エピソード04
「今日は診療休みなので、また日を改めて来てもらえませんか」
「そんな、つれない事言うなよ!」
男は凄いチカラでドアを強引に引き開けた。
ドアノブを持っていた俺は、開く勢いで外に放り出され雪の地面に倒れ込んだ。
「この辺りで暮らすなら、俺に逆らわない方が身のためだぜ」
薄ら笑いを浮かべた男は、診療所の中へ入った。
「へー、これが動物病院ね」
男は治療台に残る血を、指で拭き取りながら確かめた。
「これだけ血がでてりゃ、もう死んでるかもな。そう思わないか、先生」
「そうかも知れませんね」
男は散弾銃を肩に担ぎ、棚にある薬品の入ったガラス瓶を手に取りラベルを見ている。
「あなたは、この村の人じゃないですよね」
「俺か?俺の家は、ここから5キロ程離れた村だが、この辺り山もおやじの山だからよ。俺は好き勝手にできるのさ」
「なるほど」
男は机にある背もたれ付きの椅子にドカっと座り、散弾銃を机の上に置いた。
俺に緊張が走る。
「もっ、もしかして、きつね狩りですか?」
「狩りって程じゃないけどね。俺はキツネを撃ち殺すのが趣味なんだよ」
男は急に立ち上がり、俺の顔前に詰め寄った。
「キツネはいいぜー。クマは危険だろ?ウサギはショボ過ぎて面白くない」
「ちょうどいい大きさ、ってことですか」
「そうなんだよ。本当は犬がいいんだけどよ、野良犬って全然いないだろ?」
「確かに」
「オオカミはさ、集団で来るから。怖いんだよ」
「なるほど、」
「だからキツネが一番面白いって。ドーンって撃って、奴らがのたうち回るのを見るのが快感だな」
「・・・結構面白そうですね」
「だろ!先生も一度やってみろよ。きっとハマるぜ」
「でも、銃撃つのって許可がいりますよね?」
「大丈夫、大丈夫。こんな田舎で撃っても、誰も何も言わないって。俺も許可なんて持ってないし、この銃もおやじのだから」
その男は、ニコニコしながら俺に散弾銃を見せた。
「じゃ、今度撃ち方を教えてもらおうかな」
「おお、いいぜ!俺の家へ来いよ、教えてやるから」
男は机の上にあるメモに、住所と連絡先を書いた。
「じゃな、先生。待ってるぜ」
男が出て行くと、俺はすぐ机の一番下の引き出しを開けた。
赤い包帯をしたラッヘは、目を閉じたまま息を引き取っていた。




