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神の棲む島  作者: ZAKI
第八章 生き神
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(二)

 ぬばたまの闇が覆い尽くす深更、静寂は突如、地を揺るがす咆哮によって破られた。

 地鳴りのようであり、獣の叫びのようでもある怪音は、山の頂から島全土にわたって轟いた。


「恐ろしや、恐ろしや。《御魂》がお怒りじゃ」


 島民は、なべて慄え上がり、頭までかぶった布団の中で、あるいは家族と抱き合い、懸命に山頂に向かって両手を合わせた。


《御座所》を求めて《御魂》は嘆ずる。


 不吉の咆哮は、島を覆う晦暗かいあんをより深くした。






 庭のほうを向いて立つ小柄な老婆が、足下の畳を爪先で軽く打ち鳴らした。


 トントン・トトトト・ツー・トントン


 神妙な面持ちでリズムをとり、しばし沈黙した後、老婆は閉じていた目を開けた。そしてクルリと踵を返し、部屋の奥へ移動して正座すると、両手をついて深々と頭を下げた。


「姫様におかれては、なにごともなく健やかにお休みの由。特段の異変もなく深い眠りについておいでのご様子にございます」


 ウキの報告を受け、壇上にて脇息に凭れていた志姫は、物憂げにひとつ頷いた。


「覚醒がはじまった《御座所》の影響を受けて、《御魂》が反応したのであろう」

「おそらくは」

「《御座所》の様子はどうだえ?」

「真尋をひどく恋しがっておいでのようでございます。気丈に振る舞われてはおりますが、昨夕はついに堪えきれず、お泣きあそばされたとか。新参のお側仕えをお気に召し、だいぶお心を開かれたようでございますから、その影響もございましょう。トキのまえでは、いまだ決して表情を変えぬとか」

「真夕姫の血筋ゆえか、育てた真尋に感化されてか、剛直な子供よの」


 志姫はわずかに苦笑した。


「いずれにせよ、《魂込たまごめの儀》にはまだまだ尚早。覚醒と成長を、しかと見届けるとしよう」

「承知いたしましてございまする」


 一揖いちゆうしたウキは、指先でふたたび軽く畳を打ち、主の意向を社に控える双子の片割れに伝える。トキからの返事は、すぐさま触れた畳伝いに戻ってきた。

 その特異なやりとりを、志姫は無表情に眺めた。

 巫部の血筋に生まれた一卵性の双子の姉妹に限り、時折顕れる不思議な能力。

 自分にもかつて存在した力は、真夕姫が禁を破ったそのときに喪われた。

 いまは、それがどのようなものであったかすら思い出すことも難しい。


『姉様、すべての咎は、わたくしが負いましょう』


 たおやかでありながら凛とした妹の微笑みが、閉じた瞼の裏にくっきりと甦った。

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