表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

いつかこの許されない日々がまた望みを絶つとしても、君と隣を歩く未来を望みたい

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/04/13

 三月二十七日は、結構いろんな記念が重なる日だと思う。

 四人で出逢った日。


 四人で、死んだ日。


 繰り返すことを決めた日。


 再び四人で歩いていくことを決めた日。




 あとは――。



「あら」


 何度も繰り返してきた、三月二十七日。

 けれど消滅日じゃない今日は、妹は元気に動いている。


 今日も笑顔を絶やさず紅茶を淹れてくれる妹の背に、頭を預けた。


「どちら様かしら」

「……わかってるくせに」

「とりあえずリアスではないことは絶対わかりますわ」


 あの男はやりませんもの。

 そう笑う妹の揺れを心地よく感じながら。


「あらあら」


 細い体を、少し強く抱きしめる。


「お湯がこぼれますわよ」

「別に感じないんで」

「あなたが切れるのは痛覚でしょうよ。熱さは無理でしょうに」

「熱さも痛みも一緒じゃなかったっけ」

「それ確かかゆみと痛みじゃありませんでした?」

「そうだっけね」


 軽く流しながら、あたたかい体温を堪能して。


 目を閉じて、暗闇に堕ちる。

 そうしたら、この日は感じづらいはずの痛みが、心臓の後ろから出てきた気がした。



 三月二十七日。



 たくさんの記念日が重なる日。


 出逢い、死に。

 決意し、また出逢う。


 再び歩き始めた、そんな大切な日。


 そして忘れちゃいけない。




 俺が、カリナを殺そうとした日。




 あのときはきっと精一杯だった。

 誰もがわかるくらい、全員がいっぱいいっぱいだった日々。


 きっとカリナも、リアスもクリスティアも、これを話せば「そのくらい気持ちがいっぱいいっぱいだった」と許してくれるんだろう。



 けれど、自分じゃ当然許せない。



 追い詰めていくほどに、戒めとして残した傷跡が痛んだ気がした。



 それを甘んじて受けながら。



 愛する妹を、抱きしめる。


「……カリナ」

「はいな」


 ほんの少しだけ、泣きそうだけど。それは気づかせないようにして。



「ごめんね」



 妹が言えない謝罪の言葉。それを俺が言うのはずるいのだけど。

 今日だけ、その日のことだけ。


 そこだけ自分に言い訳をして、ぽつりと謝れば。


「なんのことでしょう」


 知っているくせに、妹は明るく言った。

 俺も、妹はそれについて知らないふりをしてくれるのを知っているから、笑って。


「何でもない。愛してるよカリナ」

「私もですわ、レグナ」


 今度は通じる愛の言葉を、めいっぱい気持ちを込めて抱きしめながら言って。


 妹が用意してくれる紅茶の完成を待った。



『いつかこの許されない日々がまた望みを絶つとしても、君と隣を歩く未来を望みたい』/レグナ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