(一)
屋敷の地下に、こんな無気味な通路が存在していたなんて知らなかった。
先行した真尋を追って岩戸を潜った美守は、延々と前方に伸びる真っ暗な隘路を道なりに進んだ。
《御魂鎮め》の中心部。
いままで、山頂から立ち上るあの煙の正体を深く気にしたことはなかった。『資格』を持たずに生まれてきた自分とは、生涯無縁のことと物心ついたときより言い聞かされ、みずからもまた、そう思ってきたからだ。
だが、《御魂》を祀るとされる本殿の中で、本当は、いったいなにが行われてきたのだろう。
通路内に響く唸り声は、進むほどに大きくなっていく。真尋の言うとおり、この路が本殿の真下に通じているのであれば、ゴール地点はさほど遠くはない。真尋にもじきに追いつくだろう。
長老側に情報が筒抜けになるのを懸念し、美守はトキの持つ力を封じるため、強引に老婆を背負って通路を進んだ。そのトキに照らさせている懐中電灯の灯りが、時折、足下に落ちた血痕をとらえる。美守は、そのたびに心臓に刺すような痛みをおぼえた。
──あたしも、本当に自由になれるかしら。そして司も……。
囚われた日々があまりに永く、そのせいで焦がれた『自由』が本当はどんなものなのか想像もつかない。だが、仮に叶わずとも、せめて自分にできることがあるなら真尋に手を貸そう。それが、感情に委せて愚を犯してしまったことへの、せめてもの罪滅ぼし。
感傷に浸りかけて、バカみたいと苦笑した美守は、
「美守様、美守様、前方になにやら面妖な明かりが……」
老婆が指さす先に、不可思議な明かりの存在を認めて足を止めた。
真っ暗な通路の先に、不自然に赤みの強い、ぼんやりとした明かりが見える。唸り声は、そこから聞こえてくるようだった。
「雛っ!」
突如、辺りに切迫した声が反響した。
真尋……。
思った瞬間、美守は走り出していた。
「こ、これっ、美守様っ」
驚いた老婆が振り落とされまいと首筋にしがみついた。




