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理不尽なデッドヒート

間が空いてすみません。

だって時間ないし人が多くて大変なんだもん。

 現実ではただの人。特殊な力を持っているわけではなく、神に選ばれた勇者でもない。

 だが、今だけは違う。WWOでは違う。特殊な力だってあるし、神(GM)に選ばれれば勇者にだってなれるかもしれない。そして、選ばれずとも現実ではなれないものになれる。

 今の彼ら三人は、忍者だ。

 全職業中最高のAGIを誇り単体でも脅威である。職業の組み合わせにより音すらも置き去りにできそうなほどの物となる、まさしく『最速』。


 だが、その『最速』が、目の前の現実に動揺をしていた。


「ひいぃぃやあぁぁぁ!!」


「くっ……速い!? 離されこそしないが俺達が追い付けないだと!?」


 銀朱の言う通り、三人は一葉楓とそれを追走する店員NPCに追い付けず焦りはじめる。


「あの二人も忍者なのかな!?」


「現時点ではなんとも……。ですが楓さんは背中に杖が見えます。おそらく魔法職かそちら寄りでしょう!」


「じゃあなんで追いつけねぇんだよ、クソッ!」


 魔法使いである楓に三人をして追い付けないのには訳がある。

 一つは地の利。拠点をこの街に据え大通りではなく裏路地という細く複雑な道を普段から街のあちこちに行くために使っている楓と、裏路地にはさして詳しくない三人では大きく差ができる。

 そしてもうひとつ。

 スキルである。


「!? お、おいあれ見ろ!」


 チラリと指をさされた方を見ると、楓の頭からピョコリとナニカが生えており、よく見るとそれは……


「耳? あれは……ウサギの耳でしょうか?」


「風でたなびいてるしこの速度だからよく見えなかったですが……カチューシャでもないようですね、間違いなく生えてます」


 可愛らしく生えたウサギの耳が本当に生えていると知った瞬間、銀朱は本気で面倒くさそうに眉を寄せる。

 なぜならそれはこの条件下では忍者であることよりも面倒なことを示すからに他ならない。

 使用中や発動中に少し外見が一時的に変わるスキルやアビリティはWWOには意外にも多い。バーサーカーの〈凶化〉がいい例だろう。だが、それでも現時点でウサギの耳が生えるようなふざけたモノは一つしかない。


 〈脱兎のごとく〉


 レンジャーの〈逃走本能〉と効果は似ているが、発動のタイミングは追跡されている間だけ。自分を明確に追跡している相手一体につきAGIを1.3倍、VITを1.15倍にするレアアビリティ。NPCを含めて今は四人。おおよそ2.8倍と1.75倍になっており、ならば魔法職と言えど忍者に追い付かれない位には上昇しているはず。息があがる前に捕まえねばならない三人にとっては苛立ちと焦りに繋がった。


※どうするか

※誰か


 だが、この現状に誰よりも苛立ちを覚えていたのが速度狂、銀朱。

 ――ふざけるな。

 どんな原因があれ、自分の自信そのものである速度で負けている。たったひとつのこだわりが、汚される。その瞬間、彼は武器を構えスキル発動の動作に入った。カゲロウの声も耳には入らず、オーラが立ち上がる。


疾風御御脚(はやておみあし)!」


※どうなるか


 足がぶれて見えなくなり、構えた剣と共に楓に向かい一瞬で突き刺さる。

 ――はずだった。


「がっ……!」


 動き出すその直前に腹部に衝撃が走り、狙いが外れた銀朱は壁へと激突した。


「ついに攻撃してきたあぁ!? 店員NPCってこんなに怖くなかったよおぉー!?」


 楓のシャウトに呆ける暇もなくカゲロウが速度を落とさず銀朱を回収する。ふと目をやると並走するてりやきの腕は黒く硬質化しており、スキル発動後と分かった。


「なにしやがんだ!」


「こっちの台詞です! 魔法職相手にそんなスキル使ったら間違いなくオーバーキルですよ!?」


「じゃあどうすんだよ! どこに行くかだってわからねえんだから回り込むことも出来ねえんだぞ!?」


※どうするか


「……致し方ありませんね」


 声の主であるカゲロウだったが、その声には悔しさとも怒りとも言えない何かが含まれていた。


「何か思い付いたのか」


「ここは裏道とはいえ人の通りがないわけではありません。それにもうすぐWWOでは一番IN率が高い時間帯になりますから、人が増えるでしょう。中には戦士職の方もいるだろうと思います」


