ちょっとドジ?
「着いたな…ゴートヒルズ。」
「団長、辛いだろうが…」
「別に、もう辛くないよ。前にオーレリアとここに来たんだ。もう慣れたよ。」
「そうか。案内を頼む。」
「あぁ。」
俺達三人は無事、ゴートヒルズに着いた。
無事…といういか、本当に何もなかった。まるで意図的に避けられているかのように。
今は戦争中だ。敵の頭が大した守りも無しにどこかへ向かっているのだ。格好の的だろう。
「ノエル、熙音。あまり俺から離れるなよ。敵が潜んでいるかもしれない。」
俺達が向かっているのはゴートヒルズの地下、昔の革命軍の本拠地だ。
昔の革命軍といっても、俺達の革命軍とは何も関係ない。
「ほら熙音。ちゃんとついてこないと迷子になっちゃうよ。」
「お母さん…なんか不気味だよ…ここ。」
熙音はまだ子供だ。本来ならこんなところに連れてはこない。
だが、この熙音が、二人の封印を解除するカギになる。
それに、熙音はカギになることを自分で望んでいる。きっと、オーレリアの笑顔が見たいのだろう。熙音は鹿の癖に人のことが大好きだ。
「リュカス・ヴェイン。及びノエル・ハーバー、動くな。」
やっぱ、付けられてたか。
きっと、政府の軍の人間だろう。
俺とノエルは静かに手を上げた。
「ん、なんだこの鹿は…っておい!動くな鹿!!」
「風切・旋風!」
男を取り囲むように緑に輝く風の刃が渦を巻いた。
「ち、クソ!!魔石開放。」
「熙音!気をつけろ!!」
「うん!二人は先に行っててよ。この人は僕が何とかするから!」
本当は熙音にも来て欲しいんだけど…まあ後ででいいか。
「水刃波!!」
風の渦をもろともせず、水の刃を熙音に放った。
「うわっ!!・・・危ない…あたるところだった…」
「魔法が解けたな!終わりだぜ。鹿くん。水鉄砲。」
ヤバいかも…このままだと僕、この人に撃ち抜かれて死んじゃう。
僕の風じゃこの人の魔法は防げない…どうすれば…
「ごめんな熙音。水龍!」
あ、リュカス…
水のドラゴンは、水の玉を容易に吸収し、男の胴体めがけて大きな口を開けた。
「うぃ。グワァ!!!!!」
男はドラゴンに胴を喰われ、頸はひとりでに床を転がり、一本の赤い線を引いていた。
「リュカス…助けに来てくれたんだ…」
「やっぱ心配でさ。だって熙音、ちょっとだけドジじゃん?」
ちょっと嫌だけど…
「ありがとう!」
「おう!急いでノエルに追いつくぞ!!」
僕とリュカスは、駆け足で地下への隠し通路に向かった。