世界の中心・特異点
洞窟の中は暗く、音が響き、少し肌寒い。
岩がごつごつしていて転んだら大変なことになる。
そうだ!!
「魔石開放!導きの炎」
ボゥッボゥッボゥッボゥッボゥッ~
洞窟の奥まで炎が照らし、明るくしてくれた。これで転ばなくて済む。
ホント便利だな魔石ってのは。
「いいなぁ~マギア。」
ウィッシュが羨ましそうな顔で俺を眺めてきている。
俺は自慢そうにドヤ顔をかましてやった。俺も馬鹿かもしれない。
俺は洞窟の壁を触りながら奥へと進んで行った。
そしてついに洞窟の最奥までやってきた。
壁の穴から水が滴り落ち、地面には水が溜まっている。そして、その中心には黒く光る大きな岩がそびえたっていた。
途轍もない大きさだ。象一頭分ぐらいは優に超えている。
もしかして…
「魔石…」
これは魔石の集合体だ。きっとそうだ。魔石の集合体…集母魔石。
俺とウィッシュの旅は終わるのか?これで?
俺は静かにウィッシュの顔を覗いた。
ウィッシュは涙を流し、凶器とも思える笑顔のまま固まっている。
ていうか、なんでウィッシュは魔法なんか探してたんだ?
…そんなことどうでもいっか。
「俺とウィッシュの旅はこれで終わりかな。」
「いや、これからだ。」
これから?それってどうゆう…
「ヴァルディナに戻るぞ。」
俺の不安は最高潮まで上り詰めていた。
冷汗が止まらず、ウィッシュに目が釘付けにされている。
「な…なあ、戻るのはもっと探索してからでいいんじゃねえか?もっと魔石が見つかるかも!」
俺の説得虚しく、ウィッシュは来た道を引き返している。
その背中は、初めて刃物を持った猿のようで不気味で滑稽だった。
「ま、待てよ!まだウィッシュは魔石を持っていないだろう?持たないとさ、魔法使えないよ。」
ウィッシュは振り向き、俺にその死神のような冷たくも荒々しい顔を見せた。
そして俺の魔石を指差した。
「お前が使えるだろ。使えんのはお前だけでいい。」
ウィッシュは指を降ろし、また前を向き歩き始めた。
「お前以外、使えなくていい。」