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エピソード01

 「おいー、またかよ」

 

思わずハンドルを叩いた俺に、車は”プウ”っとクラクションで答えた。

エンジン停止。

これでもう何回目だろうか。


東大の獣医学課を卒業し、獣医師の免許を取った俺は、

見栄を張ってイタリア車を買ったが、

貧乏な俺が買えたのは、中古のオンボロ車。


 「先輩、待たせるとヤバイな」

 

仕方なくロードサービスを呼ぶべく、スマホを出すと圏外だった。


 「・・・」

 

まあ、こんな北海道の端じゃ電波も届かないよね。

ため息と共に車の外に出た俺は、思わぬ冷気に身震いした。


 「寒!五月だっていうのに、」


さすが北海道、東京とは違う。

などと感心している場合ではない。

さて、困った。どうしよう。

どこかの車が、この道を走ってくるのを待って乗せてもらうか。

いや、道の真ん中に車を放置できないだろ。

しかし、北海道なら許されるかも。


いろんな事を考えてると、道路沿いの茂みがガサガサと動いた。


 「ん?」

 

近寄ってみると、一匹のキツネが子ぎつねを口にくわえて茂みから出てきた。

人間に驚く様子も無く、

野生のキツネを初めて見て、感動と驚きで動けなかった俺を、

そのキツネは真っすぐに見ていた。


少しして、口にくわえていた子ぎつねを地面にゆっくり落とした。

そして、俺を見た後くるりと反転し、茂みの中を山の方へ向かった。


地面に落とされた子ぎつねは、すぐにそのキツネを後を追いかけたが、

そのキツネは、追いかけてくる子ぎつねに向かって口を大きく開け、

ギャー、ギャーと威嚇するような声で叫んだ。

もの凄い勢いに、子ぎつねはすくんでしまい動けなくなった。


動かなくなった子ぎつねを見て、

そのキツネは振り返ることなく茂みに消えた。



子ぎつねは、震えていた。

4つの足で立ってはいるが、全身の毛を逆立て震えていた。


 「お前、母さんに捨てられたのか?」

 

俺は震える子ぎつねに近づき、両手で抱えた。

子ぎつねは、逃げる様子が無かった。

あまりに震えているので、ジャケットの中に入れて温めた。


 「大丈夫だ。もう寒くないよ」

 

キツネが消えた方を見ていたが、戻ってくる様子がない。

俺は仕方なく、子ぎつねを車の助手席に乗せた。

これからどうしようかと、大きく広がる青空を見ていたとき、

 

 ドオーン

 

低い銃声が、音もない山に響いた。


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