第六章:尊王攘夷の火種
悠翔の存在は、江戸城内で徐々に噂となっていった。「未来から来た闇の使者」「異国の知識を持つ小僧」として、彼の名は老中だけでなく、尊王攘夷派の志士たちの耳にも届き始めた。ある日、清十郎が悠翔に告げた。
「小僧、面白いことになってきたぞ。長州藩の志士たちが、貴様に会いたいと言ってきた」
悠翔の目が輝いた。長州藩! 歴史の授業で聞いたことがある。尊王攘夷の急先鋒、後の明治維新の立役者だ。彼は即座に「これはチャンスだ!」と胸を張った。
「ふっ、長州の志士か! 彼らこそ、俺の闇の帝国の尖兵となる者たち! 導け、清十郎! 俺の言葉が、彼らの魂に火をつける!」
清十郎は苦笑しながら、悠翔を長州藩の志士たちが待つ屋敷へ連れて行った。そこには、若く熱い目をした男たちが集まっていた。リーダー格は、桂小五郎という名の志士だ。後に木戸孝允として名を馳せる男だが、今はまだ若い。
「貴様が黒崎悠翔か。未来から来たという話、どこまで本当だ?」桂は鋭い目で悠翔を見据えた。
悠翔はマントを翻し、胸を張った。
「ふん! 俺の名は黒崎悠翔、時を裂く闇の使者! 未来の知識を携え、この国の運命を正すために降臨した! 貴様ら尊王攘夷の志士こそ、俺の盟友となるべき者だ!」
桂は一瞬、呆れたように笑ったが、すぐに真剣な表情に戻った。
「面白い小僧だ。よし、話してみろ。開国を防ぐ策があるなら、聞きたい」
悠翔はここでも適当にそれっぽいことを並べ立てた。スマホのバッテリーは残り3%。彼は最後の賭けに出た。動画アプリを開き、現代の軍事パレードの映像を見せた。戦車と戦闘機の迫力に、志士たちが目を奪われる。
「これが、未来の軍勢だ! この力を手に入れれば、黒船など一掃できる! 開国を拒み、異国の者をこの地から追い払う! 俺の知識が、貴様らの志を不滅にする!」
桂は映像を見つめ、ゆっくりと頷いた。
「黒崎悠翔、貴様の言葉、確かに心に響く。よし、我々長州藩は、貴様と手を組もう。開国を防ぎ、幕府を正す!」
悠翔は心の中でガッツポーズをした。長州藩を味方に引き込んだ。これで、開国阻止への道が大きく開けたのだ。