収まらないヤツら
ポーションを割り、体力を回復する。
「ハルルルル……」
「私から行く! 〈ドローウィップ〉で気を引くからお前は〈ハウリング〉で援護しろ! 合図で叩き込め!」
「ウォウ!」
少女の上半身は狼のそれとなり、言葉も唸るような獣の声に変わる。
ワーウルフ。テイムされる前の本来の姿である。テイム後の外見は実際テイムされても変わらないのだが、課金アイテムを使用することで好きにいじることができる。マイホーム等を持っている人はテイムモンスターとは別口で作れるが、それはまた別の機会で。
この外見をいじる応用で、複数形態……どこぞの世界の半分を勇者に渡して釣ろうとしたが逆に成敗された魔王のような外見を持たせられる。かなり根気が必要なテイマー職が根強い人気を持っている理由でもある。
別の姿の時にペナルティを付けることで今のワンコのように本来の姿になったときにボーナスが得られるということも大きい。
それでも一から外見を作るのが大変で結果、サモンモンスター等には人気でも遅れを取っているのは仕方ないこととも言える。
再びタナトスマフモの水晶が光る。
水晶の数は二つ。
「二度も食らうか!」
※回避できるか
「うああっ!」
意気込んだものの詠唱速度の速さはやはり脅威的で詠唱開始から近づいて詠唱破棄をさせる時間もない。イラつきと同時に収穫が有ることに少なからず安堵したが。各種属性魔法の〈Ⅱ〉は〈Ⅲ〉に比べれば威力は低いが詠唱速度は速い。目の前のタナトスマフモも例外では無いようで、もし威力が上がれば速度も上がったりしたらチートだと運営に訴えようかと考えていたたしぎはちら、とHPゲージを見やる。
イエローゾーンにまで減らされている。
「ガウッ! アオォオーン!」
「〈シールドハウル〉か。よし、ポーションを」
ワンコの〈シールドハウル〉によりHPが少量回復しDEFが一時的に上がり、間髪入れずにポーションを使用する。
再び魔法を放とうとするタナトスマフモにたしぎは口端を吊り上げた歪な笑みを浮かべ、前に出た。
※どうなったか
「〈ドローウィップ〉! ワンコ!」
スキルによる攻撃で、たしぎの鞭は相手に巻き付き強制的に引き寄せる。急激に引き寄せられたことで詠唱を中断させられた獲物を逃すつもりはなく、ワンコに相手背後から追撃するよう合図を送る。
「ガルアアァ!」
ワンコの腕の毛が逆立ち、一本一本が硬質化する。ワーウルフのモンスタースキルである〈グレイブナックル〉の予備動作による状態で、体勢が崩れていたタナトスマフモに針の筵のような腕が全力で叩き込まれた。凄まじい勢いで地面へと飛ぶ。
――どうだ!?
かなりのベストタイミングで打ち込まれていた。倒せなどはしないだろうが、追撃の隙くらいはあるだろうと思っていた。
――だが、敵は地面に叩きつけられながら、即座に水晶を光らせた。
光ったのは、四つ。
「……みんなそろそろ来てくれ……さすがにこれはまず――」
※助けが来るか
* * * * *
――たしぎが危なくなる少し前。
※他の人は何をしているか
※誰に
「ンフフフフ……サァ、始まりまシタ、「嗚呼あの人にチョーカーを」のコーナーデス! サアサア鋭一サン、私のプレゼントを受け取ってくだサイ。特注のチョーカーでスヨ、危険なんてこれっぽっちもありませンヨ? なんなら私が今すぐ着けて差し上げテモ……」
「ヒイッ!? え、遠慮いたします!」
「そんなこと言わズニ……! サァ!」
「そもそもそれチョーカーっていうより首輪ですよね!? わ、私は貴方と違ってそういう趣味は無いのです!」
「大丈夫、まだイケまスヨ」
「何がどこにですか!?」
力ずくでチョーカー(という名の首輪)を嵌めようとする悟に一人抵抗する鋭一という光景に全員が呆れてそろそろ止めるかと考えていた。
その時、地面に何かが叩きつけられる音が耳に届いた。
反射的にその方向を見ると、ダオがじっと観察していたのが目に入り、同時に地面に叩きつけられながらも詠唱に入ったタナトスマフモも見えた。
※何人助けに行くか
※誰か
「先に行きます!」
「わ、私も!」
言い置いて、鋭一はすでに走り出していた。
続いてイヴリが飛び出す。