「……っ! それはつまり……」


 それは、速度狂にはあってはならない作戦。


「他の人が前に出てくるかかNPCが捕まえるまで、追い続けます」


 事実上の――敗北。

 自分たちでは無理だから、他人に捕まえてもらうまで待つ。NPCに捕まえられた場合、その瞬間に奪わねばプリズン送りにされてしまうから、後ろをこのまま並走。速度で追い付くのを諦めた作戦だった。

 反論をしようとするが、追い付けない現実は変わらず、歯ぎしりをする。


「! おあつらえむきの直線コースです! ここで追い付けなければもう作戦通りにしてもらいますよ!?」


 てりやきに言われて左右を見ると人が通れる隙間はなく、曲がり角まではまだ先だった。おそらくこれが最後のチャンス、姿勢を低くし、更に加速する。


※どうなるか


 すると少し先の店の扉が開き、中から人が出てきた。接触まで数秒しかなかったため、急いでカゲロウは声を張り上げた。


「そこの人! 前の二人をどうにかして止めてください!」


※誰か


「ウニャ!? ふ、フェル!」


※どうなるか


















 店から出てきたら弾丸のような速度で人が飛んできたのだから驚いて自衛をしようとしたフェルミルの女性、詩歌を責めることは誰にもできないだろう。だが、物事には限度と言うものが存在するのが世の常であって、


「……何も連打したあげくクリティカルでHPゲージレッドまで削らなくても……」


「いぃいきなり来るのが悪いニャ!」


 彼女が連れていた白い大犬、フェルによってNPCは既に葬られ(レッドゲージ&グロッキー)、目的の楓も「パンコワイイヌコワイパンコワイ……」と呟きながら倒れ伏しており虫の息になってしまった現状に言い出しっぺのカゲロウはため息しか出なかったのだった。

 あまり納得がいっていない銀朱は外面はふてくされてはいるがどこか肩の力が抜けていた。


「……なあてりやきくん。俺疲れたんだが……」


「……まあとりあえず回復しないと不味いんじゃないですか?」


「「あっ」」


「ぽ、ポーション、ポーションは何処だ!」


「プリーストー! プリーストを急いで呼ぶニャ!

 ……あっ。あたしだったニャ」


 どこのコントだ。

 心の中でそう呟いたカゲロウに封筒のアイコンが現れた。素早くコンソールを操作して確認すると、かるぼからのメールだった。


※内容は








fromかるぼ☆な~ら


 店に残ってた野郎にはフォッサ砂漠に向かってもらったからあんたたちは楓ちゃんつれて古代樹の森に行きな。


 追伸

 うちの空気が汚れるから行く前に戻ってこなくてよし。全部終わるまで野郎だけ帰ってくんな。グッバイ。











「……決めたぞカゲくん。俺終わったらあのアマしばく」


「……念入りにやりましょう」


 いつの間にか集まっていたため中を見たメンバーは皆変な顔をしていた。


「それじゃ古代樹の森まで四人で行くんですね?」


「ってもあそこ敵多いしテイマーとかサモナーみたいに人手を増やせるといいんだけどな……誰か……」


 そしてふと目線を送った先は、


「ニャ?」




※どうするか

1.三人のうち誰かがスキルを使う

2.飛び道具による捕縛

3.息切れまで粘る

4.他人かNPCが捕まえたところを奪還

5.応援を呼ぶ

6.諦める


出たのは1。



※誰が

1.2.銀朱さん

3.4.カゲロウさん

5.6.てりやきさん


出たのは2。銀朱さん遂に見せ場到来!?



※どうなるか

1.2.3.成功

4.5.6.失敗


5が出ました!見せ場を活かせず……



※どうするか

1.三人のうち誰かがスキルを使う

2.飛び道具による捕縛

3.息切れまで粘る

4.他人かNPCが捕まえたところを奪還

5.応援を呼ぶ

6.諦める


出たのは4!うまくいくか!?



※どうなるか

1.捕まえるよりも先に人とかち合う

2.人とかち合うよりも先に捕まえる

3.NPCが捕まえる

4.逃げ切られる

5.戦闘に持ち込まれる

6.あべしっ!(転ぶ)

出たのは1。個人的には6が良かったなぁヽ(´o`;



※誰か

1.2.たしぎさん

3.4.詩歌さん

5.6.NPC

はい出たのは4!たしぎさんはもう一つのパーティに行ってもらいます(^o^)/



※どうなるか

1.4.見事に止める

2.5.やり過ぎる

3.6.止められない

出たのは5。

無残なり((((;゜Д゜)))))))



※内容は

1.2.3.フォッサ砂漠に行け

4.5.6.古代樹の森に行け

出ました!6!

もう一つのパーティはフォッサ砂漠へー。



パーティを二つに分けました。

あのまま10人で行動とかかくの大変だもの。


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