、なんですか……これ。」

「気持ちを楽にさせる木の実だ。」

 エレはシュガーに青い木の実を渡す。彼はそれの匂いを嗅ぐと口に放り込む。すると穏やかな寝息を立てて眠りにつく。


「……さて、静かになったところでこれからに関して話しましょうか。」

「エレさん……もう少し、その……。」

 少し彼の扱いが雑だなと思いながらも。

「……ん?なんだい?……まぁ、あまり人に聞かれたくない話だからね。」

 これからの話その前にまず、エレ自身のことを語り始めた。彼は先代の王と人の間に生まれたハーフ、先代の王の実子、唯一の男だ。先ほど交戦したエダとは腹違いの姉弟ということだ。ハーフエルフは決して珍しくは無い。……王族ということを除けば。エレ以前にエルフの歴史上、王族にハーフがいたという記録はない。


「それでも先代は私を王にする気だった。」

 箔をつけるため魔獣の討伐や国政、色々な事を仕込まれた。彼自身才能もあり上手くこなしていった。そうする事でハーフエルフでもエルフには決して劣らず、秀でている事を証明した。


「だが、それを面白く思わない奴は沢山いた。そんな中俺が即位したらどうなる?エルフは分裂する可能性があった。そして、俺は……。」

「…森を抜けた…」

 エレは頷く。

「しかし、それは誤りだったようだ。……現在の王は。なにやらキナ臭い。」

 以前から入り口こそ隠されていたが、門番を立てることはしていなかった。しかもその門番が賢龍。世界樹と共にあるはずの龍だ。


「…世界樹と共に…」

 もしかしてあの龍に聞いたら早かったのではと首をかしげる。……今となっては今更か。時間を考える必要は無いか。とりあえずひと段落したらあの樹を目指す。


「ところで、みんなは何の用で太古の森に?エレは……今更どうしたの?」

 目を伏せてエダが尋ねる。今更(・・)と言うのはエレに対しての……。エレは居場所が悪そうに頭を掻いている。

「……答えてはくれないのかな?姉さん悲しいよ。」

「言わなくてもわかってるじゃないのかなぁ……」

「わかっていても、口にされないと嫌なことはあるよ?だからあんたは独身なんだ。」

「……まて!誰も独り身だなんて!」

「違うのかい?それならはして謝罪するけど……?」

「いや、独り身だけども……。独り身だけども。」

 ニヤニヤしているエダ。勝ち目がないと悟るエレ。


「……現王の考えを聞く。動くかどうかはそれから決める。現王は本当にフォレスタなのか?」

 エダは顔を伏せる。後ろから森の騎士のリーダーが口を挟む。

「いや、フォレスタは……病気で亡くなった。お前がここを出てすぐだ。」

 本当病気かと聞こうと喉まで言葉が出たが、その場にいるエルフの表情をみて聞くまでもなかった。

「毒殺……か。となるとだ。候補者の中の誰かか?」

「いや……ダークエルフの末裔、カラムだ。」

「カラム?知らない名前だな。それにダークエルフだって?おとぎ話の存在じゃないか。」


 現王はダークエルフの末裔ということだ。古来はダークエルフとホーリーエルフの二種類のエルフが存在していた。ダークエルフはホーリーエルフと比較すると強暴で力による森の統治を行おうと、ホーリーエルフは調和に寄り森の統治を行おうとしていた。特徴としてはダークエルフの方が肌が若干黒く、魔力が発達し魔法戦闘を得意とする。そして、ホーリーエルフとは肌が白く、目が利く。そして弓を使い遠距離からの狙撃を得意としていた。



 かつて、戦争があった。



 太古の森において、戦争というとダークエルフとホーリーエルフが長きに争った戦争を指す。

 ……というよりはそれ以外には戦争という戦争は起こっていない。


 だが、その戦争は森の神獣により止められた。

 神獣は調和による森の統治を望み、ダークエルフがホーリーエルフと共に歩むことを望んだ。

 そして、彼らは共に歩むことで、エルフと統合された。


 だが、神獣による調和に応じなかった一部がいた。

 それが現王カラムの一族だ。力を手に入れたカラムはエルフの国を一気に攻め落とした。次代の王が確定し、それが病死。それと重なりまさか同じ太古の森に住む者から攻められるとは考えていなかったエルフの国は成す術もなく短時間で陥落した。


「…エルフって…」

「ったく、大馬鹿だな。平和ボケしやがって。」

 ヴィットは言葉を濁したが、エレははっきりと言い切った。

「それで?お前らは服従したのか?森の民が呆れる。」

「エレになにがわかる!?」

 騎士のリーダーは激怒連行しているエレに弓を構える。

「……わかるわけないだろ!……わかるわけっ!逆に問うが、俺の気持ちがわかるか?」

 フォレスタとは仲が良く、彼が王になるべきだと思っていたエレは涙を流している。


「私は、……俺はあいつだからと……。決めた。復讐なんてものしてはならない、だが、あいつの無念、そして国の現状をひっくり返すためにカラムを落とす。文句あるか?」

 どうやら王に会うと言っていたのを撤回して王を引き摺り下ろすというらしい。


「…手伝おうか…?…」

 すでに拘束から抜けナイフを腰にさしている。

「やれやれ、ヴィットさん、少しワンパクがすぎますよ。」

 キライも同様に拘束から抜けて装備を整え、シュガーを起こす。そんな事を言いながらキライも準備を整える。

「……あれ?キ、キライさん?」

 シュガーを起こして、装備を整えさせるキライ。シュガーは目をこすりながら、状況を飲み込めないままに装備を整える。

漸く投稿できました。


USBメモリのデータが飛んだり…

HDのデータが飛んだり…

初めてブルースクリーンに出会ったり…


週一で更新予定です。

 ⇒あらため月水金よていです

では、可能であればお楽しみください。

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