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第十章 出立
翌朝も、雨は相変わらず強く降り続いていた。馬車へ向かうアントニウスの前に、一人の子供が現れる。
アンドリだった。
「でんか」
アントニウスは鼻を鳴らした。
「下働きの貴様が任務を続けるというのに、なぜ王太子の私が追い出されねばならんのだ」
アンドリは少し考えた。
「でんかには、もっとだいじなおつとめがおありですから」
「ふん」
アントニウスは不機嫌そうに腕を組む。
「くれてやった羊皮紙の分の働きをしてみせろよ」
「はい」
「読み書きの練習もだ」
「はい」
アントニウスは少しだけ笑う。
「役に立つなら、いずれ召し抱えてやる」
アンドリの顔がぱっと輝いた。
「ほんとうですか」
その時、テオドロスが近付いてきた。
「殿下。参りましょう」
アントニウスは舌打ちしながら馬車へ乗り込む。動き始めた馬車を追いかけるようにアンドリが叫んだ。
「でんか! たいへんおせわになりました! おれ!」
小さな拳を握る。
「いつかきっとでんかのおやくにたてるように、がんばります!」
アントニウスは目を細めた。
「私の期待を裏切るなよ。アンドリ・チェイレイ」
名前を呼ばれたアンドリは嬉しそうに背筋を伸ばした。
「はいっ!」




