目標
「リュカス・ヴェイン。それが俺の名前だ。」
「りゅ…リュカス・ヴェイン!?なんで!!なんで昔の人が私の目の前にいるの!?」
俺は、また未来の世界に来ていた。
「?なあミナモ?俺はなんでここにいるんだ?」
「そんなこと知らないよ!?私が聞きたいぐらいだよって…私の名前…憶えててくれたんだ…」
「ん?そりゃあ覚えてるよ。覚えろって言われたからな。」
「えへへ…ねえリュカス?聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
「うーん。すまないけど無理。」
「そっか…じゃあさ、私に聞きたいこととかないの?ほら、好きな食べ物とか、動物とか。」
案外気使えんだな。こいつ。
「じゃあ…俺の…いや、いいや。」
「なになに?気になっちゃうよ!」
「お前、婿とかいないの?ヴァルディナ行ったときとかも一人だったじゃねえか。」
「リュカスがいたじゃん。」
「俺は婿はいるのか聞いてんだ。」
「婿?なんで婿なの?」
「え、いや、だってヴェイン家だぜ。名家だぜ?」
「リュカスって本物?」
変なこと聞くな。いや、俺がここにいる方が変か。
「本物だよ。証拠を見せてやろうか?」
「大丈夫!君の考えの古さで本物って分かったよ!」
古い?常識が?
「そんじゃ、次来るときはもっと話を持ってきてやるよ。」
「うん。待ってるよ。またね!」
「おう!」
目が覚めた。
その肌触りの悪い空気が喉を通り、肺に吸収される。
今日の気分は最悪だ。ミナモとの話が嫌だったわけじゃない。ノエルとの作戦が不安なわけでもない。
でもなぜか気分が悪い。
「はぁ~。行くか~。」
俺は背伸びをし、声を漏らした。
そして、約束の時間が訪れた。
「リュカス久しぶり!」
「熙音!久しぶりだな~。ノエルとはいっぱい遊んだか?」
「うん!!いっぱい遊んだ!!」
「そりゃよかった。」
「ほら、熙音、団長、行く準備はできてる?」
ノエルが俺達に聞いた時、この世界に一瞬の静寂が訪れた。
「おう。」
「できてるよ!」
これからゴートヒルズに向かう。
そこにはある二人の英雄が封印されている。
ルシアンの兄であり、前総帥レオナール。
俺とオーレリアの命の恩人であり、今は無き、光の騎士団団長ブリュンヒルデ。
この二人が、俺の生きる希望であり、今も目の前を走る目標だ。俺はいくら走ってもこの二人には追い付けない。いつか、抜かせるといいけどな。