「こっちはあたし達で何とかするから後ろのうじゃうじゃはお願いニャ」
一言言ってから詩歌も後を追っていった。
残った三人はコンソールに表示されている赤点――モンスターが自分達の来た道から大量に来ていることに気づくとゆっくり武器を構えて振り向く。
出てきたのは全身が黒い液体のようなモンスター。頭上に表示されている名前はエビルスライム。しかも中には不自然に泡立ち口のように穴が空いた個体、ウーズも確認される。
量がかなりのモノだったので恐らくタナトスマフモにつられて集まってきた奴らだと当たりを付けた三人は別段気負った様子もなくニヤリと笑った。
「……ちょうどいい。暴れたかったところなんだよ……」
「自殺志願者が一匹、二匹、三匹……アア……数えきれませんネェ! ンフハハハハハハハハ!」
「……ウフフ……粘液素材にはしばらく困らなそうですね」
ダオ、三河 悟、靉靆。後にWWOで最も怒らせてはならないプレイヤーベスト3、怒髪三天と恐れられる三人が初めて肩を並べて戦った瞬間だった。
* * * * *
たしぎは〈サンダーⅣ〉をくらえば間違いなく吹き飛ばされて追撃で殺られると覚悟していた。
が、実際はそうはならなかった。
「シッ!」
速度を乗せた鋭一の抜刀攻撃によりタナトスマフモは詠唱を中断させられ、壁へと叩きつけられた。後ろから手に罠を持ったイヴリと弓を構えていた詩歌も見られた。
「遅いですよ!」
「黙ってください! とにかくある程度情報は手に入ったんでしょう?」
「見たまんまですよ、かなり速い詠唱速度で〈サンダーⅠ〉から〈Ⅳ〉までを撃ってくる上、恐ろしくタフで……」
「二人とも! 何とか一分私にタゲが向かないようにしてください! 罠を仕掛けます! 今日買った新型が早速使える……!」
「援護はするから頑張れニャー!」
決着は目前まで迫っていた……。
※対タナトスマフモで一番活躍するのは誰か
※対エビルスライム&ウーズで一番活躍するのは誰か
※回避できるか
1、3、5……成功
2、4、6……失敗
はい4!
またくらったたしぎさん。
※どうなったか
1、2……回避しつつ、反撃
3、4……なにかできるそぶりをしながら喰らう
5、6……詠唱中断に成功する
出たのは5。
やっといいかんじですよ。
※助けが来るか
1、3、5……来る
2、4、6……来ない
出たのは3!
一応まだ殺られずに済みましたね。
※他の人は何をしているのか
1……ダオさんの「レッツパーリィータイム(凶化して暴走)」のコーナー
2……靉靆さんによる「ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・もご飯にする?(全て有料)」のコーナー
3……三河さんの「嗚呼あの人にチョーカー(と言う名の首輪)を」のコーナー
4……辺さんの「実録。刀と私の愛」のコーナー
5……イヴリさんによる「突撃! 隣のメンバーさん!」のコーナー
6……詩歌さんの「ドキッ! 〇〇だらけのハッスルクエスト~バッサリもあるよ」のコーナー
悪ふざけですが出たのは……3……
ごめんなさい皆さんパンドラの箱が開きました
※誰に
1……ダオ
2……辺 鋭一
3……イヴリ
4……立花詩歌
5……靉靆
6……全員
……出たのは2。
辺さんがいろんな意味で危機に!
※何人助けに行くか
出たのは3なので三人。
※誰か
1……ダオ
2……三河 悟
3……立花詩歌
4……イヴリ
5……辺 鋭一
6……靉靆
3、4、5が出ました!
たしぎさん救出に行くのは女性だけということに。
奇跡的に全員AGIが高い。
ここからは次回へのお楽しみ選択肢!
見せ場が手に入るか!?
※対タナトスマフモで一番活躍するのは誰か
1……たしぎ はく
2……ワンコ
3……立花詩歌
4……イヴリ
5……辺 鋭一
6……ワンコ+たしぎさん
まあサイコロの結果とはいえ頑張ったたしぎさんには選択肢を追加!
無情にも別の人になる可能性はありますが。
※対エビルスライム&ウーズで一番活躍するのは誰か
1……ダオ
2……ダオさんと靉靆さん
3……三河 悟
4……三河さんとダオさん
5……靉靆さんと三河さん
6……靉靆
バーサーカー×咎人の組み合わせは回避したいですね……




