第二十一章 龍乃国
やがて王宮に一つの知らせが飛び込んできた。龍乃国の龍皇が、今年の夏に執り行われる国王即位二十周年記念式典への列席を承諾したのである。
イミリーシャの歴史に残る快挙だった。実り豊かな南国との国交は、イミリーシャの未来にどれほどの恩恵をもたらしてくれるのか計り知れない。
その龍乃国の龍皇自らが訪問するという。王宮は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
だが龍皇側から提示された条件もまた前代未聞だった。
自分たちの体格に見合う居室を用意すること。熱い風呂を常に準備すること。
とにかく暖かい居室にすること。
条件書を読んだアントニウスは眉をひそめた。
国王はとにかく上機嫌ですでに大型家具の建造を命じていた。
南国の民なら当然だと、国王は特に何も疑問はないようだったが、アントニウスは妙な違和感を覚えていた。
南の彼方の常夏の国。そこで暮らす龍たちは寒さを嫌う。
それは知っている。
だがそれなら、なぜイミリーシャまで来る?
そもそも招待状を送ると決めた時に、誰も龍乃国が承知するとは思っていなかったのだ。
疑問は胸に残るが、アントニウスの中に、一つの考えが頭をよぎった。
そして式典の朝、アントニウスは龍が接近しているのを察知していたが、アンドリが龍達に見つかるのをわざと防がなかった。
国王はアンドリを龍の目に触れさせまいとしたがアントニウスは国王の方針と真逆の策を立てたのだ。
そしてアントニウスの思惑通りに、ことは運んでいく。
龍達の前に引き出されたアンドリは、不安そうな顔をしていた。その顔を見て、アントニウスは罪悪感を抱く。
自分はいつも、アンドリを利用してばかりいるなと思わずにはいられなかった。
これからどんな運命が待ち受けているのか、想像することもできていない弟の不安を、せめて和らげてやりたくて、退室の間際、視線を送ったのだった。




