第二十四章 見送り
やがて出発の時が来た。龍達はそれぞれの騎禽へ向かう。巨鳥達が翼を震わせた。
アンドリは龍皇に抱えられていた。
体格だけなら既に平均的な成人男性を大きく上回るまでに育っていた。
それなのに、その彼を遥かに凌ぐ体格の龍皇に抱えられた今の様子は、まるで子供だ。
その光景を見て、アントニウスはふと、あんなふうに抱いてやったことがあったなと思う。
土砂崩れの日。
冷たい身体。泥だらけの顔。火の前で抱いていたあの時は、小さな身体だった。
「では世話になった」
龍皇がアンドリを抱いたまま、軽々と騎禽に跨った。
「このもてなしの礼はいずれ致そう」
アントニウスは一歩前へ出た。
「未熟者の弟ですが、なにとぞよろしくお願い申し上げます」
龍皇は呵々と笑って腕の中のアンドリを見る。
「これから大きく育つということであろう。未熟者、大いに結構」
そして再びアントニウスへ視線を戻した。
「次にまみえる時を楽しみにしておれ」
アントニウスは、ハッとする。その同じ言葉を、アンドリにかけてやったことが、昔あった。
強い風が吹いた。砂埃が舞い、アントニウスの外套が激しくはためいた。
巨大な影が次々と空へ昇っていく。
龍皇の姿が小さくなり、騎禽の影が空へ溶け、やがて何も見えなくなっていく。
それでもアントニウスはその場を動かなかった。
近衛兵団長として。
王太子として。
そして弟を想う兄として。
踵を合わせ、背筋を伸ばした姿勢で、去っていった一行に向かって頭を下げるのだった。




