第二部〜結実編
交際をして、同棲をはじめた僕・誠人と会社の後輩の愛花。
僕は不器用ながら互いの気持ちを育み、桜舞う季節に想いがついに実る。
僕は誠人、日光市に住む27歳だった。
ばあちゃんから「まっすぐな人になってね」と生前に告げられていた。
僕には「愛花」という会社の後輩の彼女がいた。
初デートではお互い口数も少なく、心がざわついていたが、先輩の「愛花のことまだ好きだろ?」の一言で再会した。
二回目のデート、喫茶店でオムライスを食べて笑い合い、その日の帰り道で勇気を出して告白した。
その味と香ばしい香りは、ふたりの思い出として胸に刻まれていた。
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交際半年となる秋、生活リズムの違いもあって日光市のアパートで同棲を始めた。
紅葉が近づくある日、家でカップラーメンを食べていると、愛花がドアを開けて言った。
「またそういうのばかり食べて」
僕は「別に楽だからいいんじゃん」と返すと、愛花は冷たい表情で「もういいよ、勝手にすれば」と答えた。
後ろのゴミ袋は弁当やカップ麺でいっぱいで、出費もかさんでいた。
「家計のことも少し考えてよ」と呆れられていた。
さらに、お互い「考えるのが面倒くさい」と将来の話まで避けるようになった。
その変化に、「このままでは愛花に冷められる」と危機感を覚えはじめていた。
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数日後、愛花が風邪をひいた。
高熱で汗が滴る姿を見て、「俺が支えるしかない」と決心した。
「家事は俺がやるから、ゆっくり休んでていいよ」と告げた。
最初は野菜も上手く切れず、「何その切り方」と笑われた。
ある日料理をしていると、後ろから「こう握ると持ちやすいよ」と手を添えられ、心臓が大きく跳ねた。
不器用ながらも手伝うことで、関係は少しずつ良くなっていった。
それでも、愛花は寂しそうに空を見上げることがあった。
そんな彼女の姿を見て、僕はある覚悟を決めた。
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一年記念日が近づいたある日、僕は愛花に告げた。
「記念日は空けておいてほしい」
日を追うごとに、胸を膨らませながら「どうしよう」と思う彼女の様子に、僕は背中を押されるようだった。
そして花屋やスーパーを回り、密かに計画を練った。
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待ちに待った四月十日。
彼女は昼過ぎに現れた。
舞台は、僕らが同棲していたアパートだった。
「料理するから、テーブルで待っててね」と伝え、僕はまだ慣れない手つきでキッチンに立った。
デミグラスソースの香ばしい香りが部屋に広がった。
「できたよ」と満足そうに言い、二つのオムライスを並べた。
湯気と香りに、愛花は「手作りオムライス!?」と目を丸くした。
僕は一呼吸置き、「重くならずに聞いてほしい」と前置きした。
真剣な眼差しで見つめる彼女を前に、胸が熱くなった。
後ろに隠していた真紅の薔薇の花束をそっと取り出し、口を開いた。
「実は、初デートの沈黙で愛花とは付き合えないかもと諦めてたんだ。
でも、同棲してみて、ふたりで人生を歩みたい、どんなにキツイことでも乗り越えられそうと本気で思えたんだ」
「まだまだ不器用で未熟だけど…」
「結婚してください!」
飾ることのできない想いを伝え、手を差し出した。
愛花は涙を浮かべ、「私も大好きだよ。お願いします」と呟き、柔らかく握り返した。
過去も未来もすべて受け入れてくれる彼女に、「本当にありがとう」と告げ、思いきり抱きしめた。
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プロポーズ後に食べたオムライスは、デートの味と同じく懐かしさと温かさが口いっぱいに広がった。
その味には、「初心を忘れない」という想いも込められていた。
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その日の夕方、ふたりでばあちゃんのお墓に報告に向かった。
お墓に着き、僕は語りかけた。「ばあちゃん、名前通りになれたかな?」
愛花は僕の手を握り、そっと寄り添いながら言った。「なれたから結婚したんだよ」
その瞬間、僕の心に笑顔がそっと差し込み、温かく包まれるようだった。
(ばあちゃん、幸せになるから見ててね)
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僕たちの愛情という花は、こうして鮮やかに実を結んだ。
ふたりで歩く満開の花道を、心に描きながら夢見た。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
二人の恋がついに結実しました。
今回の話は三部作『恋色に咲く誠華』第二部「結実編」でした。
次回は三部作最終章「爛漫編」です。
ふたりの愛が鮮やかに花開く物語を、ぜひお楽しみに。
最終章の前編は金曜日の夜8時に投稿予定です。
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※第一部「開花編」も気になる方は、後書きからご覧ください。
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