共鳴カーニバル
黒木舞子と七波羅鳴の邂逅詩。
黒木舞子は、
静かな街の路地に咲く
名もなき花のような少女。
喋るよりも、祈る方が速い。
水と煙と月の音をまとい、
聖書とレゲエの隙間で歌っていた。
七波羅鳴は、
地球を回す脚力で生まれた
カーニバルの申し子。
踊るよりも、叫ぶ方が遅い。
祭壇とマンボのあいだで笑い、
胸の鼓動をコンガに変えていた。
その日、二人は出会った。
舞子がささやいたのは
いつものような「神の名」ではなく、
「……あなた、鳴ってるの?」
鳴はひと呼吸おいて、
「当たり前じゃん。神が近いんだもん」
それだけで充分だった。
二人は秒で、通りを聖地にした。
マラカスが飛び、ローソクが跳ね、
サンバと三味が混線し、
無数のちびっ子たちがトランスに入った。
「これが祈りよ」
「これが踊りよ」
「これが、私たち」
「これが、神の国」
誰かが泣き、誰かが笑い、
誰かが転げ回って絶叫した。
神は、全部まとめて祝福した。
黒と金の二重奏は、
商店街の軒先にあった
古びたミラーボールをふたたび輝かせ、
はじまりの音が空へと抜けていく──
この町に、
神の足音が響いた日。
名もなき二人の女が、
祈って、踊って、世界を変えた日。
イメージソング。
Puya「Fundamental」。
https://youtu.be/DeW97xQ6-lc?si=nE96S5G770HlGgRj
前回のお話。
「歌姫とは誰か?」。
https://ncode.syosetu.com/n0061ko/
次回のお話。
「メガネの現象学」。
https://ncode.syosetu.com/n3442ko/